REVELATION DIRECTIVE[神戸新聞杯週:2020/09/26-27号]
掲載日:2020年9月25日
■開催競馬場:中山/中京
■開催重賞:オールカマー/神戸新聞杯
■執筆担当:吉田晋哉
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<REVELATION RACE LIST>
■日曜 中京11R 神戸新聞杯
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平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。
2020年秋のGIシーズン開幕まで、あと1週間。
次週10月4日に控えている「スプリンターズS」、「凱旋門賞」という国内外のGIが近づいて来るにつれて、高揚感も日に日に沸いてくる次第ですが、日曜日の神戸新聞杯に臨むコントレイル陣営の緊張感が、私にも乗り移ったせいか、重圧も感じております。
「なぜ、吉田がコントレイルの重圧を感じているんだ?」
という疑問を抱かれたメンバー様もいらっしゃると思いますが、ここには、福永騎手や矢作先生、ノースヒルズ陣営とは、また違った側面からのミッションが生まれているのです。
今週の「REVELATION DIRECTIVE」で取り上げるレースは、「神戸新聞杯」のみとなりますが、3着馬までに優先出走権が与えられる菊花賞のトライアルレースのGII重賞とはいえ、二冠馬コントレイルが出走するということで、世界からも注目集まる特別な一戦です。
この一戦を経て、「菊花賞に向かう馬」が決まることになるわけですが、着順という結果以上に、「内容」が重要であり、また「どのような血統背景にある馬」が権利を獲るのかが最大の焦点になるのです。
そういう意味ではコントレイル1頭だけに注目するのは非常にもったいなく、競馬は「どの馬が勝ったか」よりも、「どういう決着が残されたのか」に重きを置いて、ご覧いただきたいのです。
先週の「REVELATION DIRECTIVE」では、2016年の凱旋門賞についてお話をしました。
A.オブライエン厩舎のガリレオ産駒による3着内独占。
「ファウンドが優勝した」という事実以上に、「ファウンドが優勝し、2着3着もガリレオ産駒のA.オブライエン厩舎の管理馬が独占した」という決着に、歴史的な価値が見出されたわけです。
どれだけ強烈な印象を残すことができるのか。
競馬という産業を回す側の立場として、レースを組み立てる側となった場合、どのような決着となることが望ましいのか、皆様にもこの機会に一度考えてみていただきたいのです。
種牡馬の系統別では、【6頭:4頭:3頭:5頭】に分類されます。
<ディープインパクト系>【6頭】
・コントレイル(父ディープインパクト)
・レクセランス(父ディープインパクト)
・ディープキング(父ディープインパクト)
・ファルコニア(父ディープインパクト)
・イロゴトシ(父ヴァンセンヌ)
・ディープボンド(父キズナ)
<キングカメハメハ系>【4頭】
・グランデマーレ(父ロードカナロア)
・パンサラッサ(父ロードカナロア)
・ロバートソンキー(父ルーラーシップ)
・マンオブスピリット(父ルーラーシップ)
<ステイゴールド系>【3頭】
・ビターエンダー(父オルフェーヴル)
・アイアンバローズ(父オルフェーヴル)
・ヴェルトライゼンデ(父ドリームジャーニー)
その他【5頭】
・エンデュミオン(父ヴィクトワールピサ)
・メイショウボサツ(父エピファネイア)
・ターキッシュパレス(父Golden Horn)
・シンボ(父ベーカバド)
・マイラプソディ(父ハーツクライ)
また、
矢作芳人厩舎
・コントレイル
・パンサラッサ
角居勝彦厩舎
・アイアンバローズ
・ファルコニア
矢作厩舎と角居厩舎がそれぞれ2頭出しで、
前田晋二氏も、
・コントレイル
・ディープボンド
この2頭出し。
ただ、今回の神戸新聞杯のポイントは、また別のところに重きが置かれています。
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今年の神戸新聞杯の出走馬一覧
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1枠1番 グランデマーレ
[父]ロードカナロア
[母]グランデアモーレ
[母父]ネオユニヴァース
父【日本】×母父【日本】
厩舎:藤岡健一
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1枠2番 コントレイル
[父]ディープインパクト
[母]ロードクロサイト
[母父]Unbridled's Song
父【日本】×母父【米国】
厩舎:矢作芳人
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2枠3番 ビターエンダー
[父]オルフェーヴル
[母]ビタースウィート
[母父]Afleet Alex
父【日本】×母父【米国】
厩舎:相沢郁
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2枠4番 レクセランス
[父]ディープインパクト
[母]エクセレンス2
[母父]Champs Elysees
父【日本】×母父【加国(カナダ)】(生産:英国)
厩舎:池添学
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3枠5番 ロバートソンキー
[父]ルーラーシップ
[母]トウカイメガミ
[母父]サンデーサイレンス
父【日本】×母父【米国】
厩舎:林徹
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3枠6番 マンオブスピリット
[父]ルーラーシップ
[母]サンデースマイル2
[母父]サンデーサイレンス
父【日本】×母父【米国】
厩舎:斉藤崇史
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4枠7番 エンデュミオン
[父]ヴィクトワールピサ
[母]ヒラボクビジン
[母父]ブライアンズタイム
父【日本】×母父【米国】
厩舎:清水久詞
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4枠8番 イロゴトシ
[父]ヴァンセンヌ
[母]イロジカケ
[母父]クロフネ
父【日本】×母父【日本】(生産:米国)
厩舎:牧田和弥
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5枠9番 アイアンバローズ
[父]オルフェーヴル
[母]パレスルーマート
[母父]Royal Anthem
父【日本】×母父【英国】
厩舎:角居勝彦
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5枠10番 パンサラッサ
[父]ロードカナロア
[母]ミスパンペリー
[母父]Montjeu
父【日本】×母父【仏国】(生産:愛国)
厩舎:矢作芳人
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6枠11番 ディープボンド
[父]キズナ
[母]ゼフィランサス
[母父]キングヘイロー
父【日本】×母父【日本】
厩舎:大久保龍志
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6枠12番 メイショウボサツ
[父]エピファネイア
[母]ユメノオーラ
[母父]マイネルラヴ
父【日本】×母父【日本】(生産:米国)
厩舎:西浦勝一
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7枠13番 ターキッシュパレス
[父]Golden Horn
[母]Regency Romance
[母父]Diktat
父【英国】×母父【英国】
厩舎:昆貢
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7枠14番 ディープキング
[父]ディープインパクト
[母]ダリシア
[母父]Acatenango
父【日本】×母父【独国】
厩舎:藤原英昭
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7枠15番 ファルコニア
[父]ディープインパクト
[母]カンビーナ
[母父]Hawk Wing
父【日本】×母父【愛国】
厩舎:角居勝彦
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8枠16番 シンボ
[父]ベーカバド
[母]オギノシュタイン
[母父]ディープインパクト
父【仏国】×母父【日本】
厩舎:斉藤正弘
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8枠17番 マイラプソディ
[父]ハーツクライ
[母]テディーズプロミス
[母父]Salt Lake
父【日本】×母父【米国】
厩舎:友道康夫
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8枠18番 ヴェルトライゼンデ
[父]ドリームジャーニー
[母]マンデラ
[母父]Acatenango
父【日本】×母父【独国】
厩舎:池江泰寿
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父、そして母父が、現役時代はどの国で活躍していたのかも追記しております。
過去5年、神戸新聞杯では、C.ルメール騎手が跨っていた馬が4勝をあげておりますが、今年の神戸新聞杯に、C.ルメール騎手は騎乗馬があてがわれておりません。
今週日曜日は中山で行われるオールカマーで、フィエールマンで臨む予定が組まれていたわけですが、そのフィエールマンは、「表向き」には熱発の影響で調整が間に合わず回避という決断が発表されました。
[熱発]というワードは、ジョーカー的に使える魔法の言葉とも言われておりますが、フィエールマンを、オールカマーに本当に出走させるつもりであったかどうか、皆様には「疑問を抱く」という習慣を身につけていただきたいところです。
フィエールマンがオールカマーに出走予定。
熱発で回避。
この一連の流れで、「カモフラージュ」は完成です。
神戸新聞杯から、C.ルメール騎手を外すことができたのです。
なお、過去5年のうち4勝、その空白の「1年」は、神戸新聞杯には騎乗せずに、レイデオロでオールカマーを制した2018年です。
今年の神戸新聞杯は、フルゲート18頭。
2019年勝ち馬サートゥルナーリア 出走馬8頭
2018年勝ち馬ワグネリアン 出走馬10頭
2017年勝ち馬レイデオロ 出走馬14頭
2016年勝ち馬サトノダイヤモンド 出走馬15頭
2015年リアファル 出走馬15頭
近年の神戸新聞杯と比較しても、明らかに傾向が異なることは、出走馬が「18頭」に増えていることからもおわかりいただけると思います。
昨年、阪神芝2400mで行われた神戸新聞杯は、
1着サートゥルナーリア
[父]ロードカナロア
[母]シーザリオ
[母父]スペシャルウィーク
父【日本】×母父【日本】
厩舎:角居勝彦
2着ヴェロックス
[父]ジャスタウェイ
[母]セルキス
[母父]Monsun
父【日本】×母父【独国】
厩舎:中内田充正
3着ワールドプレミア
[父]ディープインパクト
[母]マンデラ
[母父]Acatenango
父【日本】×母父【独国】
厩舎:友道靖夫
このような決着となっておりましたが、近年の[トレンド]を如実に表す決着であったとも言えます。
昨年の3着馬ワールドプレミアの半弟であるダービー3着馬ヴェルトライゼンデが、セントライト記念から神戸新聞杯に急遽舵を切ったわけですが、これは先ほどのフィエールマンの予定通りの熱発回避劇とは異なります。
フィエールマン
ヴェルトライゼンデ
この2頭はいずれもサンデーレーシング(母体ノーザンファーム)の所有馬です。
フィエールマンをオールカマーから除外。
ヴェルトライゼンデをセントライト記念から除外し、神戸新聞杯にスライドさせた意図。
【熱発】で予定変更となった馬が、たまたまサンデーレーシングの所有馬であることが、偶然と思われている方はさすがにいらっしゃらないでしょう。
「熱発回避」という切り札。
さすがに、何度も通用するような戦略ではありませんが、この秋、再び大一番を目前に、このようなジョーカーが切られる場面が訪れるかもしれません。
さて、今年の神戸新聞杯は、変則的に中京芝2200mで行われるわけですが、強いて例えるならば、2011年に似ているかもしれません。
3月に東日本大震災が起き、復興を目指した2011年。
3月頃にコロナウイルス問題が起き、復興を目指している2020年。
1着オルフェーヴル
[父]ステイゴールド
[母]オリエンタルアート
[母父]メジロマックイーン
父【日本】×母父【日本】
厩舎:池江泰寿
2着ウインバリアシオン
[父]ハーツクライ
[母]スーパーバレリーナ
[母父]Storm Bird
父【日本】×母父【愛国】(生産:加国)
厩舎:松永昌博
3着フレールジャック
[父]ディープインパクト
[母]ハルーワソング
[母父]Nureyev
父【日本】×母父【仏国】(生産:米国)
厩舎:友道康夫
二冠馬コントレイルが出走する一戦で、今年は、なぜフルゲートとなる18頭が集まったのか。
[3着馬までに優先出走権]というトライアルレースであり、馬券対象になる馬も[3着馬まで]となるわけですが、競馬という産業の世界で、利権に関わっている日本、海外の競馬関係者という視点では、[5着以内奪取]というところに、1つの指標が定められているのです。
日本国内には存在しませんが、もし仮に[5連単]という馬券種別が解禁されるようであれば、今年の神戸新聞杯は、[5連単向き]の一戦です。
もう一度、言いましょう。
競馬という産業を回す側の立場だった場合、どのような決着となることが望ましいでしょうか。
そのあたりをイメージしながら、神戸新聞杯に注目してみてください。
馬券こそ存在しませんが、出走馬全体を見渡したうえで、[5連単の決着]もこの機会に想像しながら、お楽しみください。
最後になりますが、今週は「YOSHIDAネーム」が評価される一週間となり、『コントレイルの嫁探し』もまた加速し始めております。
現地時間で9月19日にアメリカのベルモントパーク競馬場で行われたGIベルモントオークスを、Galileo産駒のマジックアティチュードが優勝しました。
英国産とはなりますが、母マーゴットディドはノーザンファームが所有しているということもあり、生産者は吉田勝己氏名義です。
また9月12日にアイルランドで行われたGIメイトロンSを制したばかりのシャンペスエリーゼを、社台ファーム代表の吉田照哉氏名義で購入。
メイトロンSでは、ディープインパクト産駒のフランスオークス馬ファンシーブルーを破ったわけですが、次走は凱旋門賞前日に英国で行われる牝馬限定のGIサンチャリオットSに出走します。
GIサンチャリオットSは馬券販売こそありませんが、凱旋門賞同様に注目してみてください。
JTTC日本競走馬育成評議会
種牡馬部門
吉田晋哉