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REVELATION DIRECTIVE[宝塚記念週:2020/06/27-28号]

■開催競馬場:東京/阪神/函館 ■開催重賞:宝塚記念 ■執筆担当:吉田晋哉 ------------------------------------- <REVELATION RACE LIST> ■日曜 阪神5R 2歳新馬 ■宝塚記念 ------------------------------------- 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。 梅雨の真っ只中、皆様いかがお過ごしでしょうか。 政治の世界や芸能界では、慌しいニュースが次から次へと話題になっておりますが、先日、とある暴露話が日本と米国に衝撃を与えることになりました。 皆様ももう耳にされたことでしょう。 ボルトン前大統領補佐官によるトランプ政権の内幕に関する暴露本の出版。 トランプ大統領が、「日本を脅せ」と話していたという内容。 簡単にまとめると、「日本に駐留するアメリカ軍の経費について、現状の4倍にあたる年間約8600億円の負担を求めていた」という話ですが、この暴露本を受けてトランプ氏は、「機密情報を流出させた」と批判。 興味深いのは、未だトランプ氏サイドからその内容について「否定するコメント」がだされていない点でしょう。 日本に対して、特別な感情がなければ、出てくるわけがない発想。 日本と米国。 政治の話を掘り下げるつもりはありませんが、米国の日本に対する嫉妬。 これが露骨になってきている中、両国の競馬界においても同様に、日本は「嫉妬」の的になりつつあります。 トランプ政権になってから盛んに主張されている、貿易摩擦。 中国や日本に対して、強気の態度で交渉に出ているのは、「焦り」もあるのでしょうが、その根源にあるのは、「嫉妬」ではないでしょうか。 競馬界においても、トレードの件については、これから難局を迎える場面が増えることが想定されておりますので、『チームJAPAN』で戦略的に構える策を準備しています。 また、今週は日本のスポーツ界でも、トレードの話が話題に登りました。 開幕したばかりですが、プロ野球関係者の度肝を抜くトレード。 読売ジャイアンツの池田駿投手(推定年俸1450万円)と楽天イーグルスのゼラス・ウィーラー内野手(推定年俸2億円)という実績も年俸も極端に異なる選手同士の1対1のトレードが成立。 お互いに足りないところを埋めるために、持て余しているものを放出したというトレードになるわけですが、どちらが「お買い得」だったのかは火を見るよりも明らか。 置かれている戦況によって、どちらか一方が有利な交渉に持ち込めるのです。 ここだけの話、日本の競馬界は米国に対しては、かなり有利な立場で物事を進めることができている現況にあります。 「米国が上」のように立ち振る舞い続けながら、「日本優位」に持ち込んできたのです。 そして決定的だったのは、先週のユニコーンSにおけるカフェファラオのパフォーマンスです。 父は米国クラシック三冠馬でブリーダーズカップクラシックも制したAmerican Pharoah(アメリカンファラオ)。 2020年度の種付け料は17万5000ドル(約1900万円)に設定されている米国を代表する種牡馬の1頭ですが、豪州(オーストラリア)にもシャトルされています。 日本、米国、豪州。 この三国の競馬界は近年盛んに交流しており、豪州競馬のホープであるD.レーン騎手が短期免許で日本に来日。そしてユニコーンSではカフェファラオで圧勝。 レース格こそGIIIだったとはいえ、「GI級」といっても過言ではない一戦に日本の関係者だけでなく、米国、豪州の関係者が注目していたのです。 このカフェファラオの一撃は、米国競馬関係者の「嫉妬」をさらに呼び起こしています。 世界一の技術を誇る日本の馬場造園課。 世界一の規模を誇る日本のセレクトセール。 世界一の馬券売り上げを誇る日本の有馬記念。 日本の競馬界で世界に誇れることは、この他にも多数あります。 世界中がコロナ禍にあって、日本競馬はダービーを含めて開催中止も延期もしていないということ。 世界から見れば、日本の競馬は、異常に映っているのです。 ここで、1つ質問です。 いま北米の競馬界では、どのようなところに「ニーズ」が高まっているのか、皆様はご存知でしょうか。 それは、ズバリ「芝」です。 現在米国の予後不良率は減少傾向を辿っているわけですが、芝に限れば昨年2019年は前年比30%増。 しかしながら、特に北米では芝レースの人気が高まっているために、馬場の安全性を確保することに対して重点的に取り組もうとする動きが起きているのです。 競走馬場試験研究所の専務理事を務めるMick Peterson(ミック・ピーターソン)氏が主催した5月のセミナーで残された言葉を和訳し掲載させていただきます。 「北米で芝レースの人気が高まっている。私たちにとって芝馬場がこれから重要になる」 「芝馬場の安全性と性能を高めることが新たな焦点」 「芝馬場について、一層多くの情報・要件・データを記録するように今取り組んでいる。調教師たちは以前よりも芝向きの馬を多く手掛けており、より多くの芝レースが施行されることを望んでいる」 「芝生が剥がれた箇所を埋めるための混合物が、できる限り周囲の材質とマッチしなければならない。現時点ではそれが課題」 つまるところ、芝レースの強化を図る上で避けて通れない課題が、「馬場管理」となるわけですが、ここは日本が一歩も二歩も進んでいるわけです。 そして、今週月曜日にJRAからは皆様にとっても「重大な発表」を行いました。 第4回中山競馬、第2回中京競馬の開幕週のタイミングとなる9月11日より、「芝馬場のクッション値の公表」に踏み切るという内容。 (※クッション値とは馬場のクッション性を数値化したもので、クッション性とは競走馬が走行時に芝馬場に着地した衝撃を受け止める際の反発具合のことをさします) 日本の関係者や競馬ファンに向けての公表という目的だけでなく、米国を意識した施策。 芝の馬場管理が課題の北米に対するメッセージが隠されているのです。 JRAのおかげとか、社台グループのおかげとか、誰か1人のおかげではなく、当会のメンバーの皆様を含め日本の競馬を取り巻く関係者やファンが現代日本競馬を作り上げてきたわけです。 皆様の思いが、日本の競馬産業をあらゆる面で世界トップクラスに持ち上げているわけですから、この「誇り」を胸に私どもも世界と対峙してゆく所存でおります。 もっともっと米国の競馬界が「日本に対する嫉妬」に燃えるように。 そうなれば、お互いに切磋琢磨することで、競馬産業はさらに発展します。 ただし、ダート競馬に関しては、米国に利があります。これは認めなければなりません。 いま日本の競馬界は、ダートを強化していることは先週お伝えしていた通り。 カフェファラオも然り、ダートに強い「米国血統」を積極的に導入している最中です。 芝は、間違いなく日本に利があります。 遡れば、15年以上前から、その傾向は明らかでした。 牝馬のGIになりますが、「アメリカンオークス」を例にあげましょう。 アメリカンオークスは2001年よりスタートし、2004年にGI昇格。 GI昇格元年の2004年には日本の桜花賞馬ダンスインザムードが出走し、いきなり2着と存在感を示すと、翌2005年にはシーザリオが挑戦し、日米オークス制覇を成し遂げました。 2006年には桜花賞4着、オークス3着だったアサヒライジングが挑戦し2着。 ダンスインザムード(父サンデーサイレンス) シーザリオ(父スペシャルウィーク/父の父サンデーサイレンス) アサヒライジング(父ロイヤルタッチ/父の父サンデーサイレンス) この頃は、「サンデーサイレンスは米国の馬だ」ということで米国もまだ油断していたのでしょう。芝を強化するどころか、1着賞金45万ドルだったアメリカンオークスの賞金は2010年には15万ドルまで大幅に減額。 最近は、日本馬がアメリカンオークスに挑戦することがないわけですが、GI昇格直後の頃と違って、今は出走するメリットがないのです。 また2010年はドバイワールドカップの開催場所が、ナド・アルシバ競馬場から、メイダン競馬場に変更された年。 2010年から2014年まではオールウェザーで行われましたが、2015年にダートに変更されました。 2015年プリンスビショップ(UAE) 2016年カリフォルニアクローム(USA) 2017年アロゲート(USA) 2018年サンダースノー(UAE) 2019年サンダースノー(UAE) ドバイワールドカップがメイダン競馬場のダートで行われるようになってから、米国ダート馬が2度優勝と貫禄は示しました。 しかしながら、ダートが主流の米国競馬とはいえ、上記4頭の「現在」に注目いただきたいのです。 プリンスビショップはセン馬のため種牡馬になれず。 カリフォルニアクロームは、2020年より日本のアロースタッドで種牡馬として繋養。 アロゲートは、先日6月2日に逝去。 サンダースノーは、2020年よりダーレー・ジャパン・スタリオン・コンプレックスで種牡馬入り。 ゴドルフィン(=ダーレー・ジャパン)でさえ、サンダースノーを日本に導入しているように、日本のダート改革が顕著なわけです。 またドバイワールドカップデーに行われている「芝」のドバイシーマクラシックは、過去に米国馬は優勝したことがありません。 一方で、日本馬は2006年に「ハーツクライ」、2014年に「ジェンティルドンナ」が優勝しています。 日本馬は、世界一強い馬を輩出するための環境を着々と作ってきたのです。 ちなみに、アメリカンオークス馬のゴジップガールやカンビーナも輸入し、社台ファームで繁殖牝馬として抱えております。 この20年の間。日本は米国を謙遜しながらも、優位に事を進めてきました。 ただし、その策略はもう米国関係者にはバレています。 これらを踏まえれば、米国競馬関係者が、日本に対して「嫉妬」する意味がおわかりいただけるのではないでしょうか。 ・日本競馬界のダート改革。 ・米国競馬界の芝改革。 このような構図があることさえ知っていれば、日本の主要な芝のあらゆるレースには、米国競馬に向けてのメッセージが「裏テーマ」として隠されていることも、きっとおわかりいただけるでしょう。 それでは、今週の話に参りましょう。 今回この場で触れることができるレースは、日曜日に行われる以下2レース。 ■阪神5R 2歳新馬 ■宝塚記念 まずは新馬戦から。 6月1週目から2歳新馬がスタートし、今週が4週目。 月曜日に公開した<REVELATION REPORT>では、フランケル産駒のモンファボリのデビュー勝ちについても触れましたが、続々と素質馬がデビューしています。 新馬戦では負けてしまった馬の中にも、素質馬はいますので、2歳未勝利戦も注目していただくと良いでしょう。 さて、日曜日に阪神芝1800mで行われる新馬戦。 以前は菊花賞開催日に行われる新馬戦のレベルが高いと注目を集めることも多かったわけですが、最近は育成技術の向上効果や昼夜放牧で鍛えられている馬が多いことで、素質馬のデビュー時期が早まっていることは、皆様もご存知の通り。 それでもGI開催日当日の新馬戦は、普段よりも注目が集まります。 メッセージを込められる競走馬を意図的に出走メンバーとして選定されているのが、特別な新馬戦の背景。 近年の宝塚記念開催日に新馬勝ちをした馬の名前を言えるでしょうか。 2019年 レッドベルジュール 父:ディープインパクト 馬主:東京ホースレーシング 生産:ノーザンファーム (デイリー杯2歳S勝ち) 2018年 ブレイキングドーン 父:ヴィクトワールピサ 馬主:前田幸貴(ノースヒルズ) 生産:高昭牧場 (ラジオNIKKEI賞勝ち) 2017年 ダノンプレミアム 父:ディープインパクト 馬主:ダノックス 生産:ケイアイファーム (朝日杯FSを含む重賞5勝) この3頭が、後に重賞を制したほどの馬だったことからもおわかりいただける通り、宝塚記念開催日当日の新馬戦には、“然るべき馬”が送り込まれているのです。 ------------------------------------- アレクサンドロス 父:ハーツクライ 母:オールザウェイベイビー 馬主:吉田勝己 生産:ノーザンファーム イクスプロージョン 父:オルフェーヴル 母:ファシネイション 馬主:近藤英子 生産:ノーザンファーム ダノンザキッド 父:ジャスタウェイ 母:エピックラヴ 馬主:ダノックス 生産:ノーザンファーム テンバガー 父:モーリス 母:トップセラー 馬主:G1レーシング 生産:ノーザンファーム パタゴニア 父:キズナ 母:ライフフォーセール 馬主:シルクレーシング 生産:ノーザンファーム ワンダフルタウン 父:ルーラーシップ 母:シーオブラブ 馬主:三田昌宏 生産:ノーザンファーム ------------------------------------- 出走馬14頭中、ノーザンファーム生産馬が6頭という構成。 種牡馬をご覧いただければわかるように、ノーザンファーム生産馬からは同じ種牡馬の被りはないのです。 しかも、ノーザンファーム生産のディープインパクト産駒がいません。 ------------------------------------- トレサイーユ 父:ディープインパクト 母:ラフアウェイ 馬主:ノースヒルズ 生産:ノースヒルズ ------------------------------------- ディープインパクト産駒は、ノースヒルズの馬1頭のみ。 もし、自分が出走させる馬を選定できる立場だった場合、この新馬戦を使って、どのようなメッセージを込めますでしょうか? 私が「REVELATION DIRECTIVE」を担当し始めたのは6月に入ってから。 6月に公開した「REVELATION DIRECTIVE」を隅々までお読みいただいている皆様であれば、絞り込むことはそう難しくないでしょう。 「宝塚記念」に触れないわけにもいきませんが、この場でお話できる内容は多くはありません。 出走馬18頭のプロフィールについては、木曜日の夜に近況レポートとして出走馬紹介が行われました。 そちらに最低限必要なメッセージが記載されておりますので、読み返していただくことを推奨します。 6月の阪神開催は先週までの3週間はAコースで行われ、今週だけBコースに変わります。 柵が移動されて、内側3、4メートルほどの傷んだ馬場が消えます。 GIということもあり、日本の「馬場管理技術」の腕の見せどころです。 宝塚記念に向けて、この件を皆様は想像されましたでしょうか? なぜ、ファン投票1位のアーモンドアイが宝塚記念に出走しないのか。 「左回りの成績が良いから、右回りの宝塚記念は回避」と答える方は、さすがに当会にはいらっしゃらないでしょう。 アーモンドアイは、今年の宝塚記念に込めるべきメッセージを強調させる上では、「追いやらなければならない存在」なのです。 先週のユニコーンSでも、「消された存在」が2頭いたことをお伝えしておりましたが、宝塚記念では、その対象がアーモンドアイとフィエールマンの2頭。 ファン投票1位 アーモンドアイ ファン投票4位 フィエールマン ファンから支持されている2頭を出走させないわけですので、競馬ファン向けのグランプリというのは、あくまでも建て前に過ぎないわけです。 宝塚記念というレースの副題。 優勝馬には、 ・当該年のブリーダーズカップ・ターフ(米国)への優先出走権が与えられ、出走登録料・輸送費用の一部負担の特権が付与。 ・コックスプレート(豪州)への優先出走権が付与 なおブリーダーズカップデーの優先出走権が付与されるGIは3つ用意されています。 ヴィクトリアマイル →ブリーダーズカップフィリー&メアターフ(GI) ※ヴィクトリアマイルは今年2020年から付与 安田記念 →ブリーダーズカップマイル(GI) 宝塚記念 →ブリーダーズカップターフ(GI) 今年の宝塚記念優勝馬が、「ブリーダーズカップターフ」に向かうかどうかの判断は最終的にはレース後の状態にも寄るわけですが、米国を「嫉妬」させるのに相応しい馬は、果たしてどの馬か。 ここまで言ってしまうと、答えを言ってしまったようなものではございますが、レースの行方を見守っていただきましょう。 また例年であれば、複数の馬が凱旋門賞の登録を行う時期ではございます。 しかしながら、現時点で凱旋門賞に登録を済ませた日本馬はディアドラただ1頭のみ。 宝塚記念の先にある世界を想像しながら、今週末の競馬をお楽しみください。 JTTC日本競走馬育成評議会 種牡馬部門 吉田晋哉