REVELATION REPORT
【結果総括】REVELATION REPORT「安田記念週レポート」
掲載日:2020年6月8日
皆様、お世話になっております。
JTTC種牡馬部門の執行役員を務めております吉田晋哉です。
先週金曜日に引き続き、今回のREVELATION REPORTの執筆担当として腕を振るいたいと思います。
是非、最後までお付き合いくださいますようお願い申し上げます。
先週末はドゥラメンテ産駒、モーリス産駒をはじめとした2018年世代のデビュー週とあり、種牡馬部門の長として、出走馬個々の馬体、走法、鞍上との折り合い面など、その一挙手一投足を注意深く見守っておりましたが、日曜日の勝ち馬(ドゥラメンテ産駒)は良いですね。
プライベートギフトの対象レースとして既に鳴尾記念が選定されていたことからも、こちらの新馬戦はプライベートメンバー様に向けた情報提供に終始しておりましたが、肩鞭2発の快勝劇。
いやぁー強い。画面越しに思わず声が出ました。
2着馬もそれなりのレベルの馬でしたが、手応えがまるで違いました。
ドゥラメンテの父キングカメハメハの代表産駒といえば、現役ではエアスピネルやユーキャンスマイルがそれにあたるのでしょうが、2歳時は俗にいうぽっちゃり体形。
裏を返せば、それだけ豊富な筋肉量を身にまとっていたわけですが、それがレースを重ねるごとに引き締まっていくことで、2歳時の体型からは似ても似つかぬシルエットに変貌を遂げる。
今でいうところのユーキャンスマイルだったりします。
一方のドゥラメンテはどちらかといえば、シャープな体型でしたから、馬産地を訪れる度に、ぽっちゃりにでるのか、シャープにでるのかといった話を関係者等と交わしておりましたが、私見では父キングカメハメハの産駒傾向に似たぽっちゃり体型が多い印象です。
この先も続く2歳戦を楽しむポイントとして、父系、ないしは母系どちらの特徴を受け継いでいるのかイメージすることで、距離適性やコース適性をいち早く見定めることが出来ます。
ダービー馬はダービー馬から。
そうした言い伝えがあるように、ブロッドスポーツとも呼ばれる競馬の醍醐味を多くの方と共有していきたいと思います。
改めて、先週のレース統括という視点で話を進めますと、非社台系生産馬による無敗のダービー馬誕生の余韻を残すことなく、競馬業界は新たなステージに歩を進めています。
まずは、不測の事態に見舞われたアーモンドアイの安田記念を振り返りたいと思います。
戦前、我々が示していた見解は下記のとおり。
-----安田記念見解を一部引用-----
<第70回 安田記念を取り巻く背景>
国内最高峰のセリ市場にあたる「セレクトセール2020」が7月上旬に迫るなか、新型コロナウイルスに端を発した自粛要請により当歳馬をはじめとする現地視察に支障をきたしていることは周知の通り。
その一方で、例年注目を集める「セレクトセール」の売却価格は国内の競馬産業の行く末を占う重要な「先行指標」となるため、思わぬ形で苦戦を強いられた状況ではあるが、「成功」の二文字を手中に収めるべく、昼夜問わず余念のない準備が進められている。
昨年のセレクトセールを振り返るにあたり、市場主催者の吉田照哉会長代行からは、「2日間の総売上額は161億1,374万円で、あまりの盛況ぶりに売り主側もただただ驚いている状況。エイシンヒカリをはじめ日本馬の海外での成績を見て、世界のトップレースで通用する馬が日本にいるということが国内外に認識され、購買意欲が高まった結果だと思う。各国のトップ繁殖牝馬を導入し交配した馬が上場されたことも〝インパクト″があったと思う。イギリスのEU離脱などマイナスの外的要因はいつもあるが、いい馬はセリで買うし、セリ出身馬もぜひ預かりたいというように〝セリ″そのものの地位が確立されたことも大きい。来年は更に驚くような繁殖牝馬の産駒も上場してくるので、期待に応えることが出来ると思う。」と成算ありきのコメントを残している。
事実、右肩上がりの急成長を遂げるセレクトセールではあるが、昨年度唯一前年対比で下回った指標がセレクトセール当歳部門における売却率である。
上場頭数232頭(牡160頭、牝72頭)のうち、売却頭数は173頭(牡116頭、牝57頭)、売却率にして「74.6%」という数値は前年比4.7ポイントマイナス成長となった。
各国のトップ繁殖牝馬を導入した効果は、最高価格3億円をマークした母イルーシヴウェーヴ(IRE)、母マルぺンサ(ARG)の両牡駒をはじめ、「ディープインパクト産駒」の恩恵による所が大きく、生産界にとっても至宝という名に相応しい成功を収めたディープインパクト亡き今、新型コロナウイルスの影響が仮になかったとしても、プラス成長を求めるには乗り越えるべき課題は大きいといえる。
そうした状況に危機感を抱いていた生産界にあって、何も無策で今年のセレクトセール2020を迎えるはずもなく、購買側の関心を「キングカメハメハ」に寄せるため、ここまで緻密なプランを矢継ぎ早に実施してきた経緯を持つ。
競走部門からは、母父、いわゆるBMS(ブルードメアサイアー)にキングカメハメハを持つデアリングタクト(栗東・杉山厩舎)が無敗で3歳牝馬二冠の偉業を成し遂げている他、デビューから3連勝で初重賞制覇を飾ったNZTの勝ち馬ルフトシュトローム(美浦・堀厩舎)、そして昨年マイル王の座を射止めたインディチャンプ(栗東・音無厩舎)が名を連ねる。
また、サンデーサイレンスが昨年まで14年間もの間、死守してきた「BMSリーディング」1位の座を、この2020年度射止めた一頭こそキングカメハメハに他ならない。
種牡馬リーディング部門においては、サンデーサイレンスからディープインパクトへとSS系の伝承が行われてきた中にあって、BMSリーディング部門で遂にトップの座に就いたキングカメハメハ。
世間一般には、種牡馬よりも注目度の低いBMSではあるが、優秀な種牡馬の条件は「母父の長所を引き出す」ことにある。
今や、日本のトップホースに君臨するアーモンドアイの血統構成をご覧いただければ、種牡馬だけでなく、母父にあたるBMSの重要性を改めて実感いただけるはずだ。
アーモンドアイ(美浦・国枝厩舎)
父:ロードカナロア
父父:キングカメハメハ
母:フサイチパンドラ
母父:【サンデーサイレンス】
ともすれば、キングカメハメハのDNAを受け継ぐアーモンドアイの安田記念参戦は必然の出来事であり、調教と同義のパフォーマンスに終始したヴィクトリアマイルに続き、本命を託すに相応しい出走馬はアーモンドアイを置いて他にいない。
-----以上安田記念の一部見解を引用-----
実際のレースを振り返りますと、ゲートが開く寸前、隣枠のクルーガーのテンションにつられアーモンドアイ痛恨の出遅れ。
すぐさまリカバリーし600m通過は34秒2。稍重の馬場コンディションを考えますと、昨年の0秒3を上回るラップは明らかにハイペースといえるものでした。
しかし、こうした流れは一般論として後方待機組に分があると捉えがちですが、なし崩し的に脚を使われることで本来の切れ味を失うタイプも存在します。このレースで言えば、アーモンドアイがまさにその該当馬。
道中こそ同じシルクレーシングのインディチャンプ、社台系クラブ・GIレーシングのペルシアンナイトが進路を誘導しましたが、3-4コーナーを起点にケイアイノーテックに進出を阻まれる恰好。
直線でも同馬は前をフラフラと走っており、エンジン全開のタイミングを逃してしまいました。
あの展開で2着に食い込んだのはこの馬の底力以外の何物でもありません。
グランアレグリアの勝ち方が鮮やかに映ったこともあり、アーモンドアイ陣営に対する心無い声もあったと聞いておりますが、普通にゲートを出ていれば、まず、アーモンドアイがGI8勝目のタイトルを手にしていたでしょう。
今秋に持ち越しとなったことは残念でなりませんが、ご参加いただいたメンバー様には返す刀で今週末リベンジの場を提供させていただきます。
さて、安田記念で印象深かったシーンのひとつとして「レースの勝利騎手インタビュー」を挙げられる方も多いのではないでしょうか。
芝の塊が直撃し、試合後のボクサーと見間違えるほど右目を大きく腫らした池添騎手。インタビュー中、池添騎手に氷を持っていったのは他ならぬルメール騎手でした。
グランアレグリアのポジションを予定通りアーモンドアイが取っていたら……インディチャンプの直前に構える「先行策」をベストシナリオとしていたルメール騎手にとって、彼の気持ちは痛いほどわかったのでしょう。
改めて、春の東京GIシリーズを振り返ると、池添騎手、そして福永騎手の活躍は目覚ましいものがありました。
【福永騎手】皐月賞・ダービー1着、NHKマイルC3着
【池添騎手】安田記念1着、ダービー3着
ベテランジョッキーの域にさしかかり、若かりし頃の体力とのギャップを知りはじめる年齢に突入。近年は特に関東遠征時において騎乗数を絞っているように見受けられます。
その一方で、経験値を活かして大舞台でソツのないレース運びによって好結果をもたらしているシーンも目立つ現状。特に福永騎手は鳴尾記念でも10人気のパフォーマプロミスを1着に導く鮮やかな手綱捌きを披露。ノーザン系クラブ馬の土日重賞ジャックに貢献されたほか、プライベートギフトを通じて的中馬券を手にされという嬉しいご報告も多数寄せられました。
日本人騎手のなかで、コンスタントにGI戦線を戦える騎手は限られます。日曜においてはそれに該当する武豊騎手、松山騎手はともに阪神で騎乗、川田騎手は東京遠征を敢行したものの懇意にしている「ダノン」から干されるような恰好でその力を失いつつあります。
ジョッキーを手配する陣営、牧場はシビアです。
浜中騎手や北村友騎手は一時期の活躍はどこへやら、アッサリ三行半を突き付けられ目立たないランクの騎手に定着してしまいました。そのなかでGIにおいて変わらぬ活躍を続ける日本人騎手ふたり。今後もレース内でのキーパーソンとして社台ノーザングループも重用していくことでしょう。
さて、日曜東京では10R麦秋Sにおいても、とある陣営の戦略が組まれていました。
ノースヒルズをはじめ、この春活躍が目立った新冠産。GI安田記念がシルク2頭を中心とした社台ノーザンのための一戦だとすれば、こちらのレースはその反対。「新冠」の牧場同士で仕組んでいたレースだったのです。
フルゲートでの施行かつ、単勝3倍後半の馬が1番人気。こういった状況でマークを受ける騎手は一体誰なのでしょうか。【Revelation Directive】で実際に示唆していた内容を引用します。
-----麦秋S見解を引用-----
東京ダート1400mが舞台の3勝クラスのハンデ戦ですが、「3勝クラスのダート1400m戦」は、今週は日曜の麦秋Sだけでなく、土曜阪神の「天満橋S」も同じ条件。
先週までは条件戦に関しては、移動制限があったわけですが、今週から移動は解禁となりました。
阪神で行われる「天満橋S」は出走馬16頭すべてが関西馬。
一方の東京で行われる「麦秋S」の出走馬16頭中半分の8頭が関西馬という構成。
その東京に遠征する関西馬の中には、ダービーを制したコントレイルの半兄にあたるバーンフライ(父ゴールドアリュール)がいるのです。
母は同じロードクロサイトで、どちらも矢作厩舎の管理馬ですが、兄弟なのに全く似ていない。父が違うため、それもそのはずですが、芝とダートと路線も違うとはいえ、やはり無敗のダービー馬の兄となれば、ダービーの翌週というタイミングで、東京開催に出走するだけで注目されないわけがありません。
ここで今回の鞍上は、D.レーン。
これでさらに注目度が増すことになるわけですが、今回のバーンフライは指標のような存在となり、本命◎でもなければ、対抗○でもありません。
-----以上麦秋Sの見解を引用-----
我々は矢作調教師とD.レーンのコンビで臨むバーンフライの徹底マークを受け、レースを動かす【指標】という位置付けに設定。
評価を下げる結論へと導きましたが、その背景にあったのが、夏以降の競馬界の動きです。
・セレクトセール
・トレーニングセール
・サマーセール
・セレクションセール
新型コロナウイルスの影響で残念ながら中止に追い込まれたものもありますが、セリだけでなく庭先での取引も牧場にとっては重要な営業活動。
社台グループが抱える母・兄弟がGI馬という血統馬であれば無条件で高額での売買が見込まれることでしょう。しかし、規模の大きくない生産牧場にとっては、ダート血統馬の売れ行きが死活問題にもなるわけです。
馬主の多くは本業として会社経営を行うケースがほとんど。コロナウイルスが本業の業績悪化を招くとなれば財布の紐はますます固くなります。実際に例年よりも売買の状況に関して鈍くなってしまっている牧場も少なくないわけでして、生産馬がどれくらい活躍しているのかも、馬主にしてみれば牧場への期待度の1つの目安、判断材料になります。
「今回、出走させるんだ?そうしたらウチの馬は引っ込めるよ」
お互いに持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクの関係で成り立っているのが牧場界隈の人間関係なのです。
そんな背景をもとに本命◎を打ったのは、新冠のベルモントファーム生産の森厩舎管理馬オンザロックス。
2頭出しの同厩舎に高い勝機を見出したことによる結論でしたが、最後の直線で内に押し込められて7着……。
2015年セレクションセール上場・主取のC.ルメール騎手の継続騎乗馬○ハーグリーブスが勝ったことで馬券的には馬単F「○→△」の順で的中したものの、モヤモヤが残ったことは事実。
先ほど申し上げたように「ダノン」の有力馬が続々と手を離れたことによる川田騎手のメンタルが悪い方向に作用してしまったのでしょう。
一方で、日曜阪神11RストークSは先週金曜日に公開された【Revelation Directive】をご覧いただければ、おのずと答えが見えてくるレースと言えました。
-----ストークS見解を引用-----
「ストークS」のポイントとしては、多頭出し。
キャロットファーム(2頭)
・ヴィッテルスバッハ
・ブルーメンクローネ
社台レースホース(2頭)
・ラテュロス
・ロライマ
須貝尚介厩舎(3頭)
・カリボール
・スイーズドリームス
・ステイオンザトップ
3勝クラスですので、「ストークS」の勝ち馬は、オープンクラスに昇級する一戦。
同着とならない限りは、1着になれる馬は「1頭のみ」ですので、同一馬主の多頭出しや、同一厩舎の多頭出しは、1頭しか勝てないことからも矛盾そのものになるわけですが、ここもダブルスタンダードの背景があるわけです。
==中略==
ストークSの出走馬を産駒毎にわけると、下記のような構図になります。
↓ ↓ ↓
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ディープインパクト系 4頭
・アドマイヤスコール
・アバルラータ
・スイーズドリームス【須貝尚介厩舎】
・ラテュロス【社台RH】
キングカメハメハ系 4頭
・ヴィッテルスバッハ【キャロット】
・ブルーメンクローネ【キャロット】
・ボッケリーニ
・ロライマ【社台RH】
ステイゴールド系
・ステイオンザトップ【須貝尚介厩舎】
ハービンジャー系 2頭
・ミエノウインウイン
・ヤマカツグレース
ハーツクライ系
・カリボール【須貝尚介厩舎】
ダイワメジャー系
・サヴォワールエメ
-------------------------------------
-----以上ストークSの見解を引用-----
3頭出しの須貝厩舎のディープ産駒◎スイーズドリームス。
2頭出しの社台RHのディープ産駒の○ラテュロス。
◎○の本線的中とはならなかったものの、△ダブルシャープとの馬単1万7400円的中(14点)。
【須貝尚介厩舎】の3頭出し、そして【ディープインパクト系】の4頭出し。明確に張り巡らされた伏線はキッチリと回収したわけです。
また、その中で、先週のプライベートギフト対象レースでもあった鳴尾記念では以下のとおり3連複的中。
[土]阪神11R 鳴尾記念
プライベートランク:☆
<評価順>
◎7 ラヴズオンリーユー
○16 サトノルークス
▲15 エアウインザー
☆8 レッドジェニアル
注1 パフォーマプロミス
△13 レッドガラン
△12 ドミナートゥス
1着注1 パフォーマプロミス
2着◎7 ラヴズオンリーユー
3着☆8 レッドジェニアル
3連複F:7730円的中[12点]
本命馬◎ラヴズオンリーユーこそハナ差2着に敗れるも、相手4番手評価の注パフォーマプロミスが10人気の低評価を覆して1着したことで、配当面に限れば、万々歳といった声を多数頂戴いたしました。
阪神開催の最終週には、宝塚記念がもうあと3週間後に控えている状況でもあり、より一層メンバー様の競馬の楽しさを広げられるよう邁進します。
そして、今週末に目を向ければ函館開催が開幕。
新型コロナウイルスの影響で開催すら危ぶまれていた中で、無事開催に至ったことはすべての競馬関係者が安堵したはず。
何しろセレクトセールを控えるこの時期、関係者にとってビジネス的な側面で重要な意味を持つ開催だからです。
JTTC日本競走馬育成評議会からは既に松井、宇野が北海道に現地入りを果たしており【特大ネタ】の持ち帰りに昼夜を問わず勤しんでおりますので、是非とも今週末の競馬開催を楽しみにお待ちください。
また、無料メンバー様におかれましては、ヴィクトリアマイル週以来となる『新規プライベートメンバー』の公募実施に向けて、鋭意調整中です。
今回は初の試みとなります先着制での募集形態で実施する見込みですが、詳細決まり次第ご連絡差し上げますので、今しばらくお待ちいただきますようお願い申し上げます。
今週のレポートは以上でございます。
最後までお付き合いいただいた皆様、誠に有り難うございました。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉