【結果総括】REVELATION REPORT[ジャパンC週:2020/11/28-29号]
掲載日:2020年11月30日
平素は格段のご厚情を賜り、厚くお礼申しあげます。
JTTC内部監査室長を務める宇野篤でございます。
3強対決の構図が敷かれた今年のジャパンカップにおいて、然るべき決着シーンをお届けするには至らず、誠に無念の極みであります。
同日に行われた東京6R 2歳未勝利とともに、Revelation Directiveを通じて取り上げていたジャパンカップについては、アーモンドアイのこれまでの功績を讃えたうえで、それでもアーモンドアイを上回る結果を求めての◎デアリングタクト陣営、○コントレイル陣営に焦点をあてたレースでもございました。
結果をご覧いただいたなかで、三者三様のご意見を頂戴することとなりましたが、なかでも3歳馬2頭が互いに意識し合っているようにみえたとするメッセージは、真っ当な競争原理が働いていたことを指し示す内容であり、その上で的中馬券を得るという結果が伴えば申し分ない結果でございました。
一方で、この結果統括の場は、「根拠と結果の因果関係を共有する」ことに普遍的な意義があると考えておりますので、これまでと何ら変わりなくRevelation Directiveを通じてお伝えしていた前提条件とともに、この度の敗因を我々がどうみているのかという観点でもって最後までお付き合いいただければ本望です。
まず、今回のジャパンカップを迎えるにあって、種牡馬部門の吉田がいの一番に言及していたのが、社台SSより11月24日に発表された2021年度の種付け料の一件でした。
以下に要約しますと、
・昨年のジャパンCにおいて、スワーヴリチャードが優勝したことによる恩恵を最も受けたのはスワーヴリチャードではなく、昨年のジャパンCで11着に敗れていた“あの馬”=レイデオロ
・GI7勝馬キタサンブラックの300万円、クラシック三冠を含むGI6勝馬オルフェーヴルが350万円に設定されいるのに対して、レイデオロの種付料は600万円据え置き。レイデオロの種牡馬としての価値を物語る強気な価格設定。
・ディープインパクト、キングカメハメハが逝去したことに伴い、日本の種牡馬の威厳を保つために、2020年度は一時的に強引な形で「2000万円」に設定されたロードカナロアの2021年の種付け料は、500万円ダウンの「1500万円」に戻された。
・三冠牝馬デアリングタクトの父エピファネイアは、2020年500万円から倍増の1000万円に設定。
・現役時代はダービー制覇。GIタイトル1つで引退し、種牡馬としてはGI馬を輩出していないキズナも、2021年の種付け料は1000万円にアップ。
・今年初年度産駒がデビューしたばかりで、重賞勝ち馬をまだ輩出できていないもののドゥラメンテの種付け料も1000万円に。
・Unbridled's Song産駒のFirst Defenceを父にもち、アーモンドアイと同じく4代母にBest in Showの血をもつ『シスキン』を2021年より種牡馬として導入(種付け料350万円)。
ここまでの内容からも、デアリングタクトであり、コントレイルに帰結する種牡馬事情に関する考察が述べられていた点は、ご理解いただけていたと思います。
レース当日、プライベートメンバー様へご提示するに至った最終見解については、情報漏洩等の懸案事項に繋がることから、この場ですべてをご紹介するわけにはいきませんが、総評としてご提示している内容からも、主たる敗因は松山騎手と福永騎手が互いに過剰なまでに意識し合っていたことから、アーモンドアイのルメールに出し抜かれたとする鞍上の駆け引き故の着差であったと結論付けております。
[日]東京11R ジャパンカップ
プライベートランク:☆☆☆☆☆
<評価順>
◎5 デアリングタクト
○6 コントレイル
▲15 グローリーヴェイズ
☆2 アーモンドアイ
注1 カレンブーケドール
<結果>
1着☆2アーモンドアイ
2着○6 コントレイル
馬単:610円不的中[8点]
<総評>
無敗の3冠馬2頭を引き連れ、言うなれば世代交代を象徴するにふさわしい舞台として迎えた今年のジャパンカップ。見解内で示していたとおり、焦点はデアリングタクトでありコントレイルの2頭にあったなか、戦前の想定を遥かに上回るスタートダッシュを決めたアーモンドアイ。レース序盤でキセキが大きくリードを広げるなか、同じシルクレーシングのグローリーヴェイズを見る形で、2番手以下の隊列を形成すると、このアーモンドアイを追う形でデアリングタクト、その直後にコントレイルが構える競馬。本来であれば勝負所を迎えるにあたって、完全にアーモンドアイを射程圏とする立ち回りで上位進出を図るべき4角のシーンにおいて、デアリングタクトの松山とコントレイルの福永が過度に追い出すタイミングを牽制し合ってしまい、結果的にアーモンドアイに出し抜かれる結果に。また、致命的な不利とまではいえないものの、最後の直線走路においてはコントレイルが突如内にささったことで、デアリングタクトが怯む場面もあり、芝目が良いとはいえない馬場の内側へと進路を切り替えるロスも手痛いものであった。
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無論、これら総評に記された内容以外にも、この度の敗因に繋がった考えられる幾つかの材料を鋭意精査している段階ですが、敗れたとはいえ、デアリングタクトとコントレイルのパフォーマンスを通じて馬体や状態面に何ら落ち度がなかったことは明言致します。
また、奇しくも、C.ルメール騎手、松山騎手、川田騎手といった面々がジャパンカップを控える中、Revelation Directiveを通じて【露骨な一戦】と公言しておりました東京6R 2歳新馬の一戦。
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一言でいえば、【露骨】な一戦です。
今週の競馬開催を迎える前の2歳馬部門の種牡馬リーディングランキングを確認ください。
↓ ↓ ↓
1位 ディープインパクト
2位 モーリス
3位 ドゥラメンテ
4位 キズナ
5位 エピファネイア
『ディープインパクト産駒不在の2歳戦』
偶然いないわけではなく、意図的にディープインパクトを出走させない一戦なのです。
モーリス産駒も不在ということにはなりますが、モーリスの父にあたるスクリーンヒーロー産駒が最多の3頭出走。
なお、出走馬13頭はこのようなメンバー構成になっています。
<吉田一族(社台系)>
・オンザライン(久保田定)
・ガンダルフ[サンデーレーシング]
・ギャラクシーエッジ[サンデーレーシング]
・フィルモグラフィー[社台レースホース]
・ロジローズ(久米田正明)
・ロングラン(梅澤明)
<岡田一族(ビッグレッドファーム系)>
・イザニコス[サラブレッドクラブ・ラフィアン]
・ウインチェレステ[ウイン]
・コスモジェニー(ビッグレッドファーム)
・ソングオブソフィア[ノルマンディーサラブレッドレーシング]
<その他>
・アビッグチア(藤田在子)
・コンフィアンス[京都ホースレーシング]
・ナイトエクスプレス(石瀬浩三)
同一馬主としてサンデーレーシングが2頭出しを行う一戦になりますが、
・ガンダルフ
国枝栄厩舎/川田将雅騎手
・ギャラクシーエッジ
萩原清厩舎/C.ルメール騎手
なぜC.ルメール騎手が、当日のジャパンCではアーモンドアイで国枝栄厩舎とコンビを組むのにも関わらず国枝厩舎の管理馬ガンダルフではなく、萩原清厩舎のギャラクシーエッジに騎乗することになったのか。
2021年の種付け料の話をもう一度しますが、このタイミングでエピファネイアの種付け料を500万円から1000万円に上げることができたのは、岡田牧雄氏が率いるノルマンディーサラブレッドレーシングの所有馬であるデアリングタクトが牝馬三冠を達成した功績によるものです。
いずれにしろ、エピファネイアの種付け料は上昇曲線を描いていたかもしれませんが、いま上げることができたのは、デアリングタクトの活躍があってこそ。
エピファネイアの繋養先は社台スタリオンステーションであり、その種牡馬価値を跳ね上げたのは、岡田氏側。
それを受けて、それぞれがメンバーを選抜して集められたのが、今回の13頭というメンバー構成なのです。
「敵・味方」という視点ではなく、「同じ方向性を描いている同志」ということをイメージすると、今までとは見えてくる景色がきっと変わるはずです。
貸し借りの原理原則を想像しながら、日曜日の東京6Rに注目してみてください。
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こうした示唆であり提言が戦前の段階でなされていたわけですが、先の結果速報にもございますように、こちらはウインマリリンの半弟という岡田一族の支配下にあった◎ウインチェレステ×横山武騎手に本命を託した一戦。
[日]東京6R 2歳新馬
プライベートランク:☆☆☆☆☆
<評価順>
◎10 ウインチェレステ
○12 ソングオブソフィア
▲13 ガンダルフ
☆1 ギャラクシーエッジ
注2 ロジローズ
△9 アビッグチア
△8 イザニコス
<結果>
1着△9 アビッグチア
2着◎10 ウインチェレステ
馬連:1万8460円的中[6点]
<総評>
ラジオNIKKEI賞の優勝馬ウインマーレライ、オークス2着のウインマリリン等を輩出した名牝コスモチェーロの7番仔にあたる◎ウインチェレステを本命抜擢のうえ臨んだ一戦。鞍上にはウインマリリンの主戦を務める横山武騎手を配し、管理する畠山調教師からも遅生まれというビハインドを感じさせない走りっぷりとする推奨コメントを見解内で示していたが、ウイン系列にあってドゥラメンテを配してきたように場産地における補完関係を象徴する血統馬であり、結果的に速めに抜けだした△アビッグチアを指し損ねたとはいえ現状の完成度を踏まえれば、将来は約束されたようなもので今後の動向には是が非でもご注目いただきたい。
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ここ数週間のレポートをご覧いただければ、2歳戦に限らず、横山武騎手の存在をクローズアップする機会に恵まれ、百日草特別を勝利した◎エフフォーリアなどは、その象徴的事例ともいえます。
今回の◎ウインチェレステは、岡田一族の完全支配下にある所有馬とあって、「表」と「裏」とで情報を出し分けるほどの統制がなされており、現に同馬のポテンシャルをもってして4人気という評価に甘んじていたあたりは、馬連万馬券を呼び込んだ大きなポイントでもございました。
実質的には、10人気1着の△アビッグチアが逃げ切ったことによる万馬券でもあるわけですが、父ロジユニヴァース、母ロジフェローズと両親ともに久米田オーナーの所有馬であり、現に2人気の支持を得たノーザン育成馬ロジローズが3着に敗れたなか、日高町、新冠町の中小牧場から出生した2頭が先着を果たしたシーンは、吉田が言う
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「敵・味方」という視点ではなく、「同じ方向性を描いている同志」ということをイメージすると、今までとは見えてくる景色がきっと変わるはずです。
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とした意味合いを、ありのままに体現してみせたレースでもございました。
ともすれば、その岡田一族の支配下にあって、エピファネイアの種牡馬価値を「倍額」という種付料でもって押し上げてみせたデアリングタクトは、社台SSにとっては頭が上がらない存在ともいえるわけでして、中山・阪神・中京の3場に舞台を移し行われる師走競馬でもって、ジャパンカップの雪辱を晴らすにふさわしい「配当」をお届けする所存です。
JTTC-日本競走馬育成評議会
内部監査室長
宇野篤