REVERATION DIRECTIVE[共同通信杯週:2021/0213-14号]
掲載日:2021年2月12日
■開催競馬場:東京/阪神/小倉
■開催重賞:クイーンC/共同通信杯/京都記念
■執筆担当:松井彰二
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<REVELATION RACE LIST>
■クイーンC
■共同通信杯
■フェブラリーS
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「僅か一週の成績が信頼の脚元を揺らすこともある」という意味で、当会が今週置かれている立場は全く楽観視できないものであるという自覚を持つことが重要であると認識している。
先週刻んでしまった三ツ星以上の指定レースにおける「週間3敗」という記憶は、今後の様々な勝負の局面において「不安」を醸成する種の様なものになる可能性があるという点、これこそが当会が大きく懸念している点である。
競馬に絶対は無いという本質は理解できていたとしても、直近脳裏に刻まれてしまった「苦杯」の味というのは、なかなか消し難いものであることは、私自身嫌と言うほど身にしみている。
だからこそ、私のみならず、種牡馬部門の吉田を含め、何度も「申し訳ない結果であった」という事を先週以降口にしてきた。
ここまで残し続けてきた戦績がこの「3敗」で消し去るとは思っていない。
今後しっかりと巻き返すことによって「あんなアクシデントが重なるような事はめったに無いこと」という事も証明されるだろう。
がしかし、「その心境を今週すぐに持つことが出来るか?」と言われれば、中には「難しい」と思ってらっしゃるメンバー様も居るはずなのである。
それが、心底心苦しいのである。
今は、非常に重要な時期であり、超法規恩赦の真っただ中。
一分の不安すら感じて欲しくない時期であり、真っすぐ「勝負」に向き合ってほしい絶好のタイミングが今なのである。
もちろん、多くのメンバー様には今までも「不的中との向き合い方」「考え方」に関しては、お話ししてきたつもりであり、更に当会が真っすぐここまで進んでこられているのも、そういった「理解度の高いメンバー様」に恵まれてきたからであるという事も理解している。
しかしながら、この重要な時期に「不安」感じさせてしまった事には、心よりお詫び申し上げたい。
「ここまでの儲けを考えればこれくらいの事では不安になったりしない」
と仰って下さるメンバー様も多いが、やはり、今は恩赦競走にご参加いただいた経験が無いメンバー様もいらっしゃる状況。そいういった方にしてみれば「共同通信杯も同じような結末になってしまうんでは無いだろうか」とお考えになる可能性もゼロではないと思っている。
今週末が終われば、このような不安は解消されると確信しているが、今週の共同通信杯に対してはいわゆる「大船に乗ったつもりで参加していただく」という心境にさせて差し上げられない中での出航になってしまったという中で、土曜日のレースにて的中をお届けし、まずは、ご不安を払しょくしていただく事が我々の使命であると、そこに全力を注ぐ所存。
恩赦競走である共同通信杯への不安は皆無だとしても、前日のクイーンCの的中を皆様にお届けすることで、「当会の情報が乱れているわけではない」という事実を、ご理解いただきたいというのが、今私どもに出来る最大の努力。
もちろん競馬に100%は無い。
つまりは、明日のクイーンCが不的中に終わってしまう事になれば、より大きな不安を重ねてしまう事になる。
しかしながら、そのリスクがあったとしても申し上げたいのは「ここ数週間でご提供した各種レースの中でも制度に関しては万全である」と申し上げておきたい。
無論、本年のクイーンCに関しては先週の結果があったから急遽対応を強化したという事ではなく、本年の牝馬クラシック戦線に向けて非常に重要な立ち位置にあるレースであるという事で、従前から「2021主要重賞」に設定されていたレースであり、出走馬、更には、思惑を含めてガバナンスが効かされたレースである。
その背景をご理解いただくためにも、まず、近5年のクイーンC上位3着を記述させていただく。
■2016年
1着メジャーエンブレム【NF】
2着フロンテアクイーン【他】
3着ロッテンマイヤー【NF】
■2017年
1着アドマイヤミヤビ【NF】
2着アエロリット【NF】
3着フローレスマジック【NF】
■2018年
1着テトラドラクマ【NF】
2着フィニフティ【NF】
3着アルーシャ【NF】
■2019年
1着クロノジェネシス【NF】
2着ビーチサンバ【NF】
3着ジョディー【NF】
■2020年
1着ミヤマザクラ【NF】
2着マジックキャッスル【SF】
3着セイウンヴィーナス【他】
※【NF=ノーザンF】【SF=社台F】
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直近5年で「13頭」が社台グループの生産馬であり、勝馬の種牡馬は「ディープインパクト」「バゴ」「ルーラーシップ」「ハーツクライ」「ダイワメジャー」である。
この前提DATAを元に、出走各馬を以下の分類に分けさせていただく。
■父:ディープインパクト
アカイトリノムスメ【NF】
イズンシーラブリー【SF】
エイシンヒテン【他】
ステラリア【SF】
ハッピーオーサム【NF】
■母父:ディープインパクト
アールドヴィーヴル【NF】
ククナ【NF】
スライリー【他】
■父:ダイワメジャー系
カイトゲニー【他】
サルビア【NF】
メインターゲット【SF】
■上記以外
インフィナイト【NF】
カナリキケン【他】
ミヤビハイディ【他】
リフレイム【他】
レッジャードロ【他】
ここで一つ重要な視点を申し上げる。
「このレースで好走するという事がどういうことなのか?」正にその一点に尽きるのだが、それを踏まえ以下の馬名をご覧いただきたい。
クロノジェネシス
アエロリット
メジャーエンブレム
ミッキークイーン
ヴィルシーナ
ホエールキャプチャ
直近10年にてクイーンCで好走し、後にGI馬となった馬である。
先ずご理解いただきたいのが本年の出走馬の父の名前に「ロードカナロア」の名が無いという事。
そして、上記GI馬になった馬の中で現役のクロノジェネシス、引退したばかりのアエロリットを除く4頭「メジャーエンブレム・ミッキークイーン・ヴィルシーナ・ホエールキャプチャ」の直近2年の産駒のいずれかが全て「ロードカナロアの仔」であるという事。
この例を見れば、桜花賞に直結しやすいチューリップ賞ではなく、なぜこれらの馬が「クイーンC」を使われるローテーションが組まれてきたのか、見えて来たのではないだろうか。
冒頭にお話しした通り、今、当会が置かれている状況を鑑みれば「慎重に慎重を重ねるべき週」であり、毎週松井の暴露話でも読むかのようにREVERATION DIRECTIVEを楽しみにしてくれているメンバーの皆様には忍びないのだが、クイーンCについてこれ以上触れることは今週は避けさせていただく。
その上で、共同通信杯の話に移りたい。
その前に2021年種付けシーズンに突入する上で1つ再確認しておかねばならない事がある。
社台スタリオンステーション繋養種付け上位種牡馬
1位:ロードカナロア【2000万→1500万】
2位:キズナ【600万→1000万】
2位:ドゥラメンテ【700万→1000万】
2位:エピファネイア【500万→1000万】
5位:モーリス【400万→800万】
6位:ブリックスアンドモルタル【600万】
6位:レイデオロ【600万】
この種付け上位馬の並びを見た際にどれだけの競馬ファンの方が違和感を抱いてくれるだろうか。
世界競馬がセリでの競走馬売買に陰りを見せている中で活況の真っただ中にいる日本競馬。
それは外の世界から見れば「異常な世界」であり、それでも「日本のオーナーは購入するのか?」という疑問を誰もが抱く状況下にある。2020年に競りで売買された競走馬の約60%が「割高馬」といわれており、ある種の競走馬バブルが生まれているのが現在の日本市場である。その反動は、本年から少しずつ馬主の懐事情を蝕み、その反動は「まず日高の零細牧場に跳ね返る」という試算が出ている。
さらには「ディープの繁殖牝馬」に関しては、「手放すには購入資金が高かった事」かといって種付けするには上記キズナを除いた種牡馬がメインになってしまうという状況。
良血かつ高額な牝馬を買えば、「それを繁殖牝馬として仔分けとして自家生産馬として走らせたい」と思ってしまうのが、馬主の性である。つまりは、零細牧場に高い種付け料を負担させるのではなく、「ディープ牝馬を持ち仔分けで自家生産を目論む馬主」をターゲットにした価格設定であるのだ。
さらに言えば、キズナの1000万円は「日高の牧場に付けにくくさせ、自らの持つ優秀な繁殖を集中させる事」で、日高地区に優秀なキズナ産駒を減少させて、セリでさらに高値で売るという戦略であることはご理解いただけるであろう。
超法規恩赦期間に突入してから幾度となく「社台Gの覚悟」という言葉を使わせて頂いているが、蜘蛛の巣にからめとられるように「社台SS」に資金が流れる仕組みが作られているのである。
とはいえ、社台Gとしてもかつての「日高のサンデーは走らない」と言われてしまったような「露骨な政策」は敷くわけにはゆかない事情もある。そのあたりを触れることは出来ないが、その緩和策としてこの超法規期間があると言っても過言ではない。
その上で今回共同通信杯に出走する社台G生産馬を2つに分けて表記する。
■クラブ法人
ヴィクティファルス
エフフォーリア
シャフリヤール
ディオスバリエンテ
■個人オーナー
ステラヴェローチェ
ディープリッチ
ハートオブアシティ
レフトゥバーズ
これだけのグループ生産馬が出走していながら「社台グループの主戦」ともいえるルメール騎手は、自グループ牧場の生産馬ではない「ドゥラメンテ産駒のキングストンボーイ:馬主吉田和美」に跨らせているのである。
もちろん、このレースには
・シャフリヤール
・ステラヴェローチェ
・ディオスバリエンテ
といった有力馬が出走しており、どの馬も「主戦騎手」が決定している事からも、ルメール騎手が割り込む隙は無い。また、ディープインパクトの牝馬であるレフトゥバーズをわざわざ共同通信杯に向かわせた意味。
そして、本年の共同通信杯には「キズナ産駒」は出走させていないのである。
更にもう一点非常に重要な話を申し上げておく。
来週に控えているフェブラリーS。
クリソベリルの故障、チュウワウィザードのサウジC遠征の裏でどのような密約が動いているのか、という意味でも、この共同通信杯ほどではないにしても大きな関連性があるという事は申し上げておく。
ダート界における新たな動きと、今回の超法規恩赦期間、そして、共同通信杯の裏側に通底している一つのテーマとして、本年のフェブラリーSがどのような立ち位置にあるのかは非常に重要なヒントであり、ある意味では共同通信杯の結果がフェブラリーS与える影響は、実は甚大であると言える。
このあたりは来週深く掘り下げるとして、共同通信杯に話を戻す。
流石に現在の状況下では、私であっても多くを語る事は避けなければならない事は理解しており、重要な一つのキーワードをこの場に書き記して、締めさせていただく事しかできないのだが、「ディオスバリエンテ」「ステラヴェローチェ」「シャフリヤール」の人気上位3頭に関して、「それぞれの新馬戦2着馬の勝ち時計」に関して、しっかりとチェックしておいて欲しい。時計が速い遅いといった単純な話だけではなく、「なぜ、その時計での勝ち上がり」「なぜそのタイミングでの勝ち上がり」が必要だったのか?という、「その意味」について想像を巡らせていただきたいという意味である。
危険な人気馬の可能性を秘めた馬がどの馬なのか。
社台Gの覚悟は、どのような結末を望んでいるのか。
出来る限りの先入観を排除して、出走馬をフラットな目線で見て欲しい。
また、チュウワウィザードがサウジカップに「遠征しなければならなかった理由」がどのようなものなのか、この春続々と明らかにされるであろう「社台SSの思惑」は、様々なレースに大きな影響を与えることは確実である。
それらの詳細を出来る限りこの場で語らせていただく上でも、今週のレース結果はその「規制レベル」に直結する。
その為にもなんとしてでも今週は結果に拘らなければならない週であり、スタッフ総出で昼夜問わずの対応をさせて頂いた。
勿論今までが手を抜いていたという事は一切ないが、週頭に技術理事を集めて行った緊急対策会議にて得られた改善への手ごたえを、「即時【結果】で掴み取れること」は、私どものみならずメンバーの皆様にも多くの安心を与えられるはずであると考えている。その意味で、珍しく神頼みをしてでも、その想いが届いてほしいと強く願っている週であることは確かである。
JTTC日本競走馬育成評議会
松井彰二