【結果総括】REVELATION REPORT「神戸新聞杯週レポート」
掲載日:2020年9月28日
皆様、お世話になっております。
JTTC種牡馬部門の執行役員を務めております吉田晋哉です。
「衝撃、再び」
無敗の二冠馬・コントレイルの強さを形容するには言葉がいくつあっても足りません。
秋競馬開幕後、どことなくピリッとしない印象にあった競馬界。その雰囲気をコントレイルが目覚めさせ、凱旋門賞、スプリンターズSと続く秋のGIシリーズに向けた空気作りに貢献。
会社などで、その人が入ってくるだけで空気が変わる【特殊能力】の持ち主がいるかと思いますが、コントレイルの存在はまさにそれ。
世間の関心をグッと競馬に引き寄せたコントレイル、JRAにとっても救世主と言えるのではないでしょうか。
今回のレポートでは、神戸新聞杯を我々が週中の【REVELATION DIRECTIVE】で示した一部見解とともに振り返りたいと思います。まずはこちらをご覧ください。
-----神戸新聞杯見解を引用-----
昨年、阪神芝2400mで行われた神戸新聞杯は、
1着サートゥルナーリア
[父]ロードカナロア
[母]シーザリオ
[母父]スペシャルウィーク
父【日本】×母父【日本】
厩舎:角居勝彦
2着ヴェロックス
[父]ジャスタウェイ
[母]セルキス
[母父]Monsun
父【日本】×母父【独国】
厩舎:中内田充正
3着ワールドプレミア
[父]ディープインパクト
[母]マンデラ
[母父]Acatenango
父【日本】×母父【独国】
厩舎:友道靖夫
このような決着となっておりましたが、近年の[トレンド]を如実に表す決着であったとも言えます。
昨年の3着馬ワールドプレミアの半弟であるダービー3着馬ヴェルトライゼンデが、セントライト記念から神戸新聞杯に急遽舵を切ったわけですが、これは先ほどのフィエールマンの予定通りの熱発回避劇とは異なります。
フィエールマン
ヴェルトライゼンデ
この2頭はいずれもサンデーレーシング(母体ノーザンファーム)の所有馬です。
フィエールマンをオールカマーから除外。
ヴェルトライゼンデをセントライト記念から除外し、神戸新聞杯にスライドさせた意図。
【熱発】で予定変更となった馬が、たまたまサンデーレーシングの所有馬であることが、偶然と思われている方はさすがにいらっしゃらないでしょう。
「熱発回避」という切り札。
さすがに、何度も通用するような戦略ではありませんが、この秋、再び大一番を目前に、このようなジョーカーが切られる場面が訪れるかもしれません。
-----以上神戸新聞杯見解を引用-----
ここでは「熱発回避」という言葉について説明が必要でしょう。
人間でいうところの「熱が出た」にあたるこの言葉。たとえば脚元の不安があった場合、翌週の別レースにスライドさせることはまず不可能。無理をすれば使える状態にあったとしても、名誉を得るために使うのは切羽詰まった事情を抱える馬主に限定されるもの。
さて、熱発によりセントライト記念を回避したヴェルトライゼンデ。
同馬が【サンデーレーシングのクラブ馬】だった事実を覚えておいてほしいのです。
毎週行われる競馬は点ではなく、ひとつの線として捉えることが何より重要であり「線でつながっている」からこそ【貸し借り】が恒常的に行われます。ある週は個人馬主、ある週はクラブ馬、あるレースはゴドルフィン・・・このような具合に。
時間を『一週前』に戻しましょう。
セントライト記念時のレポートにおいて、我々が記したことは以下のとおり。
-----セントライト記念レポートを引用-----
菊花賞トライアルにも関わらずC.ルメール騎手が非社台系の生産馬リスペクトに騎乗している点に違和感を覚えたというメンバー様も多数いらっしゃったと思いますが、社台ノーザングループの総意は◎サトノフラッグにあると結論付けた今回の提供内容が全てであります。
また、【REVELATION DIRECTIVE】文末に記しておりました川田騎手(ガロアクリーク)、並びにM.デムーロ騎手(フィリオアレグロ)の騎乗内容ですが、本日のレース映像を通じて、皆様はどのような感想をお持ちでしょうか。
前者の川田騎手は【個人馬主群】に分類されるガロアクリークに、後者のM.デムーロ騎手は【クラブ馬群】に分類されるフィリオアレグロに。
こうした「棲み分け」を前提にご覧いただいた方であれば、百歩譲ってもM.デムーロ騎手がサトノフラッグに対して圧力をかけることなど許されないシチュエーションであったことをお分かりいただけたはず。
一方の川田騎手が騎乗したガロアクリークですが、そんなことはお構いなしといわんばかりにバビットの直後にとりつくと3角から4角の勝負所においては先に手が動いたバビットの内田博騎手のアクションとは対照的に「ガッチリ手綱を押さえたまま」。
そうです。
川田騎手が注視していたのは◎サトノフラッグが動き出すタイミングです。
実際、弥生賞さながらの4角捲りを披露してみせたサトノブラッグですが、川田騎手がゴーサインを送ったのはそのサトノフラッグと馬体を合わせた直後。
ココロノトウダイが早々と脚を失くしたことは結果的に逃げるバビットにとって追い風になったわけですが、ともに『3連複軸2頭ながし』の軸馬たる役割を担った◎サトノフラッグ、○ガロアクリークの両馬が揃って馬券圏内を確保したこの度の提供結果は、最終選考指定競走たる意味合いを実感いただくに足るレース内容であったと捉えております。
-----以上セントライト記念レポートを引用-----
ノーザンファーム生産馬が本腰を入れたレース・・・実はセントライト記念ではなく、コントレイルが出走する神戸新聞杯にあったのです。
その背景には同レースの注目度があります。その売り上げ額が歴代最多だった2005年との比較をご覧ください。
・2005年→約79億6000万円
・2020年→約83億9500万円
2005年と今年の共通点。ともに無敗の二冠馬の秋始動戦だったことが挙げられます。
社会現象を巻き起こしたディープインパクトが競馬界を席巻した2005年。そしてコロナ禍に誕生したディープインパクトの仔にして父と同じ道を歩むコントレイル。競馬界への貢献は【売り上げ】というJRAがもっとも欲する数字に表れています。
「歴史は繰り返す」
競馬はこのキーワードで成り立っているといっても過言ではありません。ここで目を向けるべきは2005年、神戸新聞杯がどのような結果で終わったのか。結果をご覧ください。
1着ディープインパクト
[父]サンデーサイレンス
[母]ウインドインハーヘア
[母父]Alzao
父【日本】×母父【米国】
厩舎:池江泰郎
馬主:金子真人ホールディングス
2着シックスセンス
[父]サンデーサイレンス
[母]デインスカヤ
[母父]Danehill
父【日本】×母父【米国】
厩舎:長浜博之
馬主:社台レースホース
3着ローゼンクロイツ
[父]サンデーサイレンス
[母]ロゼカラー
[母父]Shirley Heights
父【日本】×母父【英国】
厩舎:橋口弘次郎
馬主:サンデーレーシング
勝ち馬ディープインパクトを除く上位入線馬はいずれも社台ノーザングループのクラブ馬。今回の結末を予感させるような決着でした。
ヴェルトライゼンデが目先の勝利を求めるのであれば、セントライト記念がベストチョイス。
しかし社台ノーザングループが持つ馬主とのつながりはクラブ馬だけにとどまりません。
古くはフサイチ冠の関口房雄氏、ピサノ冠の市川義美氏、トーセン冠の島川隆哉氏。現在ではサトノ冠のサトミホースカンパニー、金子真人ホールディングスなど。それら太客に対する【返し】は定期的に実行される。このサイクルで競馬界は回っています。
パンサラッサ(矢作師)・ディープボンド(ノースヒルズ)のラインを形成したチーム・コントレイル。
長期休養明けのグランデマーレ(社台系クラブ馬)が逃げ馬を突き、アイアンバローズ(ノーザンファーム)が進路をあけたチーム・ヴェルトライゼンデ。
【個人馬主群】ではないヴェルトライゼンデがより高額な賞金を得る確率を考えたとき、神戸新聞杯のほうが与しやすしと陣営は考えた。
直前のローテ変更というある種の「むちゃぶり」に2着という結果で応えた池江師にもまた、今後高い確率で彼らから【返し】が与えられることでしょう。その背景を読み取れば、ギリギリまで点数を絞った馬単2点提供、そしてシナリオ通りの決着シーン。
的中馬券を手にしていただいた皆様、誠におめでとうございました。
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[日]中京11R 神戸新聞杯
プライベートランク:☆☆☆☆☆
<評価順>
◎2 コントレイル
○18 ヴェルトライゼンデ
▲11 ディープボンド
<結果>
1着◎2 コントレイル
2着○18 ヴェルトライゼンデ
馬単:620円的中[2点]
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さて、今週末は秋のGIシリーズ開幕を告げる電撃6ハロン戦「スプリンターズS」が行われます。
当初は「スぺシャルGI」と呼んで差し支えない豪華メンバーが予定されていたものの、有力馬が続々と【回避】を表明。ここではその一例を挙げます。
・インディチャンプ→右後肢の大腿二頭筋に炎症を発症したため回避
・タワーオブロンドン→爪の状態が整わないため回避
・ステルヴィオ→キーンランドC熱発回避の影響でスワンSへ
昨年の覇者(タワーオブロンドン)、アーモンドアイを撃破したマイル王(インディチャンプ)、そして一昨年のマイルGI勝ち馬(ステルヴィオ)。
シルクレーシングの刺客、藤沢和厩舎の刺客、木村厩舎の刺客がそれぞれ回避する運びとなりました。
その結果、残った有力馬は以下のとおり。
・グランアレグリア
・モズスーパーフレア
・ダノンスマッシュ
自身初のスプリンント戦となるグランアレグリアのぶっつけ本番はプラン通り。モズスーパーフレアも昨年と同じローテーションですが、ダノンスマッシュは昨年と異なる臨戦過程を踏んできました。
これに前述の回避を加味すれば、陣営の思惑はおのずと透けてくるのではないでしょうか。
凱旋門賞を含め、重要レースが多い今週末はJTTCとしても【REVELATION DIRECTIVE】への掲載許可を得るためより一層に奔走する週。
コントレイルが集めた「世間」そして「世界」からの注目をある種の“トリガー”としつつ、問題なく掲載許可が得られた暁にはスプリンターズS出走陣営が抱える「経済事情」について踏み込んでみたいと考えています。
今週のレポートは以上でございます。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉