REVELATION DIRECTIVE
REVELATION DIRECTIVE[天皇賞春週:2020/0502-03号]
掲載日:2020年5月1日
■開催競馬場:東京/京都/福島
■開催重賞:天皇賞春/青葉賞
■執筆担当:松井彰二
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<REVELATION RACE LIST>
■スイートピーS
■天皇賞春
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今週の28日29日に渡り入札で行われた第16回JRAブリーズアップセール。
初の試みではありましたが、売却率100%で売上は6億6060万円。
昨年の8億4500万円には届きませんでしたが、2017年、2018年の売上を上回ったことは非常に素晴らしいといえ、緊急時に入札方式を採用したことで今後の競走馬の売買方式に新たな手法が一つ加わった感があります。
セリでは会場の雰囲気も含め、価格の幅の変動が大きいですが、入札方式であれば、それぞれの「見立て」、つまりは「相馬眼と相場観」が試されるわけですから、より正確な評価に近づくわけです。当会もこの入札に参加させて頂きましたが、セリ以上に奥深いですね。これは入札するオーナーによっても癖は出ます、例えば『1000万が相場』だと思った際に、「1010万」と入札する方もいれば「1030万」と入札する方もいる。相場観+「◯◯万」のところが絶妙に癖が出るので、どのオーナーが入札しそうか、その上でどの程度の相場観で該当馬を判断しているか、その読み合いはセリよりも確かに勉強になりますね。セリはいうなれば「札束で殴り合う喧嘩もしくはチキンレース」と化しますが、入札は「調査力・洞察力・相馬眼を駆使した頭脳戦」とも言えます。
当会がコンサルテーションした馬主さんも「これはセリより面白いかも知れない」と口にしており、今後「入札方式」が採用されるか否かの動向を見守りたいと思います。ただし、牧場側は、「熱くなって値段を釣り上げてくれるから予想外の高値なんてこともあるし、セリ(オークション形式)の方が夢はあるけど、入札方式であれば、安い馬にも入札が入りやすいから、一長一短だね」と感想を漏らしており、まだ導入への溝はありそうです。
一方で、HBAトレーニングセールは開催を中止。
北海道で行われるセリなだけに、中止はやむを得なかったと言わざるを得ないでしょう。
こちらも入札方式を採用するかと思われましたが、上記したような牧場の意見も含め、各牧場が相対取引(庭先取引)にて、販売を行うとの方針で決着。
当会ともつながりの深い育成牧場も数多く、まさに無念といった声が数多く届いております。
上場予定馬は162頭。結果として相対販売(庭先)になるわけですが、中には自分で使うという決断を下した牧場もかなりの数に登ります。
元々目をつけていた12頭ほどの上場馬に関しては、当会が仲介しオーナー様と牧場を結びつけ成約に至りましたが、まだまだ頭数は残っている状況。
地方馬主も多いセリだけに、今後の動向次第では当会も地方馬主様と牧場の仲介に助力していく腹づもりでございます。
尚、社台Fを中心に執り行われる「千葉セリ」に関しては、6月5日(金)に開催日を変更の上実施する予定ではありますが、緊急事態宣言の延長がほぼ確定の状況で、再延期ならまだしも開催が危ぶまれるケースも出てきます。販売予定頭数は75頭。一時はスウェプトオーヴァーボード専用のせりなどと嘯かれでおりましたが、本年のラインナップは魅力的な種牡馬で彩られているだけに、当会としても、開催に漕ぎ着けるための調整に全力で協力してまいりたいと思っております。
仮に開催中止となっても、社台F自体は昵懇なオーナーも多く、社台グループオーナーズもあるため売れ残りを懸念する必要は無いですが、育成担当者としては、トレーニングセールは一つの晴れ舞台であることに間違いはなく、彼らの気持ちを慮れば、緊急事態下とはいえ、育成技術向上をお披露目する舞台がこれ以上失われてしまうことがないように、出来る限りの根回しをさせて頂きたいと思う次第です。
更に馬産地全体で言えば、オーナー様の多くが企業経営者であることは言うまでもないですが、それらの企業経営の状況が読めず、今後のセリシーズンに向けての心配の声は多数上がっております。外出自粛要請が続く中、北海道各地の牧場からの声を集約すると、「例年ならこの時期は7月のセリに向けて下見に訪れてくれる、調教師、オーナー、エージェントが多いのですが、皆さん馬を見に来られない状況。既にセレクトセール、セレクションセールへの上場審査申込は締め切っていますが、本当にセリが開催されるのか、開催されても本当に多くのオーナー様が購買してくれるのか、心配は絶えない」との声が多くを占めている状況です。
ここ数年、一時の「馬安」の状況を脱し、セリの価格が高騰し馬産地ではプチバブルと言える状態が続いていました。
その際に、「セリの方が高く売れる」と、「馬安」の時期に助けてもらったオーナーからの庭先交渉にもかかわらず、それを断りセリに上場した牧場などは、その際の不義理がしっぺ返しとして自らの首を絞める形となり、義理を大切にしてきた牧場と明暗が別れている状況でもあるわけです。当会としても、そのような銭ゲバ牧場を救済することには正直気がすすまないわけですが、とはいえ、馬事産業全体を考えれば、更には、命あるサラブレッドの未来を考えれば、救いの手を差し伸べるのもホースマンシップであると考えているわけです。
尚、当会の北海道支局員からの報告によれば、「現在、北海道在住の競走馬エージェントと連携を取って、相当数の生産牧場・育成牧場とのパイプ強化に努めています。中には、『しばらくは馬券で食っていくしか無いから協力して欲しい』と先方から協力要請が入った牧場も多いので、その成果を近日中にメンバー様にもお伝えできると思います」という報告も上がってきております。
その意味では、今、サポート体制の面でご不便をおかけしているプライベートメンバーの皆様には、『情報強化』という朗報として捉えていただけますので、今後の展開を楽しみにお待ちいただきたいと存じます。
改めまして、新型コロナの影響により、当会のプライベートメンバー様にもご不便をおかけしている状況。
馬事産業の一端を担う当会としても、関係者から感染者を出さない事を徹底しておりますが、メンバー様のサポート体制においては、お電話での対応等が休止となっていること、大変申し訳なく思っております。
各支局、各部門、各担当、この様な状況下ではありますが、活動の質は低下させておりませんので、引き続きご期待を寄せて頂き、変わらぬご愛顧を賜われれば幸いです。
さて、馬事産業全体を見渡せば、この様な事象が脚元で起こっておりますが、更に視野を広げれば、今まさに競馬界のパラダイムシフト真っ只中と言える潮流は、粛々と大転換への歩みを進めているわけです。
その様な中、今週、天皇賞(春)以上に注目しなければならない競走がスイートピーSでございます。
それは、オークストライアルとしての意義というよりも、「パラダイムシフトの渦中にある」という視点が上になります。
そもそも、ダービー、オークス、に向けてのトライアルに関しては、数年前に「規定」が変更されたことは皆様もご存知でしょう。
今回取り上げている「スイートピーS」に関して言えば、2着までに優先出走権が与えられていましたが、規定改定後は「優勝馬のみ」に変更されました。
ストレートに申し上げれば、「その一枠がどの馬に渡されるのか」は既に決まっていると言っても過言ではありません。
既定路線が敷かれているスイートピーS。
メンバーをいくつかのグループに分けながらおさらいいたします。
■2勝馬
・オータムレッド
・クリスティ
・ミアマンテ
■重賞5着以内/OP特別3着以内経験馬
・アカノニジュウイチ
・エンジェルサークル
・オータムレッド
・オーマイダーリン
・クリスティ
・スマートリアン
・チェスナットドレス
■外国人騎手騎乗馬
・デゼル:D.レーン
・ミアマンテ:L.ヒューイットソン
■社台G生産馬
・アカノニジュウイチ
・アクロアライト
・エンジェルサークル
・オータムレッド
・オーマイダーリン
・デゼル
・ホウオウエミーズ
・ミアマンテ
・ライクアジュエリー
・ルヴェルソー
・ロッタチャンセズ
■ディープインパクト系
・オータムレッド(ワールドエース)
・オーマイダーリン(直仔)
・キングスタイル(直仔)
・クリスティ(キズナ)
・スマートリアン(キズナ)
・デゼル(直仔)
・バルトリ(直仔)
・ロッタチャンセズ(直仔)
■社台オーナーズ/クラブ法人
・アクロアライト
・エンジェルサークル
・デゼル
・ミアマンテ
・ロッタチャンセズ
さて、一つずつ紐解きたいと思います。
まず、注目しなければならないのが、身元引受人である堀厩舎の馬が出走しているにも関わらず、友道厩舎所属のデゼルに騎乗しているD.レーン騎手。
もちろん、その背景には「采配」を奮っている人物が居るわけですから、この配置はもちろん意図的なわけです。
土日の東西騎手移動制限が敷かれている今、淀の3200mで行われる天皇賞に「D.レーン騎手」が参戦しない事。またそれは、L.ヒューイットソンも同じ。もちろん、淀の3200mは「初見となる外国人騎手には難しい」という点もございます。この2人の外国人騎手の今週の「土日の騎乗馬」を見ると、様々な意図が見え隠れしているわけです。
例えば、青葉賞であれば「D.レーン:フィリオアレグロ」と堀厩舎所属馬に騎乗し、「L.ヒューイットソン:オーソリティ」はスイートピーS同じ木村厩舎の所属馬に騎乗。そして、スイートピーSでD.レーンを騎乗させた友道厩舎は[福永:フライライクバード]という構図。更にその友道厩舎は天皇賞のエタリオウに川田騎手を、ユーキャンスマイルには浜中騎手を配置。このあたりは岩田騎手の落馬骨折による急遽の騎手手配という背景も絡んではおりますが、中々の構図なわけです。
それら、今週の全体の配置を把握した上で彼ら外国人騎手を[東京]に残しておく理由が存在している事は、ご留意いただきたいと思います。
さて、話を戻します。
スイートピーS優勝馬に与えられる残り一枠の権利。
既定路線が敷かれているスイートピーSなわけですが、その[残り一枠]はなんのために使われるのか?
牝馬にとっては、賞金よりも「ブラックタイプ獲得」が最優先事項であり、一族の価値を高めることこそがレースを使うことの意味であるということは、ここまでもあらゆる場面で口にしてまいりました。
その視点は、ここでも変わりません。
すなわち、「スイートピーS1着」のブラックタイプ獲得による、経済効果が大きい馬。
それが、ストレートに言えば答えなわけです。
スイートピーS1着で得られる一般的な経済効果で言えば、
・オークス出走
という栄誉は手にできますが、これも5着以内に入れなければ、ブラックタイプは獲得出来ません。
つまりは、オークス5着以内も視野にシナリオが用意された上でのスイートピーSでの1着であれば、最大の効果を生むというのが通常考えられる経済効果でしょう。
がしかし、今回に限っては「それだけではない」と申しておきたいのです。
そもそも、天皇賞の直前に行われるという意味では「あまり目立たないレース」でございますが、それは、「GIレースを中心に馬券購入されるファンの皆様にとっては目立たない」という意味として捉えて頂きたく、馬事産業、更にはパラダイムシフトの渦中にあるという大きな視点では、このスイートピーSは、「ある領域の立場の方々」からは、天皇賞以上に注目度が高いわけです。
その「ある領域の立場の方々」にとっては、上記した経済効果は勿論の事、更に「もう一つ重要な価値」があるわけです。
そこに通ずるヒントを最後に記述し、スイートピーSの話を〆たいと思います。
■母輸入馬
・アカノニジュウイチ(亜国)
・アクロアライト(米国)
・オーマイダーリン(独国)
・スマートリアン(米国)
・デゼル(仏国)
・ミアマンテ(米国)
・ロッタチャンセズ(愛国)
母の輸入国である、アルゼンチン、アメリカ、ドイツ、フランス、アイルランド。
皆様は、どの国のホースマンがこのレースに一番注目していると思われるでしょうか?
そして、その国のホースマンがこのスイートピーSに注目しているということが、どのような経済効果を生むのでしょうか。
その一番注目している国から母を輸入した馬が勝利をすることが大きな経済効果を産むのか?
それとも、その馬に勝つことで大きな経済効果を生む馬が他に存在するのか?
最終結論を楽しみにお待ち下さい。
さて続いては、天皇賞(春)。
無料メンバーの皆様には大変申し訳無いのですが、この天皇賞(春)に関しては、規制も多く、語れない内容が多いのです。
プライベートメンバーの皆様には、昨日「号外版のREVELATION DIRECTIVE」を配信させて頂いておりますが、いくつかのポイントを掻い摘んでのお話となることはご了承下さい。
今回の天皇賞の着目すべきPOINTは、
・ディープインパクト系/キングカメハメハ系/ステイゴールド系3系統の序列
この1点に尽きるわけです。
■ディープインパクト系
・モズベッロ(ディープブリランテ)
・トーセンカンビーナ(直仔)
・ミッキースワロー(トーセンホマレボシ)
・メイショウテンゲン(直仔)
・シルヴァンシャー(直仔)
・フィエールマン(直仔)
※キセキ(母父ディープ)
■キングカメハメハ系
・ダンビュライト(ルーラーシップ)
・ユーキャンスマイル(直仔)
・キセキ(ルーラーシップ)
■ステイゴールド系
・エタリオウ(直仔)
・スティッフェリオ(直仔)
・ミライヘノツバサ(ドリームジャーニー)
・メロディレーン(オルフェーヴル)
ハッピーグリンを除く全ての馬がこの3系統に振り分けられるわけですが、もちろん、ディープインパクトもキングカメハメハもステイゴールドも今はこの世に居ないわけです。
また、その意味で言えば後継種牡馬への昇格の話か?と申せば、そうであり、そうでない訳です。
この辺りの事は、号外では触れさせていただいているのですが、その視点をここに盛り込むのはNG。
その上で、NG要素の多い今回の天皇賞ではございますが、全く別の視点からアプローチさせて頂きたく思います。
特殊な条件ということもありリピーターも多い春の天皇賞。
更に、過去を振り返れば「荒れるGI」としてのイメージをもっている方も多いのではないでしょうか。
過去20年を振り返れば
14人気のビートブラックの勝利だけでなく、7人気ヒルノダムール、12人気マイネルキッツ、13人気スズカマンボ、10人気イングランディーレ、7人気ヒシミラクル、らが勝利を収めているわけです。
更に着順を広げれば、いわゆる「穴」の部類に含まれるラインを7人気以下とすれば、
2着=5頭
3着=5頭
と人気は全く関係ないとでも言うかのような結果が残されているわけです。
もちろん、この春の天皇賞でしか使われない「京都3200m」という条件ですから、データ派の皆さまにとってはお手上げでしょうし、そもそも、枠の有利不利も大きいのが「菊花賞」「天皇賞」という淀のロングディスタンスの常識。
枠番で見れば
1枠:[6:1:2]
2枠:[1:3:2]
3枠:[3:1:1]
4枠:[3:0:3]
5枠:[2:3:1]
6枠:[3:4:5]
7枠:[1:3:2]
8枠:[1:5:4]
という3着内の成績。
パッと目を引くのがもちろん[1枠]。
しかし、この6勝の中に「キタサンブラック」「ゴールドシップ」「テイエムオペラオー」も含まれているわけですから一概に1枠断然有利とはいえないわけです。たしかに、ビートブラック、マイネルキッツ、ヒルノダムールも1枠で大穴馬券を演出した印象も強いでしょうからそう思って不思議はないわけです。
しかし、ここで取り上げたいのは[3着以内の数]でございます。
1枠:[9]
2枠:[6]
3枠:[5]
4枠:[6]
5枠:[6]
6枠:[12]
7枠:[6]
8枠:[10]
という数字。
毎年、フルゲートになっているわけではありませんし、本年もフルゲート割れでの競走となりますが、6枠と8枠の突出した数字を見れば印象はガラリと変わるのではないでしょうか。
この印象の差が、人気傾向などにも大きく影響しているわけです。
その上で、本年の枠順を見れば、正直な所[本当に抽選で振り分けたのか?]と思わざるを得ない箇所がいくつかあるのです。
それが、◯番と◯番です!というようなストレートな表現はもちろんできませんが、まず申し上げたいのは[2分の1の確率]とはいえ、キセキが偶数馬番に収まってくれたこと。この意味は大きいのではないでしょうか?もちろん、ゲートでの悪癖は、練習ではなんともなくても本番になると再度勃発することは多数あります。とはいえ、そのリスクが少しでも軽減される後入れの8番は、レースが壊れない可能性を1%でも上昇させる意味では大きいと思います。
更に、一般的に内枠有利と言われている淀のロングディスタンスにて、1人気が確実視されていたフィエールマンが大外枠に入るということは、馬券売上の視点で見ると[荒れる天皇賞]という記憶を喚起しやすく、売上の促進に繋がることは間違いないでしょう。
また先行馬を見れば、内から、ダンビュライト、スティッフェリオ、キセキの順。
発馬次第でこの3頭の内何れかがハナを切るわけですが、それぞれが、上記した[3系統]の中から一頭ずつ用意されているというのがミソでございます。
これ以上は、この場で明言することは出来ませんので、最終結論を楽しみにお待ち下さい。
今週の真実追求コラム[REVELATION DIRECTIVE]は以上となります。
メンバーの皆様も恐らく競馬場に行きたくてウズウズされていらっしゃる方も多いと思います。
私どもは仕事柄入場させていただく機会も得られていることから、「競馬場で競馬を見ることが出来る」ということが、いかに恵まれているかを実感できる機会を得られているわけですが、その分しっかりと情報を仕入れ、モニター越しの応援でも十分に楽しんでいただけるよう、これからも邁進いたしますので、ご期待下さい。
それでは、今週もよろしくお願いいたします。
JTTC-日本競走馬育成評議会
プライベートサロン統括本部長
松井彰二