REVELATION DIRECTIVE[スプリンターズS週:2020/10/03-04号]
掲載日:2020年10月2日
■開催競馬場:中山/中京
■開催重賞:シリウスS/スプリンターズS
■執筆担当:吉田晋哉
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<REVELATION RACE LIST>
■土曜 中京11R シリウスS
■日曜 中山11R スプリンターズS
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平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。
秋のGIシーズン到来とともに、10月に入りましたが、月替わり早々国内外では何かと慌しい出来事が続いております。
10月1日には、東京証券取引所がシステム障害により終日取引停止というトラブルが発生。
そしてアメリカでは、トランプ大統領がコロナウイルスに感染。
またスペインではコロナ第二波の感染拡大対策として、首都マドリッドをロックダウン。
そのお隣の国であるフランスの首都パリでは、週明けの5日にコロナ警戒レベルを最高レベルに引き上げる見通しとの報道もありました。
10月4日(日)には、パリのロンシャン競馬場で凱旋門賞が行われるわけですが、武豊騎手だけでなく、当会の内部監査室長を務める宇野さんも現地におりますので、凱旋門賞を終えた後には、無事に帰国の途に着いてくれることをただ願うばかりです。
この時期のパリは、雨の多い季節であり、やはり報道の通り、不良馬場に近い状態でレースとなる見込みとのこと。もともと深く重い芝ですので、日本の不良馬場よりも条件は過酷。
昨年参戦したフィエールマンに騎乗していたC.ルメール騎手は、「馬場が合わなかった」と口にしておりましたが、ダメージが残らぬように回ってきただけという残念な競馬内容だったものの、「フィエールマンの脚を守った」という意味では、好判断であったとも言えます。
愛チャンピオンSの上位2頭ガイヤース、マジカルの2頭が回避し、さらにはその馬場悪化を懸念して、3歳牝馬のラブも出走を回避。
マジカルとラブはともに、アイルランドのA.オブライエン厩舎の管理馬にあたるわけですが、それでも4頭の管理馬を擁立しているところに、層の厚さを感じさせます。
A.オブライエン厩舎の凱旋門賞の動向。
・ラブ【回避】
・マジカル【回避】
・ジャパン【出走の見込み】
・ソヴリン【出走の見込み】
・モーグル【出走の見込み】
・サーペンタイン【出走の見込み】
上記6頭は、すべてGalileo(ガリレオ)産駒でA.オブライエン厩舎の管理馬であるところに同厩舎の「支配力」を感じとることができるわけです。
世界的なクールモアグループの専属調教師として活躍し続けているA.オブライエン厩舎。
なお、凱旋門賞2勝、昨年は2着となり引退濃厚から現役続行に舵を切ったエネイブル(J.ゴスデン厩舎)の父ナサニエルの父もまたGalileoです。
ここに、昨年の凱旋門賞馬ソットサスも参戦するわけですが、ソットサスの母父にあたるのもまたGalileo。
さらには、2009年の凱旋門賞馬Sea the Stars(シーザスターズ)を父に持つ馬が、
・ストラディバリウス
・ラービアー
2頭出走するわけですが、Sea the Starsの半兄にあたるのがGalileoです。
またGalileoとSea the Starsの母Urban Sea(アーバンシー)が1993年の凱旋門賞馬であり、四半世紀前に勲章となった血の系譜が続いているわけです。
日本競馬では、「サンデーサイレンス→ディープインパクト→コントレイル」という血の系譜で時代が進もうとしているわけですが、この欧州競馬を作り上げている血と日本のサンデーサイレンス系の血を融合させた時に、どれくらい爆発力を秘める競走馬を輩出できるのか。
この血を融合させて成功した際には、競馬産業において、かつて誰も経験したことのないレベルの利権が誕生する可能性を秘めているのです。
欧州では、「競馬は王族の娯楽」とも言われているわけですが、その王族たちのニーズは、「日本のディープインパクトから派生する血脈」に目が向けられております。
これからの競馬界は、各国の王族レベルの重鎮たちと対等に交渉することも求められるわけですが、決して大袈裟な話ではなく、競馬産業は間違いなく国家レベルの機密交渉の渦中にあるのです。
今年の春、日本のクラシックではコントレイル、デアリングタクトが無敗の二冠馬となったわけですが、それぞれ無敗の三冠まで王手。
少し話は早いかもしれませんが、この2頭が引退した後を想像すると、競馬ファンの夢はさらに広がることでしょう。
コントレイル
父ディープインパクト
母ロードクロサイト
母父Unbridled's Song
[父の父サンデーサイレンス]
デアリングタクト
父エピファネイア
母デアリングバード
母父キングカメハメハ
[母母の父サンデーサイレンス]
ともにサンデーサイレンスの血を内包しておりますが、配合は可能です。
走るか走らないかは、また別としても、この2頭の配合馬に夢を見る方も多いのではないでしょうか。
そういう意味では、先週の『プライベートギフト』での公開対象レースであった「長篠S」を制して、オープン入りを果たした◎カレンモエもまた夢を託された1頭です。
カレンモエ
父ロードカナロア
母カレンチャン
母父クロフネ
ロードカナロア
2012年スプリンターズS 1着
2013年高松宮記念 1着
2013年スプリンターズS 1着
カレンチャン
2011年スプリンターズS 1着
2012年高松宮記念 1着
2012年スプリンターズS 2着
ただのスプリント王者ではなく、春秋のスプリントGIを制覇した2頭を両親に持つカレンモエが、先週中京で行われた長篠S(3勝クラス)を勝って、無事にオープン入り。
もちろん、この後の成長次第ということにはなりますが、今年のスプリンターズSに出走する馬たちと、来春には高松宮記念で対峙する可能性もあるのです。
日本競馬界の[未来予想図]は、将来に偶然起こるわけではなく、「過去」、そして「現在(今)」、計画的にレールが作られている段階にあります。
このレールがどのように敷かれているのか。
その全貌を事前に知ることができる特権は、「現在」だけでなく、「将来」にさらに倍増した先駆者利益へと化けるのです。
「現在を生きる」ことは勿論大切ですが、現在よりも「将来」を見つめていただくこと、より競馬を楽しむこともできるはずです。
今週は、東京証券取引所がシステム障害により終日取引停止ということで、一部では混乱していたようですが、「株」とは異なる競馬界における「将来的な勝算」は、当会に在籍するメンバーの皆様にも共有し続けております。
スプリンターズSから、秋のGIシーズンが始まりますが、いままさにパラダイムシフトの渦中にある競馬界の動きを捉え続けるように意識しながら、積極的に情報を掴むことを改めて推奨させて頂きます。
GIシーズンは、GIという格だけではなく、その他のレースにも重要なメッセージが込められている統制されたレースがいくつも施行されていきます。
競馬を楽しむという観点でいえば、「的中馬券」での一喜一憂も楽しみの1つかもしれませんが、「その先にある未来」を見据えながら、引き続きプライベートサロンを通じて、お付き合いください。
それでは、今週の<REVELATION RACE LIST>へと話を移します。
まずは土曜日に中京ダート1900mで行われるシリウスS。
16頭立てで行われるわけですが、シリウスSを1つの重賞として単体で考えるのは御法度です。
このレースに迫る上で、皆様の「共通認識」を統一しておきたいと思います。
9月30日(水)
船橋競馬場ダート1800m
「日本テレビ盃」
10月3日(土)
中京競馬場ダート1900m
「シリウスS」
地方・中央の交流重賞として水曜日に行われた「日本テレビ盃」との使い分け。
ここを無視して、シリウスSの本質に迫ることは不可能です。
6月に行われたユニコーンSの前後で公開した『REVELATION DIRECTIVE』の内容を見返していただいた方が良いかもしれませんが、今年のシリウスSで日本、そして米国の関係者が視線をまず送る対象は、American Pharoah(アメリカンフェイロー)産駒にあたるカフェファラオ。
ユニコーンSから中1週の間隔で、大井競馬場で行われたJDD(ジャパンダートダービー)では、疲れを残したまま強行策でとりあえず出走させる形であったカフェファラオ(堀厩舎)が敗れた一方で、もう1頭のAmerican Pharoah産駒のダノンファラオ(矢作厩舎)が優勝しました。
このような情勢でもあり、日本で活躍するAmerican Pharoah産駒の2頭が今年のケンタッキーダービーに挑戦するには至らなかったわけですが、この秋は「使い分け」を行ったのです。
ダノンファラオは「日本テレビ盃」へ。
(結果は7着)
カフェファラオは「シリウスS」へ。
ダノンファラオの敗因は明確です。
JDD出走時は目一杯に仕上げていたのに対し、今回は良化途上。
では、今回のカフェファラオは?
JDD(GI)<今回シリウスS(GIII)<ユニコーンS(GIII)
JDDに出走していた時よりも、動きは良い。
ただし、絶対に負けさせるわけにはいかない状況で、勝つためのお膳立てが揃えられていたユニコーンSに臨んでいた時ほどの出来ではない。
このレースを、カフェファラオ陣営がどのように位置づけているかは、説明するまでもないでしょう。
なお先日行われた「日本テレビ盃」の決着は、
1着ロードブレス(JRA所属)
馬主:ロードホースクラブ
父:ダノンバラード
2着デルマルーヴル(JRA所属)
馬主:浅沼廣幸
父:パイロ
3着ストライクイーグル(大井所属)
馬主:キャロットファーム
父:キンシャサノキセキ
JRA所属の馬は、先述のダノンファラオ7着に、C.ルメール騎手が手綱をとったアナザートゥルースが5着という決着でした。
今回カフェファラオには、C.ルメール騎手が配されています。
C.ルメール騎手
武豊騎手
浜中俊騎手
この3名の騎手は、いずれも豊沢信夫氏がエージェントを務めていることは皆様もご存知でしょう。
武豊騎手が凱旋門賞に遠征のため、メイショウワザシには浜中俊騎手が配されています。
この「浜中俊騎手」を取り巻く動き。
ここは、結構重要な着目ポイントです。
浜中騎手が前走跨っていた2頭。
アルドーレ(昆厩舎)は横山典弘騎手。
ダノンスプレンダー(安田隆行厩舎)は川田将雅騎手。
このように乗り替わっています。
昆厩舎はライトオンキュー、安田隆行厩舎はダノンスマッシュで、ともにスプリンターズSに参戦予定。
安田隆行厩舎はダノンスプレンダー(シリウスS)、ダノンスマッシュ(スプリンターズS)ともに川田騎手。
一方、昆厩舎はアルドーレ(シリウスS)が横山典弘騎手、ライトオンキュー(スプリンターズS)は古川吉洋騎手と別々の起用
馬主も異なりますので、別に不思議なことではないと言いたいところですが、アルドーレは古川騎手とのコンビで4勝をあげている馬で、前走が浜中騎手で勝利した馬です。
その浜中騎手が今回騎乗するメイショウワザシは、前走は武豊騎手の手綱でしたが、2走前、3走前は古川騎手が騎乗していました。
GIに臨むライトオンキューには起用している通り、昆厩舎が古川騎手を信頼していないということはありません。
この玉突き的な騎手と騎乗馬の流れ方。
これは「適材適所」なのです。
そして、もう1つ。川田騎手と安田隆行厩舎と同様に、福永祐一騎手と藤原英昭厩舎も、グレートタイム(シリウスS)、ミスターメロディ(スプリンターズS)と両重賞でコンビを組んでおります。
「このグレートタイムがレース中に見せる不穏な動きも、見逃さないように注意しておいてください」とだけ申し上げて、シリウスSは締めさせて頂きます。
最後に、スプリンターズSについて。
この一戦に関してはあまり多く触れることはできないのですが、秋のGI開幕戦ということで、何も触れないわけにもいきません。
ダノンスマッシュ 三浦騎手→川田騎手
ミスターメロディ 北村友一騎手→福永騎手
ダイアトニック 武豊騎手→横山典弘騎手
グランアレグリア 池添騎手→C.ルメール騎手
レッドアンシェル 福永騎手→M.デムーロ騎手
エイティーンガール 坂井騎手→池添騎手
クリノガウディー 森騎手→三浦騎手
アウィルアウェイ 川田騎手→松山騎手
上記の通り、出走馬16頭中半数にあたる8頭の乗り替わりが生じている一戦ですが、
・インディチャンプ (前走 福永騎手)
・タワーオブロンドン(前走 C.ルメール騎手)
・ステルヴィオ (前走 川田騎手)
スプリンターズSに出走を予定していた上記3頭の出走回避に伴う乗り替わりが起こりました。
出走回避に伴い、「相手馬」は玉突き的に優先順位も変化が生じた一戦となるわけですが、「本命馬◎」の変更はもちろん生じておりません。
カレンチャン、ロードカナロア時代と比較すれば、明らかに今の日本競馬のスプリント路線の馬は、世界との差は開いてしまっています。
日本の馬は、世界トップレベル。
このように言われている時代ではありますが、シビアな話をすれば、どの路線も世界との差が開き始めていると言わざるを得ないのです。
2011年から2013年頃は、ロードカナロアが国内だけでなく香港スプリントも制し、「世界のロードカナロア」と言われておりました。
同じ時代には、2011年に三冠馬となったオルフェーヴルが、2012年2013年の凱旋門賞で2年連続2着と世界制覇に、あと少しのところまで迫り、世界を驚かせました。
あれから7、8年が経過した2020年のいま。
もう一度、世界の頂点に迫っていくべく、強化していかなければならないのです。
日本ダービーや凱旋門賞は芝2400m。
芝の中距離路線での活躍を見込んだ生産、育成に力は注がれ続けているわけですが、繁殖馬に対する価値の見出され方という観点では、世界の主流は「スピード」タイプ。
スプリントやマイルに適性が高いスピードタイプの繁殖馬から芝中距離に対応できるサラブレッドを輩出させようという矛盾。
スピードタイプの繁殖馬が重宝される時代になったのは、種牡馬産業における利権の都合。
この無理難題ともいえるような試練の中で、試行錯誤を繰り返しているのです。
ただし、無謀なことではありません。
スプリント路線で活躍した繁殖馬と、中長距離傾向の繁殖馬を掛け合わせて、何頭も中長距離GI馬が誕生しています。
もっとも記憶に新しく、印象の強い存在が、2020年6月9日に34頭目のJRA顕彰馬に選出されたキタサンブラック。
父ブラックタイド(ディープインパクトの全兄)
母シュガーハート
母父サクラバクシンオー(1993年、1994年スプリンターズS連覇)
今年のスプリンターズSは、どの馬が勝つことが理想なのか。
想像しながら、秋のGIシーズンの開幕をお楽しみください。
JTTC日本競走馬育成評議会
種牡馬部門
吉田晋哉