REVELATION DIRECTIVE[毎日王冠週:2020/10/10-11号]
掲載日:2020年10月9日
■開催競馬場:東京/京都/新潟
■開催重賞:サウジアラビアRC/毎日王冠/京都大賞典
■執筆担当:吉田晋哉
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<REVELATION RACE LIST>
■土曜 東京11R サウジアラビアRC
■日曜 京都11R 京都大賞典
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平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。
東京、京都、そして新潟の3場が同時に開幕する今週は、台風14号が接近ということで全国的に荒天は避けられない模様ですが、想定以上に天候が荒れないことを祈るばかりです。
今週は、まずは少しスケールの大きなお話からさせてください。
皆様にとっても有益な話。きっと無駄にはならないはずです。
2021年東京オリンピック(開催予定)
2022年サッカーW杯カタール大会
2022年北京オリンピック(冬季)
2024年パリオリンピック(夏季)
そして迎える2025年。
世界規模の競馬産業において「史上最大レベル」の新たな市場開拓に向けて、時計の針は進んでおります。
東京オリンピック【日本/アジア】
サッカーW杯カタール大会【カタール/中東】
北京オリンピック【中国/アジア】
パリオリンピック【フランス/欧州】
競馬と関係ない話のように聞こえてしまうかもしれませんが、スポーツ産業、競馬産業が連動する形で、2025年に生まれる利権に向けて動き始めています。
実現させるには、数え切れないほどの困難な課題も残っているわけですが、中国政府が「2025年にスポーツ市場を100兆円規模の産業に育てる」ことを掲げているのは周知のとおり。
日本の国家予算が100兆円前後であることと比較すれば、中国が掲げているスポーツ市場の100兆円がいかに桁違いであるのか。
この100兆円市場には、「中国競馬解禁」の可能性が含まれている話なのです。
この場で皆まで語ることはできませんが、中国競馬解禁が現実となった場合、どのようなことが起こり始めるのか、皆様は想像することができるでしょうか。
・欧州、日本、米国といった競馬先進国から繁殖馬、競走馬を一斉購入。
・育成、生産技術のある人材をヘッドハンティング。
・マカオ、香港とは異なる中国本土での観光産業の拡大。
あげればキリがないほどの可能性が膨らんでくるのです。
先日行われた凱旋門賞を勝った4歳牡馬ソットサスは「引退&種牡馬入り」をすぐに表明。
また3着馬の4歳牡馬ペルシアンキングまでもが引退して種牡馬入りする方向で調整されています。
また凱旋門賞当日のオペラ賞に出走を予定していた今年のフランスオークス馬ファンシーブルー(牝3)も腱の損傷により、引退し繁殖入り。
ファンシーブルー
父 :Deep Impact【日本】
母父:Sadler's Wells【欧州】
ファンシーブルーの仔は、「母父Deep Impact」となるわけですので、欧州でDeep Impactの血が広まっていくことになります。
2020年引退→2021年繁殖開始→2022年初年度産駒誕生→2024年初年度産駒デビュー。
ちょうど2025年頃には、繁殖としての価値が見定められることになります。
来たる2025年に向けて、世界が動き始めているからこそ、「繁殖入り」が早まる傾向にあるといっても過言ではありません。
中国は馬券発売が禁止されているとはいえ、富裕層を中心に草競馬が各地で行われています。すでにダーレーグループ(ゴドルフィン)は中国の生産に参入しており、クールモアグループもサポートを行っています。
2025年、国内外で大きな波が起こる準備は進められているのです。
また日本国内では今開催を最後に京都競馬場は2年以上の改修工事に入ります。
これは、開設100周年を迎える2025年の記念事業の一環。
少し先の5年後の話とはいえ、あっという間に、その時は来ます。
お酒がお好きな方であれば、ジャパニーズウイスキーが高騰していることはご存知だとは思いますが、その要因は「需要」が異常になっているからこそ。
「需要」と「供給」のバランスがとれると価格は落ち着くわけですが、「供給」が少なく、「需要」が多いからこそ、ウイスキーバブルが現実に起きております。
サントリーが販売している山崎25年。
定価は12万円のものが、100万円以上にまで高騰しています。
また時計の分野でも同じような現象が起きていると耳にしております。
日本の競馬界では、社台グループの「YOSHIDA」はブランドとなっているわけですが、日本の時計業界においても有名なのは「YOSHIDA」グループ。
世界的な高級腕時計の代理店ですが、ここで取り扱っているブランドの限定品は、数年後には、購入価格よりも値が上がるそうです。
ウイスキーや時計すべてが高騰しているわけではなく、極端に「需要」が多く、「供給」が少ないものが対象となるため、その利権を手にすることが幻のような話になるわけですが、その要因は、「人口が多く富裕層の数が桁違いの中国人」が作り出しているバブルに他なりません。
ウイスキー、時計。もちろん他のジャンルでも同じようなことが起きているわけですが、株や不動産が主流だった投資対象が、中国人のエネルギーによって拡大しているのです。
日本の競馬界では、セレクトセールの設立により、競走馬の販売価格が上昇しました。
「需要」と「供給」のバランスによって価格が変動する資本主義経済の原理や、これまでの歴史をかえりみれば、これから「なに」が高騰していくのかは、想像するまでもなく明確です。
種牡馬価値も同様です。需要が高まれば必然的に値段は高まり、一方で、需要が減れば値段は下がります。当たり前のお話ですね。
種牡馬ビジネスに従事する一人の人間として、待望の時代がいよいよ近づいてきたなぁという思い。
私、吉田「YOSHIDA」も人間力というブランドを上昇させていくべく、これからの5年間、勝負を賭ける心積もりで、2025年を迎えます。
産業の発展、変化。
その裏では必ず利権のバランスが変動していくことになりますので、その渦中で立ち回ることができる当会の立場が有利であることを自覚しております。
もちろん、その有利な立場であるのは当会のスタッフだけでなく、当会のプライベートメンバーとして在籍している方々も同じです。
利権が変化すれば、必ずやレースの傾向が変わります。
間接的に馬券に繋がる有益な情報に変換することが多くなると思いますが、皆様に還元していきます。
20【25】年。
山崎【25】年。
2と5。なんだか気になってきてしまう数字ですね。
これから5年間にわたる壮大な計画という観点では、次週の秋華賞、そして再来週の菊花賞という大一番も非常に深く濃く関わってくるわけですが、今週の競馬開催でも深く関わる重賞が2つありますので、今週はその2戦についてのお話をします。
まずは、土曜日に東京芝1600mで行われる「サウジアラビアRC」について。
昨年2019年の勝ち馬は、今週の毎日王冠に出走するサリオス(父ハーツクライ)。
一昨年2018年優勝馬は先週スプリンターズSを優勝したグランアレグリア(父ディープインパクト)。
そして2017年はダノンプレミアム(父ディープインパクト)。
ここ3年の勝ち馬がGI馬になっている通り、出世レースです。
今年の出走馬は10頭。産駒の偏りはなく、10頭の種牡馬それぞれの仔が名を連ねています。
この一戦は、
「見えるものよりも、見えないもの」
このことをまずは意識してみてください。
ディープインパクト
キングカメハメハ
ロードカナロア
ハーツクライ
オルフェーヴル
ルーラーシップ
ダイワメジャー
種牡馬リーディング上位にいる上記の産駒はすべて排除され、出走馬選定の時点で明確なメッセージが込められているのです。
次週の京都で行われる紫菊賞に出走予定というカモフラージュから、サウジアラビアRC出走に舵を切ったステラヴェローチェはバゴ産駒で母父はディープインパクト。
1つの指標になるべくして、送り込まれるのです。
今年の2歳世代が初年度産駒であり、この世代でもっとも注目が集まっている種牡馬はモーリスとドゥラメンテ。
インフォナイト(牝2)
父 :モーリス
母 :モルガナイト
馬主:サンデーレーシング
生産:ノーザンファーム
キングストンボーイ(牡2)
父 :ドゥラメンテ
母 :ダイワパッション
馬主:吉田和美
生産:田上徹
前者のインフォナイトは正真正銘のノーザンファームが生産し、育成、所有とすべて関わった馬。
後者のキングストンボーイは、セレクトセール2018でノーザンファームが落札して手に入れた馬。
先述のステラヴェローチェに、ハービンジャー産駒のジャンカズマと合わせるとノーザンファーム関連馬が4頭出走し、レースを作り上げるために必要な駒を揃えたといっても過言ではありません。
最小限におさえて、邪魔になる馬は出走させない。
その結果が10頭立てという出走頭数なのです。
海外からのニーズ(需要)を、さらに高めていくに値する血を持つ存在。
ディープインパクト産駒、キングカメハメハ産駒、ロードカナロア産駒、ハーツクライ産駒を活躍させるメリットよりも、来たる将来に向けて価値を高め、利権の最大化を追求することが優先される一戦。
マイルGIの安田記念を制したグランアレグリアが、秋のGI初戦スプリンターズSを優勝したことにより、「日本のマイル」への注目が増しております。
グランアレグリアで作ったこの流れ。
サウジアラビアRCの決着を通じて、「ジャパニーズマイル」の価値が高まるはずです。
一方、日曜日に行われる「京都大賞典」は、芝2400mのクラシックディスタンスで行われる一戦。
まずは、
「キセキは、本命でも対抗でもない」
と言わせていただきましょう。
実績でいえば、宝塚記念2着馬ですので、メンバーの中では一、二の存在。
しかしながら、キセキ云々ではなく京都大賞典のミッションの在り処は、他にあるのです。
出走馬17頭のうち、社台系関連馬(レイクヴィラF生産馬も含む)は11頭。
その中には、
<池江泰寿厩舎>
・シルヴァンシャー(サンデーレーシング)
・アイスバブル(金子真人ホールディングス)
<矢作芳人厩舎>
・ステイフーリッシュ(社台レースホース)
・タイセイトレイル(田中成奉)
池江厩舎と矢作厩舎が、それぞれクラブ法人と個人馬主の馬を1頭ずつエントリーしての2頭出しが行われるところもポイントで、この4頭がそれぞれどの位置で競馬を進めるのか注目してください。
特に昨年3着であったシルヴァンシャーの位置取りと動きは必ずご確認ください。
シルヴァンシャーの動きが、合図になります。
「サインプレー」といえばわかりやすいでしょうか。
であるからこそ、ノーザンファームが最近重宝している北村友一騎手が、【政治的】にシルヴァンシャーの鞍上として配されたわけです。
そのシルヴァンシャーを含めてサンデーレーシングは3頭、シルクレーシングが2頭の同一馬主による複数頭出しも行われるわけですが、<クラブ馬群>と<個人馬主群>にわけると、
<クラブ馬群>8頭
・ダンビュライト(サンデーレーシング)
・シルヴァンシャー(サンデーレーシング)
・パフォーマプロミス(サンデーレーシング)
・モンドインテロ(シルクレーシング)
・グローリーヴェイズ(シルクレーシング)
・ステイフーリッシュ(社台レースホース)
・カセドラルベル(吉田勝己/社台グループオーナーズ)
・ドゥオーモ(広尾レース)
<個人馬主群>9頭
・キセキ(石川達絵)
・タイセイトレイル(田中成奉)
・ノーブルマーズ(吉木伸彦)
・リッジマン(辻牧場)
・アルバート(林正道)
・バイオスパーク(宮田直也)
・アイスバブル(金子真人ホールディングス)
・ミスマンマミーア(吉田勝利)
・キングオブコージ(増田和啓)
このようになります。
もう少し、突っ込んだ話をするならば、サウジアラビアRCとは対極ともいえるのが、産駒の構成。
ディープインパクト産駒(5頭)
・シルヴァンシャー
・モンドインテロ
・グローリーヴェイズ
・ドゥオーモ
・アイスバブル
ハーツクライ産駒(2頭)
・タイセイトレイル
・カセドラルベル
ステイゴールド産駒(2頭)
・ステイフーリッシュ
・パフォーマプロミス
ルーラーシップ産駒(2頭)
・ダンビュライト
・キセキ
オルフェーヴル産駒(1頭)
・バイオスパーク
ロードカナロア産駒(1頭)
・キングオブコージ
サウジアラビアRCからは追いやられた産駒が、この2400m戦には多数出走しているのです。
最後にもう1つ馬券的な話をすると、世間からは【伏兵】とか【穴】と思われているような存在が、今回上位評価です。
サンデーレーシング3頭、シルクレーシング2頭。
池江厩舎2頭、矢作厩舎2頭。
今回の出走馬構成を見れば、このような複数頭出しとはいえチーム戦は明確には見えてこないかもしれませんが、京都大賞典は明らかなチーム戦です。
繰り返しになりますが、今週もっとも政治的な役割が託されているのは、北村友一騎手です。
今週お話できるのは、ここまでとなります。
JTTC日本競走馬育成評議会
種牡馬部門
吉田晋哉