REVELATION DIRECTIVE[ダービー週:2020/0530-31号]
掲載日:2020年5月30日
■開催競馬場:東京/京都
■開催重賞:日本ダービー/目黒記念
■執筆担当:松井彰二
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<REVELATION RACE LIST>
■目黒記念
■日本ダービー
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第87回東京優駿。
一日遅れ、並びに、予定時刻を超えてのREVELATION DIRECTIVEの更新となってしまったこと、まずはお詫び申し上げます。
「ダービーウィークに睡眠時間取れると思うなよ」
これは、私が、JTTCの門を叩いた20代の頃に、先輩から言われた一言でございますが、それから30年近くが経過しようとしておりますが、今尚その言葉の通りのダービーウィークでございます。
これはもう身体にも染み付いたルーティンとなっておりますので、キツイとかそういった事は感じず、「ダービー」と聞けばアドレナリンが倍以上放出されるよう体質になっている事は間違いなく、ある意味では、ホースマンあるあるのような状況で、私だけに限ったことではありません。
さて、そんな最中に行われた昨日の緊急総会。
ダービーの話か?と思われると思いますが、毎年ダービー前後に行われる総会に関しては、来週から始まる新馬戦、更には来るセリシーズンを含めた「6.7.8月」の馬事産業が一番活性化する時期に向けての話し合いとなります。
当会が「育成評議会」であることの意義を年間を通して1番実感できる季節が「夏」であることは至極当然の話であり、「夏を制するものが競馬を制す」という言葉は、そもそも私共が一番最初に広めた標語であるといっても過言ではなく、27年前に育成強化策を掲げた際のスローガンでございます。
競馬をスポーツとして楽しむのであれば、なによりも「GIシーズン」が最高の楽しみとおしゃるファンの方が多いと思うわけですが、「競馬はビジネス」「競馬は産業」という視点、さらには、収益という視点で馬券を捉えた際には、何を差し置いてでも「6月から8月」の競馬を抜きには語れないわけです。
セレクトセールの上場馬がダービーウィークに発表されるのも、やはりそれが馬事産業のルーティンであり、それこそ競馬ファンの皆様の目が「ダービー一色」に染まっている今、その裏では様々な動きが活性化しているわけです。
「BLOOD-M」の概念や、「ダークホースコミットメント」の概念が、5月に入り活性化してきたことも、まさに「夏を制す」為の動きが活性化していることの現れでございます。
その中で、緊急総会の私が呼ばれたことの真意は?
ストレートに申し上げれば、令和の恩赦プログラムは、平成や昭和とは全く違う動きがここからはじまる、という点において「規模」が違うと言っても過言ではありません。
今はまだコードネームしかお伝えすることが出来ませんが、
「レーティングコントロール」
「ヒエラルキーマネジメント」
この2つの概念がまさに夏競馬の肝となります。
来週以降、しっかりお伝えしてまいりたいと思います。
さて、ダービー前夜にダービー以外の話を長々とするのは、少々品がありませんね。
ダービー前夜こそ、ホースマンの頭の中はダービー一色にすべきであり、それこそが、競馬の最大の楽しみであるわけです。
まず、今週は「ダービー大全」が発表されておりますが、目を通してくださいましたでしょうか?
「18頭という限られた出走枠には、2020年の特別な日本ダービーという舞台を作り上げるために必要不可欠となる役者は概ね揃ったといえる。」
プロローグで語られたこの一文に意味を見出してくださった方がどれほど居るかはわかりかねるわけですが、実は非常に大切な一節でございます。
「世界からの注目度という意味では、今年の日本ダービーは日本競馬史上最大級の注目を集めると言っても決して大袈裟ではないだろう。どの馬が、日本ダービーを勝つことが、日本競馬界にとってメリットが一番大きいといえるのか。」
この大前提を念頭に、もう一度目を通していただき、その上で、この先を読み進めていただければ幸いです。
まず、「ダービーとはなんなのか?」という点について書き記しておきます。
「ダービーはダービーでしょ」という声が聞こえてこなくもないわけですが、ホースマンにとって「ダービー」とは概念の一つであるわけです。
レース名ではなく「概念」であるということ。
競馬の発展の根底に「ダービーの概念」が根付き、特に、その概念は日本人の性質にはとても良くフィットしたと言えるわけです。
一期一会
生涯一度
一球入魂
海外からみた時に、一介の高校生の野球がなぜこんなにも人気なのか。
海外から見た時に、一介の大学生の駅伝がなぜこんなにも人気なのか。
スポーツ大国日本ではありますが、世界のスポーツ産業界の常識から見た時に、甲子園と箱根駅伝だけは、特に異質に映るようです。
学生スポーツでありながら、学生スポーツとはかけ離れてしまった存在。
それが、甲子園と箱根であるのです。
読売新聞社内でも【箱根の事は伏魔殿】と言われるように、様々な利権が絡んでいること。それはもちろん甲子園も同じであり、「生涯一度のその時期にしか参加することが出来ない大会」という意味では、まさに、「ダービーの概念」であり、スポーツを利用し産業を強化する上でいかに「ダービーの概念」が利用されるかが理解していただきやすいのではないでしょか。
日本人の[トーナメント好き][一発勝負好き]の思考は、遡れば武士道にも通ずるところがあり、まさに[ダービーの概念]と根を等しくする考え方でもあるわけです。
一生に一度であり不可逆。
その舞台に向けたサイクルを毎年踏んでいく行為。
そして、共通するのが「トレンドの転換が定期的に行われる予定調和と転換の繰り返し」であることも、感覚的に御理解いただけるでしょう。
箱根で言えば、青学全盛時代が今とするならば、かつては、早稲田、東洋、駒沢、と、それぞれがトレンドの中心になりながらも、そのトレンドが別のトレンドに襷をつなぐように、ぐるぐる回る。それは、甲子園でも、同じ現象が見られていることからも、分かりやすいのではないでしょうか
ダービーの概念にも「トレンドの転換」は欠かせません。
更に大きな目線で言えば、パラダイムシフトに関わっている本年は、大きなトレンド転換が行われる年でございます。
その前提の上に立ち、ダービー大全に書かれていないことを、一つだけ申し上げたいと思います。
新馬勝ち=10頭
2戦目勝ち=6頭
3戦目勝ち=2頭
本年のダービー出走馬18頭は、全て3戦目以内に勝ち上がっており、16頭は2戦目以内に勝ち上がっている。
なぜ、前哨戦の話ではなく、初勝利の話を今このタイミングでしているか?
過去20年のダービー馬で「新馬で勝てなかった馬」は5頭。
・ドゥラメンテ
・ワンアンドオンリー
・エイシンフラッシュ
・ディープスカイ
・タニノギムレット
正直に申し上げれば、ドゥラメンテだけは「完全なるミス」での取りこぼしであったので、除外させてもらいますが、新馬勝ち出来なかった馬がダービーを勝利した年と新馬勝ちした馬がダービーを勝利した年では、実は、その世代特徴に大きな差があるわけです。
その上で、本年出走馬の中で「新馬勝ち」の各馬の勝利数をあげておきます。
4勝馬:コントレイル
3勝馬:サリオス、サトノインプレッサ、レクランサス、マイラプソディ、サトノフラッグ
2勝馬:ワ―ケア、ヴェルトライゼンデ、ガロアクリーク
1勝馬:アルジャンナ
ダービー大全に、この着目点を加えていただければ、本年のダービーがどのようなものであるのかは、更に深くご理解頂けると思います。
競馬の祭典日本ダービー。
そのトレンドの転換期である本年。
是非とも、楽しんでいただきたいと存じます。
さて、最後に、目黒記念も少々触れておきたいと思います。
伝統のハンデ重賞である目黒記念。
過去10年で「3連複万馬券=8回」を叩き出している、荒れる重賞としてのイメージが強い方も多いのではないでしょうか?
確かに、直近10年で1人気1勝というレースですからそれだけの配当になっているわけですが、その過去10を当会の視点から見た場合「荒れているという感覚はない」というのが正直なところです。
それよりも、「なぜこんな馬が人気になっているのだろう?」と疑問にすら思うことがしばしば有ったというのが現実であり、とても分かりやすいレースの一つでもあります。
ちなみに過去10年の3人気以内の着度数は
[3:4:3:20]
というもの。
3人気以内の30頭の内、20頭が馬券圏外に飛んでいること。
まずは、ここをしっかりと理解知ることでしょう。
人気馬が沈没したのか、過剰人気馬が沈没したのかでは、捉え方はまるで違うわけです。
その上で、今回の種牡馬系を見れば、
ステイゴールド系
キングカメハメハ系
ディープインパクト系withハーツクライ
その他
の4分戦。
更に母父系を見れば
母父キングカメハメハ
母輸入馬
という、ダブルスタンダードな背景も見え隠れしているわけです。
そもそも、目黒記念を勝つことの意味がなんなのか、という意味では、冒頭に記した[ヒエラルキーマネージメント]というコードネームとも密接に関わってくるわけで、特に、本年の目黒記念は例年とも異質なレースであると、申し上げておきたいと思います。
そのヒエラルキーマネージメントを来週以降語る上でも、今回の目黒記念における「外国人騎手3人+武豊騎手.横山典騎手」のそれぞれの乗り方、もっとストレートに申し上げれば[誰が勝つための乗り方で、誰がいわゆるヤラず的な騎乗を行うか]を、しっかりとチェックしておいてほしいと思うわけです。
その事実関係をまず把握した上で、[ヒエラルキーマネージメント]とはどのような意味なのか、その考え方がどう「夏競馬とリンク」するのか、しっかりとご理解いただきたいので、馬券的視点だけでなく、その視点を持って、レースを観戦してくださりますようよろしくお願いいたします。
さて、ダービー前夜の大切な時間。
十二分に、ダービーへの思考を巡らせ、競馬ファン最高の時間をご堪能ください。
今週はここまでとさせていただきます。
JTTC日本競走馬育成評議会
プライベートサロン統括本部長
松井彰二