REVELATION DIRECTIVE[安田記念週:2020/0606-07号]
掲載日:2020年6月5日
■開催競馬場:東京/阪神
■開催重賞:安田記念/鳴尾記念
■執筆担当:吉田晋哉
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<REVELATION RACE LIST>
■麦秋S
■ストークS
■安田記念
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ダービーに始まり、ダービーに終わる。
コントレイルが無事にダービーを制し、これから新章が始まります。
皆様、お世話になっております。
JTTCの種牡馬部門の担当として執行役員を務めております吉田晋哉です。
これを契機に、私、吉田が今週よりREVELATION DIRECTIVEの執筆を担当することとなりました。
皆様に、「松井や宇野の方が良かった」とは言わせてしまうことのないように、きっちりとREVELATION DIRECTIVEの執筆を務めあげていく心積もりですので、ご愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
先週、松井より夏競馬の肝となる2つのコードネームが発せられました。
「レーティングコントロール」
「ヒエラルキーマネージメント」
また難しい言葉が出てきたなぁと思われた方もいるかもしれません。
ここ数ヶ月は、小池都知事が会見で発する様々な言葉に対して、
「横文字ばかりでわかりにくいなぁ」
という印象を多くの方が抱いていると聞いておりますが、それは私も同様です。
しかしながら他人のことをとやかく言えないほどに、いえ、都知事以上に当会では横文字を使う機会が近年は非常に多くなってまいりました。
いまや競馬産業は、日本国内の話だけでまとまることはなく、海外の競馬関係者との交流が必須であるため、当会の公用語も英語になりつつあるのです。
さすがにメンバーの皆様にも英語を公用語とすることを強制するようなことは致しませんが、米国や欧州、豪州、さらには香港を中心とするアジア諸国、南米と、ワールドワイドに世界を巻き込みながら日本の競馬産業は発展し続けているため、重要な言葉が横文字で統一されている事情についてはご理解いただきたいのです。
「レーティングコントロール」
「ヒエラルキーマネージメント」
単純に英和辞書を引くと、
レーティング⇒等級分けや数値化、評価
コントロール⇒調節、統制
ヒエラルキー⇒ピラミッド型の階級的組織構造
マネージメント⇒管理
このような日本語が出てくるわけですが、単純に直訳したものが正確な意味とは言い切れないため、横文字のまま覚えるようにしてください。
階級という言葉が相応しいかどうかはわかりませんが、
オークスでのデアリングタクトの優勝
ダービーのコントレイルの優勝
絶対がないと言われる競馬の世界で、この2頭が成し遂げた優駿制覇という必然の体験。
歴史的な瞬間を、レースが始まる前から、「絶対に勝つ」という感覚のまま最後まで見守っていただくことができたことは、業界全体をピラミッドに置き換えた場合には、トップの一部にいる者だけの特権だったというその価値は絶対に忘れないでください。
「絶対がない」という常識を覆すほどの何かがあったとでも言いましょうか。
単勝1倍台の馬が勝っただけのオークスやダービーだったわけではないのです。
単勝オッズ1倍台の馬が、ことごとく敗れるのが競馬です。
落馬しない限り、絶対に負けることはない。
少なくとも当会のスタッフは、そのような思いでダービーの約2分24秒間を過ごしておりました。
歓喜と言えば歓喜なのですが、どちらかといえば、ダービーを終えた瞬間を表現する言葉としては、「安堵」でした。
今週の競馬の話に移る前に、少しダービーの話をさせてください。
2005年に、武君とともに世間を席巻したディープインパクトが無敗の二冠馬としてダービーを制してから15年が経過。
昨年2019年の夏にディープインパクトが逝去したことで、弥生賞はディープインパクト記念という名称に変わったわけですが、そのような年の春のクラシックでしたので、ディープインパクト産駒が、皐月賞、そして日本ダービーと主役になることは必然でした。
ディープインパクト産駒の歴代ダービー馬。
第78代ダービー馬 ディープブリランテ(GI 1勝)
第80代ダービー馬 キズナ(GI 1勝)
第83代ダービー馬 マカヒキ(GI 1勝)
第85代ダービー馬 ワグネリアン(GI 1勝)
第86代ダービー馬 ロジャーバローズ(GI 1勝)
第87代ダービー馬 コントレイル(GI 3勝)
ディープインパクトの父サンデーサイレンスの仔も6頭がダービー馬となっておりましたので、ダービー馬の頭数でいえば、これで父に並んだことになります。
サンデーサイレンス産駒の歴代ダービー馬。
第62代ダービー馬 タヤスツヨシ(GI 1勝)
第65代ダービー馬 スペシャルウィーク(GI 4勝)
第66代ダービー馬 アドマイヤベガ(GI 1勝)
第67代ダービー馬 アグネスフライト(GI 1勝)
第70代ダービー馬 ネオユニヴァース(GI 2勝)
第72代ダービー馬 ディープインパクト(GI 7勝)
ディープインパクトの仔がダービーに挑めるのは、2018年生まれ(現2歳世代)の144頭、2019年(現1歳)に生まれた113頭、そして今年2020年生まれの僅かな産駒という3世代のみ。
7頭目、8頭目と父サンデーサイレンス超えの期待が高まることは間違いないでしょうが、コントレイル以外は、どれもGIタイトルはダービーの1勝のみだったことが私どもの頭を悩ませていたのです。
率直に申し上げますと、コントレイル以前のダービー馬は、種牡馬価値よりもディープインパクトの仔として、ダービーを制覇のために強引に仕上げられていた馬が多かったというのが実情。
一方で、ホープフルSを制した時点で、少なくともコントレイルはダービーを制覇すればGI2勝という計算が立っていました。皐月賞に関しては負ける可能性も視野に入っていたため、無敗の二冠は出来過ぎなところもあります。
そのような事情があったからこそ、「仕上げ過ぎない」ことをテーマにしていたコントレイルが第87代ダービー馬になったことには大きな価値があり、ディープインパクト産駒がダービーで活躍し続けている間、ひっかかり続けていたことが、ようやくスッキリしたからこそ、安堵だったわけです。
コントレイルを所有するノースヒルズグループは、ダービー3勝目。
ディープインパクト産駒ではキズナに次ぐ2頭目となりました。
キズナがダービーを制した時は、すぐに凱旋門賞挑戦を決定しておりましたが、コントレイルは、神戸新聞杯から菊花賞という国内専念のローテーション。
この違いは、「ディープインパクト産駒の1頭」として父の価値を高めるためではなく、コントレイルという1頭のサラブレッドとしての価値そのものを確立していくためであることはご理解いただけるでしょう。
ディープインパクト産駒を積極的に世界の大舞台に送り込むことが重要視されていたそれまでのダービー馬と、コントレイルの明確な違い。
ワグネリアンに関しては脚元の問題もあり海外遠征という選択はありませんでしたが、他の4頭はダービー後に海外挑戦が義務付けられていました。
ディープブリランテ → キングジョージ挑戦。
キズナ → 凱旋門賞挑戦。
マカヒキ → 凱旋門賞挑戦。
ロジャーバローズ → 凱旋門賞挑戦予定も屈腱炎発症により引退。
3歳での海外遠征は負荷が大き過ぎることも承知の上で、父ディープインパクトの価値を世界にアピールするために海外挑戦が既定路線だったわけです。
ディープインパクトの後継種牡馬としては、菊花賞と有馬記念のGI2勝馬サトノダイヤモンドが種牡馬入りしており、菊花賞と天皇賞・春を連覇した現役のフィエールマンも引退後には種牡馬としての活躍も見込んでいるわけですが、いずれも長距離GIの活躍馬。
いま世界のニーズは、スピードタイプですので、ダービーを含む複数のGIタイトルを獲得したという意味で、コントレイルの種牡馬価値の可能性は別格と言えるのです。
ディープインパクトの息子のコントレイル。
というよりも、10年後には、ディープインパクトは、コントレイルの父と言われるような時代にしなければならないと思っております。
ディープインパクトの血が日本の競走馬の血筋の奥底に刻まれていくことで、日本のサラブレッドの価値はさらに深みが増していくことになるわけです。
ディープインパクトが中心だった時代からの変遷。
皆様に見届けていただいたコントレイルのダービー制覇こそが、いま起きているパラダイムシフトの象徴。
無観客開催の中ではありましたが、無観客のダービーもまた競馬史に残る出来事だったと思えば、後世に語り継がれていくことになりますし、皆様も一生忘れることのないように記憶に刻んでおいていただきましょう。
少し気が早い話ではありますが、数年後、コントレイルの仔がデビューすることを楽しみにしていてください。
それでは、ここからは今週の競馬の話に移りましょう。
ダービーを終えて、今週からは2021年のダービーに向けて2歳新馬戦がスタートします。
ひと昔前までは、素質のある2歳馬は秋デビューが基本と言われていたような時代もありましたが、近年は皆様もご承知のように一概に秋デビューというわけではなく、6月の早い時期からデビューさせるようになっています。
各牧場が積極的に昼夜放牧を取り入れるようになったことや、育成技術の向上、育成施設の充実によって、仕上がりの時期が早まっている証拠です。
このあたりは私どもが公開している『JTTC監修BOOKS』にも記載しておりますので、この場では詳しく掘り下げませんが、今年も6月の2歳新馬は必ずチェックしておくべきです。
先週の目黒記念は、松井が「ヒエラルキーマネージメント」とも密接に関わるということと同時に、
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ステイゴールド系
キングカメハメハ系
ディープインパクト系withハーツクライ
その他
の4分戦。
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このようなことを申し上げておりました。
今の日本競馬の種牡馬体系こそ、まさにこの4分戦のような構図となっているわけですが、この2歳世代からは、モーリス産駒がデビューし、そしてキングカメハメハ系にはドゥラメンテ産駒も加わり層が厚くなります。
目黒記念は、この4分戦の背景に加えて[母父キングカメハメハ]というダブルスタンダードが鍵であったことは事前に示唆されておりましたが、今後は[キングカメハメハ系]が、父系でも母系でも重要度を増していくことは間違いありません。
まさに『神出鬼没』といったように、重要な場面で[キングカメハメハ系]の血を持つ馬の活躍頻度は増加していくことになるでしょう。
キングカメハメハの血がサンデーサイレンス系と相性が良いことは、二冠馬ドゥラメンテ(父キングカメハメハ/母父サンデーサイレンス)を筆頭に、アーモンドアイ(父ロードカナロア/母父サンデーサイレンス)などの配合からも一目瞭然ですが、サンデーサイレンスの血も併せ持つドゥラメンテは、サンデーサイレンスのインブリードによる爆発力をどれだけ引き出すことができるのか、非常に期待しております。
スペシャルウィークとしのぎを削ったグラスワンダーの仔のスクリーンヒーロー産駒として、国内外のマイルGIで活躍し天皇賞のタイトルも獲得したモーリスも、サンデーサイレンス系の血の飽和状態からの新たな可能性という意味では期待も大きいため、初年度から繁殖相手にはかなり豪華な肌馬を集めて力を入れたわけですが、キングカメハメハ系と比較すると実験的な要素もあります。
今週は土曜日に行われる東西の芝マイルの新馬戦で、
東京5R
ブエナヴェントゥーラ(堀宣行厩舎)
父モーリス 母ブエナビスタ(母父スペシャルウィーク)
サンデーレーシング/ノーザンファーム
阪神5R
ドナウエレン(高野友和厩舎)
父モーリス 母ドナウブルー(母父ディープインパクト)
サンデーレーシング/ノーザンファーム
サンデーレーシングのモーリス産駒がそれぞれでデビューを迎えることになりますが、
東京5Rは、モーリス産駒2頭、ドゥラメンテ産駒2頭
阪神5Rは、モーリス産駒3頭、ドゥラメンテ産駒1頭
このような出馬構成で、どちらもディープインパクト産駒(直仔)とキングカメハメハ産駒(直仔)は1頭も出走しません。
ここにディープインパクトの直仔、キングカメハメハの直仔をぶつけない理由については、皆様であれば、説明するまでもなく、その意図することはきっとおわかりいただけることでしょう。
また今年の2歳世代からは、ハービンジャー産駒がまた増え始めていることも知っておいていただきたいのです。
ハービンジャー産駒は、
現3歳世代 2017年生まれ64頭(2016年種付け頭数101頭)
現2歳世代 2018年生まれ103頭(2017年種付け頭数164頭)
現1歳世代 2019年生まれ134頭(2018年種付け頭数212頭)
このように種付け頭数が増えています。
今年桜花賞、皐月賞、オークス、ダービーにはハービンジャー産駒が1頭も出走していなかったわけですが、2017年生まれのハービンジャー産駒は例年よりも減っていたわけですので不思議なことではありません。
しかしながら、ハービンジャーの血もまたサンデーサイレンスとの相性は非常に良いのです。
なぜ、また種付け頭数を増やしているのかといえば、
2017年マイルCS優勝
ペルシアンナイト(母父サンデーサイレンス)
2017年秋華賞優勝
ディアドラ(母父スペシャルウィーク)
2018年有馬記念優勝
ブラストワンピース(母父キングカメハメハ)
※母の母の父がフジキセキ(サンデーサイレンス産駒)
2019年ヴィクトリアマイル優勝
ノームコア(母父クロフネ)
※母の母の父がサンデーサイレンス
このハービンジャー産駒のGIでの活躍による影響が大きいのです。
また牝馬のディアドラが海外遠征を続けているのは、ハービンジャーの血をアピールするための海外行脚のようなもの。
このあたりのことは予備知識として最低限知っておくことで見えてくる世界が変わるはずです。
さて、それでは今回のRevelation Directiveで触れるレースは3つです。
日曜日
■東京10R 麦秋S
■阪神11R ストークS
■東京11R 安田記念
土曜日に行われる鳴尾記念は、過去10年で池江泰寿厩舎が5勝しているレース。
菊花賞2着以来の復帰戦となるサトノルークスに武君が跨り、ダービーを制した矢作芳人厩舎のラヴズオンリーユーがGIの安田記念ではなく、GIIIの鳴尾記念に出走するわけですが、『プライベートギフト』の対象レースとなっていますので、鳴尾記念については『プライベートギフト』をご確認ください。
まずは「麦秋S」から。
東京ダート1400mが舞台の3勝クラスのハンデ戦ですが、「3勝クラスのダート1400m戦」は、今週は日曜の麦秋Sだけでなく、土曜阪神の「天満橋S」も同じ条件。
先週までは条件戦に関しては、移動制限があったわけですが、今週から移動は解禁となりました。
阪神で行われる「天満橋S」は出走馬16頭すべてが関西馬。
一方の東京で行われる「麦秋S」の出走馬16頭中半分の8頭が関西馬という構成。
その東京に遠征する関西馬の中には、ダービーを制したコントレイルの半兄にあたるバーンフライ(父ゴールドアリュール)がいるのです。
母は同じロードクロサイトで、どちらも矢作厩舎の管理馬ですが、兄弟なのに全く似ていない。父が違うため、それもそのはずですが、芝とダートと路線も違うとはいえ、やはり無敗のダービー馬の兄となれば、ダービーの翌週というタイミングで、東京開催に出走するだけで注目されないわけがありません。
ここで今回の鞍上は、D.レーン。
これでさらに注目度が増すことになるわけですが、今回のバーンフライは指標のような存在となり、本命◎でもなければ、対抗○でもありません。
これから競馬業界は7月のセレクトセールを中心とする夏セリのシーズンを迎えることになります。セリだけでなく庭先での取引も牧場にとっては重要な営業活動なのですが、特に今年はコロナウイルスの影響もあり、北海道入りすることを自粛しなければならなかったために、牧場に下見に行くことができていない調教師や馬主が多いのです。
芝血統の良血馬は高額になりやすい反面、ダート血統の馬はそこまで高額にはなりにくいわけですが、規模の大きくない生産牧場にとっては、ダート血統馬の売れ行きが死活問題にもなるわけです。
庭先での取引に関しても、例年よりも売買の状況に関して鈍くなってしまっている牧場も少なくないわけでして、生産馬がどれくらい活躍しているのかも、馬主にしてみれば牧場への期待度の1つの目安、判断材料になります。
特に条件戦では、
「今回、出走させるんだ?そうしたらウチの馬は引っ込めるよ」
といったように、出走登録の段階で、お互いに譲り合うことも決して珍しいことではなく、お互いに持ちつ持たれつで成り立っているのが、牧場界隈の人間関係でもあるのです。
「ギブアンドテイク」(貸し借り)
まさにこの言葉そのもの。
ここで、「麦秋S」の出走馬のうち、セールに紐付く馬を列挙致します。
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エターナルフレイム
(2015年サマーセール出身)
エピックアン
(半弟ラフェクレールの2019が2020年セレクトセールに上場予定)
オンザロックス
(2015年トレーニングセール出身)
コウエイアンカ
(2016年サマーセール出身)
セイウンクールガイ
(2017年トレーニングセール出身)
タイセイプレシャス
(2013年サマーセール出身)
ハーグリーブス
(2015年セレクションセール上場・主取)
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そして、今回の東京で行われる「麦秋S」には、栗東の森秀行厩舎からオンザロックスとコウエイアンカの2頭出しが行われているというところも、レースの展開を握るポイントでしょう。
中団に構えることが多いオンザロックス、そしてコウエイアンカの2頭ですが、今回どの位置で競馬を進めるのか、いつもとは違う動きに注目してみてください。
続いて、安田記念の直前、日曜日の阪神メインレースの「ストークS」。
3勝クラスの芝マイルの一戦ですが、「ストークS」というレース名は、2012年以来、久々に復活することになります。
安田記念はフルゲート18頭に対して今年は出走馬14頭となりますが、今年のGIレースすべてに騎乗している武君は、日曜日は阪神で騎乗します。
安田記念の出走枠が残り4枠余っていることを加味すれば、安田記念に無理矢理騎乗することもできたわけですが、ストークSで重要な役割があるのです。
「ストークS」のポイントとしては、多頭出し。
キャロットファーム(2頭)
・ヴィッテルスバッハ
・ブルーメンクローネ
社台レースホース(2頭)
・ラテュロス
・ロライマ
須貝尚介厩舎(3頭)
・カリボール
・スイーズドリームス
・ステイオンザトップ
3勝クラスですので、「ストークS」の勝ち馬は、オープンクラスに昇級する一戦。
同着とならない限りは、1着になれる馬は「1頭のみ」ですので、同一馬主の多頭出しや、同一厩舎の多頭出しは、1頭しか勝てないことからも矛盾そのものになるわけですが、ここもダブルスタンダードの背景があるわけです。
先ほど、
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ステイゴールド系
キングカメハメハ系
ディープインパクト系withハーツクライ
その他
の4分戦。
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この件とハービンジャーの種付け頭数の増加の件についてお話を少ししました。
ストークSの出走馬を産駒毎にわけると、下記のような構図になります。
↓ ↓ ↓
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ディープインパクト系 4頭
・アドマイヤスコール
・アバルラータ
・スイーズドリームス【須貝尚介厩舎】
・ラテュロス【社台RH】
キングカメハメハ系 4頭
・ヴィッテルスバッハ【キャロット】
・ブルーメンクローネ【キャロット】
・ボッケリーニ
・ロライマ【社台RH】
ステイゴールド系
・ステイオンザトップ【須貝尚介厩舎】
ハービンジャー系 2頭
・ミエノウインウイン
・ヤマカツグレース
ハーツクライ系
・カリボール【須貝尚介厩舎】
ダイワメジャー系
・サヴォワールエメ
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武君は、キャロットのヴィッテルスバッハが前走出走した湘南Sで乗っていたわけですが、継続ではなく、今回託されているのは、同じキャロットとはいえ、ブルーメンクローネの方。
ブルーメンクローネの母はマイルCS優勝馬ブルーメンブラットで、父はキングカメハメハ。
ダブルスタンダードという言葉が意味することは、きっと皆様もおわかりだと思いますが、これからの種牡馬事情がどうなっていくのかを想像いただくことで、レースの全貌が見えてくるはずです。
武君とブルーメンクローネが、スタート直後にどのポジションを取りに行くのか。
そこは必ず注目してみてください。
最後に「安田記念」です。
安田記念についても、まずは出走馬の産駒毎の構図をご覧ください。
↓ ↓ ↓
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ディープインパクト系 5頭
・ヴァンドギャルド
・グランアレグリア
・ケイアイノーテック
・ダノンキングリー【ダノックス】【萩原清厩舎】
・ダノンプレミアム【ダノックス】
キングカメハメハ系 3頭
・アーモンドアイ【シルク】
・クルーガー
・ダノンスマッシュ【ダノックス】
ステイゴールド系
・インディチャンプ【シルク】
ダイワメジャー系
・アドマイヤマーズ
ハービンジャー系 2頭
・ノームコア【萩原清厩舎】
・ペルシアンナイト
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GIという舞台ですので出走することに意味があるという点で、ハービンジャー産駒も名を連ねているわけですが、安田記念は特に種牡馬のヒエラルキーを想像していただきたいのです。
昨今のマイル路線に関して、どの血を持つ馬の活躍が一番求められているのか。
今年のセレクトセールにも通ずる話にはなるのですが、セールの主導権を握る側の立場だった場合、いまはどの血を持つ馬の「購買意欲をそそる」ことが、最大効果を生むことになるのかをご想像してみてください。
種牡馬のヒエラルキー。
この春に東京芝1600mで行われた2つのGI。
NHKマイルCを制したラウダシオン。
ヴィクトリアマイルを制したアーモンドアイ。
ともにシルクレーシングの所有馬が制してきたわけですが、昨年の安田記念、そしてマイルCSを制したインディチャンプもシルクレーシングの所有です。
近年のマイル路線ではシルクレーシングの馬が活躍している中で、昨年同様に今年もアーモンドアイとインディチャンプの2頭出しという攻勢。
どちらもノーザンファームの生産馬ですが、先のセレクトセールも主導権を握るのはノーザンファームです。
金子氏、里見氏に加え、毎年のようにダノックスの野田氏も高額の予算で良血馬を沢山落札している一方で、2歳のマイルGIは複数制しているのですが、古馬GIは2014年のマイルCSを制したダノンシャークのみ。
ダノンシャークは下河辺牧場の生産馬でしたが、ノーザンファームの生産馬を億単位で複数頭落札しているにも関わらず、今年の安田記念に出走させる3頭の中にはノーザンファームの馬はいないのです。
ダノンキングリー(三嶋牧場)
ダノンプレミアム(ケイアイファーム)
ダノンスマッシュ(ケイアイファーム)
GIに所有馬3頭出しという露骨な出走攻勢の中に、ノーザンファームの生産馬はゼロ。
これまでのダノックス所有のGI馬を振り返ると
2010年NHKマイルC
ダノンシャンティ(パカパカファーム)
2014年マイルCS
ダノンシャーク(下河辺牧場)
2014年阪神JF
ダノンプラチナ(千代田牧場)
2017年朝日杯FS
ダノンプレミアム(ケイアイファーム)
2018年阪神JF
ダノンファンタジー(ノーザンファーム)
5頭の中央GI馬がいる中で、ノーザンファームの生産馬はダノンファンタジー1頭のみ。
最近のGIではダノンキングリーが3着と好走した大阪杯で先着したのは、ラッキーライラックとクロノジェネシスというノーザンファーム生産馬2頭。
ダノンプレミアムとダノンキングリーの2頭出しの臨んだ昨年のマイルCSでは、ダノンプレミアムが2着、ダノンキングリー5着という結果で、勝ち馬はノーザンファーム生産のインディチャンプ。
ダノンキングリーはダービー2着、皐月賞3着とクラシックでも好走していたわけですが、僅差でタイトルに届きそうだった皐月賞では、ノーザンファーム生産のサートゥルナーリアが先着。
ノーザンファーム生産のダノンファンタジーが阪神JFで2歳GIを制しているわけですが、この時はダノンファンタジーを新馬戦で負かしていた牝馬のグランアレグリアが、阪神JFではなく朝日杯FSに出走していたという事実もあったわけです。
使い分けのなかった桜花賞はグランアレグリアが勝っていたように、ノーザンファーム生産馬の前に、なかなかGIを勝つことができていないというあたり、そこには何かがあるという想像がすぐに働いた方は、競馬界の人間関係が見えている方でしょう。
書けること、書けないこと、その葛藤の中で、REVELATION DIRECTIVEを書き進めたわけですが、文字量だけでなく、内容に関しても、書き過ぎてしまったかもしれません。
初回ということで、今回はどうか大目に見ていただきたく思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
東京GI、5週連続開催の最終週となる今週末。
ダービーを終えたばかりですが、新たな時間は動き始めていますので、引き続き、JTTCで有益な競馬の時間をお過ごしください。
それでは、また来週。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉