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REVELATION DIRECTIVE[エプソムC週:2020/0613-14号]

■開催競馬場:東京/阪神/函館 ■開催重賞:エプソムC/マーメイドS ■執筆担当:吉田晋哉 ------------------------------------- <REVELATION RACE LIST> ■エプソムC ■マーメイドS ------------------------------------- 皆様、お世話になっております。 吉田晋哉です。 全国的に梅雨に入り、今年もジメジメした季節に入ってまいりましたが、この時期を終えた頃には、競馬産業の一大イベント「セレクトセール」が控えております。 セレクトセール2020 7月13日(月)1歳馬(240頭上場予定) 7月14日(火)当歳馬(200頭上場予定) ちょうど1ヶ月後ということになりますが、馬主や牧場関係者の方々だけでなく、当会のメンバーの皆様には、セレクトセールという存在を頭の中心に置きながら、この夏競馬に臨んでいただくことが理想。 その上で、セレクトセールは「走る馬」を積極的に売る場所ではなく、「高く売れる馬」を売る場所であるという狙いを改めて認識しておいていただきたく思います。 2019年夏に亡くなったキングカメハメハのラストクロップが今年の1歳馬世代。ディープインパクトも昨年はほとんど種付けをせずに亡くなったため、ディープインパクトにとっても事実上のラストクロップ世代ともいえるのが、1歳世代ということになります。 ディープインパクトの仔、キングカメハメハの仔は「ラスト」ということになるため、1歳馬セールでのニーズが高まることは言うまでもなく、高額落札が見込める馬が今年も上場。 延べ440頭前後が上場予定となっている今年のセレクトセールですが、産駒毎の上場頭数に着目ください。 ハーツクライ【42頭】 1歳セクション:22頭 当歳セクション:20頭 ロードカナロア【36頭】 1歳セクション:21頭 当歳セクション:15頭 ドゥラメンテ【33頭】 1歳セクション:13頭 当歳セクション:20頭 キズナ【27頭】 1歳セクション:13頭 当歳セクション:14頭 モーリス【26頭】 1歳セクション:14頭 当歳セクション:8頭 ハービンジャー【25頭】 1歳セクション:15頭 当歳セクション:10頭 エピファネイア【22頭】 1歳セクション:9頭 当歳セクション:13頭 ドレフォン【21頭】 1歳セクション:13頭 当歳セクション:8頭 キタサンブラック【17頭】 1歳セクション:9頭 当歳セクション:8頭 ルーラーシップ【17頭】 1歳セクション:9頭 当歳セクション:8頭 ディープインパクト【13頭】 1歳セクション:13頭 当歳セクション:0頭 キングカメハメハ【10頭】 1歳セクション:10頭 当歳セクション:0頭 オルフェーヴル【4頭】 1歳セクション:4頭 当歳セクション:0頭 サトノダイヤモンド 当歳セクション:13頭 リアルスティール  当歳セクション:10頭 今年産まれた産駒が初年度であるディープインパクトの後継種牡馬のサトノダイヤモンドやリアルスティールも含めて、主な産駒一覧を並べました。 現役時代の実績と比較すると、オルフェーヴル産駒の上場頭数が異様に少ないことは一目瞭然。 オルフェーヴルの種付け頭数は、2018年136頭、2019年が52頭と減少傾向の中でも一定数いるわけですが、今年のセレクトセールには2018年に種付けされた世代の「4頭のみ」しか上場せず、当歳馬は「ゼロ」という露骨さ。 「上場しない」のではなく、4頭しか許されなかったと申しましょうか。 セレクトセールで毎年のように高額で落札している里見氏(サトミホースカンパニー)は、これまでオルフェーヴル産駒は2頭しか所有しておらず、どちらも抹消済みで、現時点で所有する現役馬62頭のうち、オルフェーヴル産駒はゼロ。 金子氏(金子真人ホールディングス)は、現役馬67頭中わずか2頭。 野田氏(ダノックス)は、現役馬42頭中、中央の現役馬0頭、地方競馬で1頭のみ。 GIに常連の個人馬主が、どのような馬を所有しているかを見るだけで、どのような血を持つ馬が高く売れるのかは簡単に見えるわけですが、先ほども申し上げたように、セレクトセールは、「走る馬」を売る場所ではなく、「高く売れる馬」を売る場所。 オルフェーヴル産駒の活躍を振り返ると、違和感を覚える方も少なくないはずです。 今年の大阪杯を制した現役のGI3勝馬ラッキーライラックを筆頭に、 2017年札幌2歳S 1着 ロックディスタウン 2018年皐月賞 1着 エポカドーロ 2019年マーメイドS 1着 サラス 2020年ファルコンS 1着 シャインガーネット 2020年青葉賞 1着 オーソリティ 2020年NHKマイルC 3着 ギルテッドミラー デビューしたのは4世代ですが、これだけの重賞活躍馬を輩出しているため、「走らない」というわけではないことはおわかりいただけるはず。 しかしながら、セレクトセールで高額落札をされる個人馬主には不人気であり、「高く売れない馬」が、オルフェーヴル産駒の現状なのです。 2018年 500万円 2019年 400万円(↓) 2020年 300万円(↓) ⇒ラッキーライラック大阪杯優勝 2021年 ・・・ 種付け料も下降傾向にあるわけですが、オルフェーヴルという種牡馬1頭の推移を見るだけでも、高く売れる馬とそうではない馬の違いは一目瞭然。 とはいえ、先日6月8日より新規募集を開始したサンデーレーシングは、頭数こそ3頭のみの募集ですが、 サンデーレーシング2020年新規募集 オルフェーヴル産駒ラインナップ ・スウィートハースの2019(半姉ラテュロス) ・アイルビーバウンドの2019(半兄パフォーマプロミス) ・ライラックスアンドレースの2019(全姉ラッキーライラック) この【3頭】をラインナップしているのです。 繁殖牝馬の勢力図の変革期にある今、プロパガンダの一環として、金鯱賞を制したサートゥルナーリアを出走させることを避けた今年の大阪杯を制したラッキーライラックの全妹。 6月6日(土) 鳴尾記念1着 パフォーマプロミス 6月7日(日) ストークS3着 ラテュロス そして残りは、先週の阪神の土日のメインで好走した2頭の全弟という構成です。 先週がどのような週だったのかは、これ以上説明するまでもないでしょう。 さて、話は変わりますが、今週世間の注目を集めたのは、お笑い芸人アンジャッシュの渡部建さんの不倫問題。 この件に関して、皆様はどのように感じたでしょうか。 このREVELATION DIRECTIVEの場では、わざわざ不倫を肯定したり、批判するようなことはさすがにしませんが、表と裏の顔は、「印象」で操作することができると思われた方も多かったことでしょう。 「お笑い芸人」として人を笑わせることだけに特化していた方であれば、同じようなことをやっていたとしても、ここまで大々的に取り上げられることはなかったはず。 好感度をあげるために、主婦層の支持を集めるなど、戦略的に「印象操作」を行った結果、そのギャップが大きすぎることが明るみになったために、このような事態になったと言わざるを得ません。 つまりは、清廉潔白という「印象」を作っていたこと。その作られた「印象」と「実態」があまりにもかけ離れていれば、それだけの反動を生んでしまうわけです。 これは、競馬の世界でもよくある話です。 競馬界でも、武豊騎手の不倫問題が週刊誌で取り上げられたことがありましたが、その話ではありません。 特定の産駒の競走馬をより高く売れるように仕向けるために、「○○○○産駒は走る」という印象を一時的につけようと偏らせることがあるということです。 もちろん産駒によって馬体の傾向も似やすいため、特定のコースで特定の種牡馬が活躍することもあるわけですが、傾向は自然に作られるのではなく、走らせる側の意向が反映されやすくなっているということ。 日本競馬では、馬場の整備のレベルが高いために、高速馬場になりやすいわけですが、馬場が整備されすぎていて、日本の競馬場で走っていても馬が強くなりにくいという見方もあるわけです。 果敢に日本の競走馬が凱旋門賞に挑戦しているわけですが、「馬場の起伏も違うため、欧州での経験がない馬は、日本でどんなに強い競馬をしていたとしても、びっくりして走りが変わってしまう」とも言われています。 頭を下げて走るフォームの馬が、ロンシャンでは「頭をあげて進んで行こうとしない」といったケースもこれまで沢山ありました。 凱旋門賞での好走を狙うのであれば、馬が向こうのコースに慣れるだけの遠征期間を長めに設けて、コースや環境に慣れた方が良いでしょう。 とはいえ遠征には莫大な資金もかかりますし、帯同する馬やスタッフの確保などの問題もあって、そう簡単には実現できる話ではありません。 であれば、凱旋門賞を勝つのであれば、日本の競馬場にも欧州のような起伏のあるコースを用意すれば良いのでは?という話にもなるわけですが、そう簡単にはいかないのです。 もちろんコース改修にも莫大な費用はかかりますが、それ以上にコース改修を行えば、生産界の勢力図が一気に変わることになりかねません。 いまの日本の馬場は、「サンデーサイレンスの血」が走りやすいように作られてきたことは皆様もご存知のとおり。 (※知らないという方は、JTTC監修BOOKSの【パラダイムシフトの渦中にある世界競馬】を必ずお読みください) 最初は「印象操作」によって錯覚するように仕向けられていたものを、真実にするために、どれだけの歳月をかけて莫大な投資を行い続けてきたのか。 誰かが思い描く理想を、実現させるための手段として、まずは強引な形での「印象操作」が行われるのは、どの業界でもよくある話でしょう。 「偏り」を作った後には、必ず「調整」することで、バランスが図られるのです。 そういえば、話が少し前後しますが、海外遠征を続けているハービンジャー産駒のディアドラが、次走は7月5日に英国で行われるエクリプスSに出走することが決定しました。 今年のエクリプスSには、2017年18年に凱旋門賞を連覇し昨年は2着だったエネイブルも始動戦として出走を予定しています。 ハービンジャーを種牡馬として輸入した以上、欧州に対してはハービンジャーの仔を最低限活躍させることは、日本の生産界にとっての至上命題のようなところもありますので、遠征費用がかさむとはいえ、ディアドラはテーマを課されているのです。 ディアドラは海外経験も豊富ですので、これまでの多くの日本馬とは異なる海外の環境経験の利もありますし、エネイブルに対してどれくらいやれるのか非常に楽しみです。 長くなりましたが、それでは今週の競馬開催の話で締め括りたいと思います。 今回は日曜日に行われるエプソムCとマーメイドSの2つの重賞をとりあげます。 まずは東京芝1800mのエプソムCから。 昨年の優勝馬レイデオロと、一昨年の優勝馬サトノアーサーが揃って出走する今年のエプソムCですが、エプソムCに見え隠れする矛盾にお気づきでしょうか。 出走馬18頭中10頭が社台グループの生産馬で、そこに非社台系生産馬とはいえ、ノーザンファーム提携のシルクレーシング所有のインビジブルレイズも参戦。 ただし、社台グループの独占というようなことをお伝えしたいわけではないのです。 もっと細かく見ていただくと、 ↓ ↓ ↓  藤沢和雄厩舎 ・ゴーフォザサミット ・レイエンダ 池江泰寿厩舎 ・ソーグリッタリング ・サトノアーサー 吉村圭司厩舎 ・アイスストーム ・インビジブルレイズ 近2年のエプソムC優勝馬を管理する藤沢厩舎と池江厩舎が2頭出し。 さらには前走のメイSを勝ったゴドルフィンのアイスストームを管理する吉村圭司厩舎も2頭出し。 そして少し視点を変えると、 社台レースホース ・ソーグリッタリング ・ギベオン ・アンドラステ シルクレーシング ・サラキア ・インビジブルレイズ サラブレッドクラブラフィアン ・マイネルファンロン ・マイネルハニー サトミホースカンパニー ・サトノガーネット ・サトノアーサー 同一馬主の複数頭出しのケースがこれほど多岐に及ぶわけです。 しかも阪神開催では牝馬限定重賞のマーメイドSが行われるわけですが、 ・アンドラステ ・サトノガーネット ・サラキア 複数頭出しを組んでいる馬主から3頭の牝馬が出走するだけでなく、牝馬はもう1頭シャドウディーヴァも出走します。 同一馬主や同一厩舎の複数頭出しという枠組みから漏れたシャドウディーヴァに配されたのは、M.デムーロ騎手。 4頭の牝馬の共通点は、すべて社台グループであるということだけでなく、父はサンデーサイレンス系で、『母父が全て外国産馬』であるということ。 ・アンドラステ(父オルフェーヴル 母父Dynaformer) ・サトノガーネット(父ディープインパクト 母父Victory Note) ・サラキア(父ディープインパクト 母父Lomitas) ・シャドウディーヴァ(父ハーツクライ 母父Dansili) エプソムCを勝てるのは1頭だけ。 それにも関わらず、なぜこれほどまでに出走馬を被せるのか。 牝馬限定のマーメイドSに出走させても良かったはずの牝馬を、なぜ4頭もエプソムCに回すのか。 出走馬選定、および鞍上を手配する時点で、独裁的な背景があることはおわかりいただけるのではないでしょうか。 エプソムC出走馬18頭の種牡馬構成も載せておきましょう。 ・ディープインパクト産駒 4頭 ・キングカメハメハ産駒  2頭 ・ハーツクライ産駒    3頭 ・ステイゴールド系    2頭 ・ハービンジャー産駒   0頭 ・その他         7頭 そして、阪神メインのマーメイドS。 出走馬16頭中8頭が社台系生産馬という構成ですが、 斉藤崇史厩舎 ・リュヌルージュ ・サマーセント 矢作芳人厩舎 ・オスカールビー ・マルシュロレーヌ キャロットファーム ・フィリアプーラ ・センテュリオ ・マルシュロレーヌ このような多頭出しが構成されているのがマーメイドS。 エプソムCと比較すると、 エプソムCは、社台レースホースが3頭出しに対して、キャロットファームは1頭。 一方でマーメイドSは、キャロットファーム3頭に対して、社台レースホースは1頭。 そして、福永祐一騎手と川田将雅騎手のトップジョッキー2名だけが、エプソムCではなく、マーメイドSに回された意図。 もし仮に、マーメイドSに、福永騎手と川田騎手の両名が不在だった場合、どのようなレースになることを想像できますでしょうか。 福永祐一騎手騎乗 センテュリオ 牝5 父:ディープインパクト 母:アドマイヤキラメキ 母父:エンドスウィープ 馬主:キャロットファーム 生産:ノーザンファーム 厩舎:高野友和(栗東) 川田将雅騎手騎乗 エアジーン 牝4 父:ハービンジャー 母:ラスティングソング 母父:フジキセキ 馬主:ラッキーフィールド 生産:ノーザンファーム 厩舎:堀宣行(美浦) 明言するまでもなく、この両名は非常に重要な役割があるからこそ、エプソムCではなく、マーメイドSでノーザンファームの生産馬の騎乗が託されているのです。 なお、マーメイドSの出走馬16頭の種牡馬構成は、このようになっています。 ・ディープインパクト産駒 3頭 ・キングカメハメハ産駒  0頭 ・ハーツクライ産駒    2頭 ・ステイゴールド系    3頭 ・ハービンジャー産駒   4頭 ・その他         4頭 「エプソムCにあって、マーメイドSにないもの」 「マーメイドSにあって、エプソムCにないもの」 そのあたりを想像しながら、今週末の競馬開催をお楽しみください。 今回はここまで。 JTTC日本競走馬育成評議会 執行役員 種牡馬部門 吉田晋哉