JTTC | 日本競走馬育成評議会公式サイト

ログイン 新規登録

REVELATION DIRECTIVE[オークス週:2020/0523-24号]

■開催競馬場:東京/京都/新潟 ■開催重賞:オークス/平安S ■執筆担当:宇野篤 ------------------------------------- <REVELATION RACE LIST> ■カーネーションカップ/メルボルントロフィー ■オークス ------------------------------------- さて、早いもので今年も日本ダービーの施行日(5月31日)まで10日間を切りました。 周知のとおり、今年の日本ダービーが行われる31日まで無観客競馬が継続されることから、あの大歓声に包まれた最後の直線シーンや、優勝馬と優勝ジョッキーを称える場でもあるウイニングランを目の当たりにできないことは残念でなりません。 しかしながら、こうしたご時勢であるにも関わらず、無事今年も日本ダービーを迎えられること、これはひとえに関係者の皆さんの努力の賜物だと思います。 この場をお借りして、心より御礼申し上げます。 また、それと同時に、現在進行形で話を進めている函館競馬の開幕日(6月13日)まで、1カ月を切りました。 一時は、東京都内に次ぐ感染者数を記録した札幌市の状況等を鑑み、地元住民の方々をはじめ、北海道シーズンの開催そのものを歓迎しないとする声も決して少なくなく、議論の内容も一進一退といった状況が続いておりましたが、国庫納付金の意義、そしてこの間、公にされているもの、そうではないものも含めた寄付活動や嘆願書の提出といった地道な取り組みを重ねてきたことで、函館開幕に向けた確かな手ごたえを感じています。 例年であれば、ジョッキーをはじめ競馬関係者にとっては、バカンスの意味合いも含まれていた北海道シーズン。 今年に関してはご家族を呼び寄せることは禁止、午後8時の門限厳守といったように、かつてない厳戒態勢が敷かれることになりそうですが、この期に及んで不満を口にするような関係者は誰一人としていないと信じています。 ご自宅から応援してくださっている競馬ファンの存在が、競馬の最前線で働く人間にとっては何事にも代えがたい原動力であり、であるからこそ、今年のオークス、そして日本ダービーはより一層特別な意味を持つレースになると思っています。 皆さまご存知の通り、競馬業界のサイクルはダービーからはじまりダービーに終わります。 我々はその日本ダービーから逆残し、この一年間を過ごしてきたことになりますが、何を隠そう一般競馬ファンの皆さまと迎える初の日本ダービー。 これまで何度となく、このRevelation Directiveの場を通じて明言してきた新機軸、すなわち “パラダイムシフト(常識や思想、価値観が劇的に変化すること)”の真価が問われる時です。 『物言わぬサラブレッドのポテンシャルを最大限に引き出す技術を追求する』 JTTC創設以来のミッションでもある育成調教技術の重要性と奥深さを、是非ともこのオークス週、そして日本ダービー週で体感ください。 新たな視点を持つことで、皆様のライフワークともいえる競馬がより一層身近な存在になるはずです。 的中馬券を手にする喜びは一瞬でも、習得した知識や体験は一生もの。 競馬の概念をアップデートする場としてJTTCが先頭に立ち皆様を牽引して参ります。 そうした所信表明を述べさせていただいた上で、早速ですが今週末のレースに切り込んでいきたいと思います。 冒頭に記したとおり、今回のRevelation Directiveで言及するレースは3つございます。 一つ目はオークス。 二つ目はメルボルントロフィー。 三つ目はカーネーションカップです。 開催日も異なれば、距離も開催会場もマチマチと一見、何の共通項も持ち合わせていないレースに映るかもしれませんが、あと2か月後に迫る国内最高峰のセリ市場の存在を思い起こしていただければピンとくるのではないでしょうか。 そうです、例年7月上旬に開催される『セレクトセール』です。 以下は本年7月13、14日に開催されるセレクトセール2020の開催概要となります。 ■名称 セレクトセール2020 ■開催日 7月13日(月) 1歳馬 セール開始:10:00~ 7月14日(火) 当歳馬 セール開始:10:00~(当歳馬展示 8:00~10:00) ■上場頭数 1歳馬:240頭 当歳馬:200頭 ■事前下見  (1歳馬) 7月11日(土)・12日(日) 9:00 ~ 17:00 ※セール会場への入厩日時は販売者によって異なりますので、事前にご確認のうえご来場下さい。 ■レポジトリー 開館時間 7月11日(土)・12日(日) 9:00 ~ 17:00 7月13日(月) 8:00~セール終了まで ■開催場所 苫小牧・ノーザンホースパーク ■主催 一般社団法人日本競走馬協会 ------------------- ここでご注目いただきたいのが、上場頭数の欄にございます「当歳馬 200頭」を取り巻く環境です。 この度の新型コロナウイルスの影響により、大多数の競馬関係者が北海道入りを断念せざるを得ない状況にあることは明白。 そうした中、今春産まれたばかりの当歳馬 200頭の中からお眼鏡に叶うサラブレッドをもし仮に、皆様が購入する立場にあった場合、どのような情報を頼りに、セリ当日を迎えることがベストと言えるでしょうか。 馬主の立場でも構いませんし、馬主様からの依頼により購入する権限を託された調教師の立場でも構いません。 1頭数千万円から数億円はする高い買い物をするわけですから、肝心の商品をその目で見定めたいと思うのは当然の真理でしょう。 しかし、厳しい行動規制が敷かれる今、例年と同じように馬産地巡りをするわけにはいきません。 おそらく、頼みの綱は牧場関係者から取り寄せる写真や動画になるはずです。 また、大前提としてこれまで以上に「セリ名簿」であり「血統表」をくまなくチェックするはずです。 先週のヴィクトリアマイルでは、 “上位3頭を「母内国産馬」が占めたことは海外種牡馬スタッドの視点から見ても最高の結果” と松井も回顧していましたが、グレードおよびリステッド競走の優勝馬は、セリ名簿においてブラックタイプ(太字)で記載されることは皆様ご存知の通り。 端的に申し上げれば、手元に取り寄せたセリ名簿をパラパラと捲る中で、ブラックタイプの多いページは自然と手が止まるでしょうし、生産者の立場からすれば、ブラックタイプの絶対量が落札価格を左右する一つのベンチマークになるわけです。 また、セリ参加者の立場からみると、ブラックタイプのおかげで上場された馬の牝系が繁栄しているか否かが国を問わず一目瞭然となります。 強いサラブレッドを生産する上で、血のブラッシュアップは必要不可欠といえ、であるからこそノーザンファームを筆頭に優秀な繁殖を海外から輸入する動きが強まっているわけですが、それと同時に注視していただきたいのは“バランス”です。 血の飽和を防ぐために、優秀な繁殖を買い漁っているのは事実ですが、絶対数でいえばそれらは少数派であり、国内の馬産を支えているのは圧倒的に「内国産馬」です。 血のブラッシュアップは必須命題、ただし一極集中するような血の偏りは誰一人として望んでいません。 そうした前提と状況を踏まえた上で、今年のオークスの出走メンバーを見渡していただければ、少なくとも「集中⇔分散」どちらに主眼を置くべき一戦であるかは推察いただけるはずです。 (1)デゼル 母:アヴニールセルタン 母父:Le Harve (2)クラヴァシュドール 母:パスオブドリームズ 母父:Giant's Causeway (3)アブレイズ 母:エディン 母父:ジャングルポケット (4)デアリングタクト 母:デアリングバード 母父:キングカメハメハ (5)ホウオウピースフル 母:ツルマルワンピース 母父:キングカメハメハ (6)リアアメリア 母:リアアントニア 母父:Rockport Harbor (7)ウインマイティー 母:アオバコリン 母父:カコイーシーズ (8)スマイルカナ 母:エーシンクールディ 母父:Distorted Humor (9)インターミッション 母:レイカーラ 母父:キングカメハメハ (10)ミヤマザクラ 母:ミスパスカリ 母父:Mr. Greeley (11)リリーピュアハート 母:リリーオブザヴァレー 母父:Galileo (12)マジックキャッスル 母:ソーマジック 母父:シンボリクリスエス (13)ウーマンズハート 母:レディオブパーシャ 母父:Shamardal (14)フゥオリキアリ 母:クリアリーコンフューズド 母父:Successful Appeal (15)チェーンオブラブ 母:フェアエレン 母父:Street Cry (16)ウインマリリン 母:コスモチェーロ 母父:Fusaichi Pegasus (17)マルターズディオサ 母:トップオブドーラ 母父:Grand Slam (18)サンクテュエール 母:ヒルダズパッション 母父:Canadian Frontier 現在公開中の「オークス大全」をご覧いただいた方であれば、明確な方向性とともにここで私が何を言わんとしているのかお分かりいただけるでしょう。 万が一、ここまでの内容がピンとこない方は、オークス大全を今一度読み返すことを強くお勧めします。 その上で、オークスの次に言及したいレースが、前日の土曜競馬に行われるメルボルントロフィーです。 レース名の由来となるメルボルンといえば、豪州を代表するマラソンレース「メルボルンC」をはじめ、メルボルン地区のコーフィールド競馬場で開催されるコックスプレートの開催地としてもお馴染みです。 その、コックスプレートを昨年はリスグラシューで制し、今年はラヴズオンリーユーでの連覇を狙う栗東・矢作厩舎。 ブラッドビジネスという観点では、リアルインパクトやモーリスを積極的にシャトル種牡馬として豪州に送り込んでいる一方、豪州GIにはお世辞にも本腰を入れていたとは言い難い状況が長らく続いていました。 そうした状況に風穴を開けたのが他でもない矢作調教師であり、豪州出身のD.レーン騎手をリスグラシューのパートナーに指名した選択は、必然ともいえるタイミングでありました。 ここまで随所に豪州競馬の重要性に触れて参りましたが、その豪州の首都名が冠となるメルボルントロフィーにいみじくも管理馬キングオブドラゴンを送り出す立場にある矢作厩舎。 そのキングオブドラゴンの前走にあたる京都新聞杯では愛弟子の坂井瑠星騎手に騎乗させているにも関わらず、今回は北村宏騎手にスイッチしており、当の坂井瑠星騎手は池江厩舎のキングサーガにテン乗り。 また、坂井瑠星騎手と同様に豪州競馬でつい先日まで武者修行していた富田暁騎手は復帰初週にも関わらず土日で16頭もの騎乗馬を集める人気ぶりで、本レースは橋田満厩舎のサーストンカイドーで参戦予定。 きっちり豪州経験者で脇を固め、その上で、なお吉田勝己氏名義のエカテリンブルグとサンデーレーシングのミレニアムクロスをブッキングしてくる辺り、豪州関係者に対するメッセージとしては十分な状況が整ったといえます。 移動制限の兼ね合いから、D.レーン騎手がここに名を連ねていない点は致し方ありませんが、そのD.レーン騎手にしても先週は豪州産の母モシーンを持つプリモシーンで義理騎乗を果たしたばかり。 そうした経緯もありD.レーン騎手不在のもと行われるカーネーションカップ。 こちらは東京開催ですから、京都開催のメルボルントロフィーと違い、常識的に考えれば彼に騎乗オファーがないというのも不自然なレースに映るのではないでしょうか。 ここでズバズバと事実を書き並べることは許されませんが、オファーがないことが不自然だったとすれば、オファーはあったが勝算が見込めず断った、もしくは何かしらの事情が介在し騎乗する必要がなかった、それゆえ8頭立てという頭数に落ち着いた。 とすれば、その8頭のメンバー構成に重要なヒントが隠されていることは説明するまでもないでしょう。 以下、肝心の出走メンバーを「ディープ」「非ディープ」の区分で記しています。 <カーネーションカップ出走メンバー> ※アイウエオ順 ○ディープインパクト(父、母父、父父のいずれかにディープインパクト) オムニプレゼンス(母父、Dynaformer) カトゥルスフェリス(母父、Kitten's Joy) スパングルドスター(母父、Monsun) シベール(母父、ディープインパクト) カインドリー(母父、フォーティナイナー) ×非ディープインパクト セイウンヴィーナス(母父、ダンスインザダーク) パラスアテナ(母父、スペシャルウィーク) ヤマニンプレシオサ(母父、ホワイトマズル) 今回のカーネーションカップ然り、真っ先に取り上げたオークス然り、牝馬限定戦に名を連ねるディープインパクト産駒は遅かれ早かれ「母父ディープインパクト」の肌馬として繁殖入りすることになります。 長らくSS系の肌馬にはこぞって非サンデー系の種牡馬が宛がわれてきたことから、BMSリーディングにおいて2006年から2019まで14年連続でサンデーサイレンスが1位の座を死守してきたわけですが、2020年5月現在でそのサンデーサイレンスを抜き去り1位の座に君臨するのがキングカメハメハです。 一方のディープインパクトが9位にとどまっていることからも、その差は歴然といえましょう。 この度の「オークス大全」においても、母父ディープインパクトの取り扱いについて以下のように触れられています。 --------------------- ディープインパクト直仔の繁殖牝馬の活躍が見込まれる令和時代の競馬界。 [母父ディープインパクト]を際立たせるための最良の配合を見出し続けることがテーマになるが、当然そこに着手し始めている。 --------------------- 最後の一文に記された「当然そこに着手し始めている。」という文脈ですが、一部今回のカーネーションカップにも通じる部分がございます。 本レースに出走を予定するディープインパクトの血筋を受け継ぐ以下5頭の鞍上采配を列記しますと ・「母父ディープインパクト」の配合馬であるシベールを引き続き三浦皇成騎手に託し ・その一方で藤沢厩舎のディープ2頭スパングルドスター(M.デムーロ騎手)とカトゥルスフェリス(C.ルメール騎手)は「継続騎乗」とし ・ゴドルフィンのディープ産駒オムニプレゼンスは浜中騎手に乗り替わり ・ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオンのキズナ産駒カインドリーは和田騎手に乗り替わり 単に既成事実を記したまでですが、なぜこのレースに「D.レーン騎手」の名前がないのか、お分かりいただけたでしょうか。 さきほどの記述と重複しますが、オファーはあったが勝算が見込めず断った、もしくは何かしらの事情が介在し騎乗する必要がなかった、それゆえ8頭立てという頭数に落ち着いた。 とすでに答えとも等しい内容を明記していますので、ここまで読んで頂けた方ならお分かりだと思いますが、今回の新型コロナウイルスによる弊害もいずれは定常均衡へと収束する時期が来るように、調和でありバランス感覚を養うことが重要な時期ともいえます。 松井も前々回のRevelation Directiveにおいて「表裏一体」の関係性について言及していましたが、視界に入りやすい表側だけの情報に答えを求めるのではなく、その裏側にどういった事実関係や経緯が存在しているのか、裏側への意識を引き上げることではじめて物事をみるバランスが整ったといえるのではないでしょうか。 おそらく、ブラックタイプといった用語やBMSといった横文字にアレルギーを感じられる方も少なからずいらっしゃると思いますが、競馬産業の根幹を成すブラッドビジネスの実態を理解しないことには、競馬新聞と睨めっこしている競馬ファンの方となんら変わりありません。 どう楽しむのかは、人それぞれの価値観で良いと思いますが、皆様にとっても大好きな競馬でこうして時間を共有する関係にある以上、お互い成長しあえる関係性でありたいと思いますし、喜怒哀楽が詰まっている競馬だからこそ、得られる部分も大きいのだと思っています。 こちらは、無料メンバー様に向けたメッセージとなりますが、もし、今回の内容をご覧いただき、皆様なりに行きついた結論を見い出せた場合、「100円」でも構いません。 実際に馬券を購入してみてください。 身銭を切って、はじめて分かることがあるはずです。 今現在、多くのお問い合わせをいただきながら、プライベートメンバーの募集そのものをストップしている状況が続いておりますが、今後の動向が分かり次第追ってご連絡差し上げます。 今週も「楽しむことファースト」の姿勢でお付き合いください。 JTTC-日本競走馬育成評議会 内部監査室長 宇野篤