REVELATION REPORT
【結果総括】REVELATION REPORT「七夕賞週レポート」
掲載日:2020年7月13日
皆様、お世話になっております。
JTTC種牡馬部門の執行役員を務めております吉田晋哉です。
世界の情勢をガラリと変えたコロナ禍。
本日、開催初日を迎えたセレクトセール2020冒頭の挨拶シーンでは、会長代行を務める吉田照哉氏より、「紆余曲折があったなか無事開催できたことが何より嬉しい」といった発言がございましたが、この約一か月という期間において、いみじくも水面下で馬産地を支えてきた当会の松井にとっても感慨深いものがあったはずです。
また、昨夜遅くに北海道入りし、朝一番から開催会場となるノーザンホースパークに姿を見せた宇野兄弟。
長らく当会に在籍いただいているメンバー様であればご存知の通り、内部監査室長を務める宇野さんには同じく競馬業界に太い人脈を持つ、弟さんがいらっしゃるのですが、ウッチャンナンチャンの内村さん似と評判の兄篤さんに対して、弟の秀樹さんは松岡修造似の熱血漢。
兄弟と言われなければ、似ても似つかぬ風貌の宇野兄弟ですが、溢れんばかりの競馬愛は瓜二つ。
お二方とも生真面目な性格とあって、終日多くの関係者に囲まれた姿が印象的でした。
さて、今夜お届けするレース総括ですが、本題に入る前に、目下絶賛炎上中の「Go To Travelキャンペーン」について簡潔に持論を述べたいと思います(苦笑)
都内を中心に再度の緊急事態宣言発令や自粛要請が叫ばれるなか、政府鳴り物入りの政策として今月22日(水)よりスタートする「Go To Travelキャンペーン」。
今年上半期に冷え込んだ国内観光需要喚起を目的としていることもあり、利用者には旅行代金最大半額補助という分厚い特典が用意されておりますが、キャンペーン開始日が迫るなか各方面から批判を浴びるその要因の一つに約1兆7000億円にものぼる予算(税金)が割かれていることがあげられます。
過去の豪雨災害などで実施された「ふっこう割」の予算が30億円から80億円程度だったことを考えますと、今回のキャンペーンはケタ違いの規模と言えます。
感染拡大を防ぐため奔走する識者からは「旅行に行けと言われ感染して自己責任と言われるだけの1兆7000億円の投入になりかねない。」といった声が噴出。
しかし、地方創生および観光産業の復興に対する【絶大なアピール】と考えるとどうでしょう。
無論、3密回避や衛生対策など「旅行時のニューノーマル」を徹底することが前提であるものの、7月22日(水)から実行しなければならない意味合いを感じてしまいます。
あくまで第三者の目線ですが・・・。
また、競馬界にも【絶大なアピール】が求められるタイミングが存在します。
陣営が気分よく一年を締めくくりたい年末、「一年の計は元旦にあり」とロケットスタートを目論む正月開催。
さらにダービーデー、ジャパンCデーもその中にカウントされることは周知の事実。
こうした仕掛ける側の状況を瞬時に判断し、精度を高めることが何より重要なのです。
セレクトセール前週にあたる開催となった先週。
ディープインパクト、キングカメハメハがこの世を去ったことで求められる結果はただひとつ。「あの産駒」を手に入れる価値を前面にアピールする、この1点に尽きます。
【2-2-0-0】
連対率に換算しますと100%。
先週、圧倒的な戦績を残した【ドゥラメンテ】こそ最大限に価値を上げるべき種牡馬だったのです。
改めて、先週のドゥラメンテ産駒のラインナップをご覧ください。
・福島5R 芝1800m ドゥラモンド(D.レーン・シルクレーシング)
・阪神5R 芝1600m フォティノース(福永・社台レースホース)
・阪神5R 芝1600m ダノンシュネラ(川田・ダノックス)
・阪神6R 芝1200m ニシノカムイ(幸・西山茂行)
芝1600m、1800mはディープインパクト産駒の得意舞台。
それにもかかわらず同産駒は出走せず、社台ノーザングループのドゥラメンテ産駒を送り出した。このあたりから、種牡馬成績に関しては何らかの「コントロール」が働いているのでは?
と直感が働いた方は攻略できたも同然ではないでしょうか。
[土]阪神5R 2歳新馬
プライベートランク:☆☆☆☆
<評価順>
◎4 フォティノース
○8 ダノンシュネラ
▲12 チカリヨン
☆9 アルムファーツリー
<結果>
1着○8 ダノンシュネラ
2着◎4 フォティノース
3着☆9 アルムファーツリー
3連複:1490円的中[2点]
事実、先週金曜日のREVERATION DIRECTIVEの場においては、
“ディープインパクト産駒を出走させない代わりに、どのような産駒が集められているのかに注目してみてください。”
こう提言していた中で、
キングカメハメハ系かつドゥラメンテ産駒の2頭、フォティノース(父ドゥラメンテ)、ダノンシュネラ(父ドゥラメンテ)を列記し、さらに、ダノンシュネラが本命ではなく[対抗評価]とまで宣言していたからには、残る選択肢はもう一方のドゥラメンテ産駒フォティノースただ1頭に絞られるという、単純明快な示唆を行っていたわけです。
本日のセレクトセールにおいても、当該レースによるドゥラメンテ産駒のワンツー決着は大々的に取り上げられておりましたが、ともすれば、セレクトセール直後の開催週でアピールすべき種牡馬とは?
プライベートメンバー様ならまだしも、無料メンバー様におかれましては皆目見当がつかないと思いますので、こちらは、セレクトセール2020の結果を明日午後にでもご覧いただき、
・ディープインパクト系
・キングカメハメハ系
・その他
最低限上記3系統による産駒の落札状況、価格帯は公式サイトよりご自身でチェックいただくことをお勧めします。
続きまして、翌日曜日に行われました阪神10R・フィリピントロフィーについて言及したいと思います。
3歳上2勝クラス、ダート1800mで行われた同レースについて、REVELATION DIRECTIVEでは下記のとおり事前示唆致しておりました。
-----フィリピントロフィー見解を引用-----
こちらは阪神ダート1800mが舞台の3勝クラスの一戦。
勝った馬は、オープン入りを果たすことができます。
先ほどの流れからも、出走馬の中でまず目に留まってしまうのは、「ダノン」の冠名ダノンスプレンダーでしょう。
管理するのは、安田隆行厩舎。
今回の鞍上は、浜中俊騎手です。
2走前、3走前に跨っていたのは川田騎手。
先述したように土曜の新馬戦ではダノックスのダノンシュネラに跨るだけでなく、ダノンプレミアムやダノンファンタジーを2歳GI馬に導いた騎手です。
ダノンスプレンダーに跨ったこともあります。
日曜は阪神で騎乗するにも関わらず、阪神10Rでは騎乗馬はいないのです。
なぜ、この一戦で騎乗しないのか。
そこに1つの核心もあります。
この一戦もズバリ申し上げておきますと、ダノンスプレンダーは本命馬ではありません。
オープン入りをかけた一戦。
もし仮にダノンスプレンダーを勝たせることを前提に出走させるとすれば、管理する安田厩舎は、フリーフリッカーとの厩舎2頭出しを、ここで行うでしょうか。
フリーフリッカーは、ノースヒルズの馬です。
なお、この「フィリピントロフィー」には、
・フリーフリッカー(名義:ノースヒルズ/安田隆行厩舎)
・バーンスター(名義:ノースヒルズ/谷潔厩舎)
・ニューモニュメント(名義:前田葉子/小崎憲厩舎)
ノースヒルズが3頭出しを行います。
小崎憲厩舎は、
ニューモニュメント
エクスパートラン
この2頭出し。
ノースヒルズといえば、いま最も連想するのはコントレイルでダービーを制した矢作芳人厩舎だと思いますが、ノースヒルズの何かがあるところに、きっちりいるのが矢作厩舎といったら言い過ぎでしょうか。
スマートセラヴィーという存在を送り込むために、キッチリと準備をしているわけです。
またセレクトセール前であるということからも、この勝負服の出走馬がいればまず注目が集まるであろう存在。
そうです。
金子真人氏が所有するラブリーデイの全弟パンコミードも出走メンバーに名を連ねているのです。
この馬にも川田騎手は跨ったことがありますが、この馬にも騎乗しません。
この一戦の背景にも、「貸し借り」が見えている方がいるとすれば、もうおわかりでしょう。
-----以上フィリピントロフィーの見解を引用-----
いくつかのキーワードが登場しましたが、ここでおさらいしておきましょう。
<小崎憲厩舎2頭出し>
ニューモニュメント(6人気→3着)
エクスパートラン(14人気→2着)
<ノースヒルズ3頭出し>
ニューモニュメント(6人気→3着)
フリーフリッカー(3人気→5着)
バーンスター(5人気→4着)
<安田厩舎2頭出し>
ダノンスプレンダー(1人気→1着)
フリーフリッカー(3人気→5着)
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実際にレースをご覧いただいたメンバー様は「ある違和感」を抱かれたのではないでしょうか?
スタート後、外目の枠にもかかわらずこれまでの中団待機策から一転、積極的に出していき好位4番手のポジションに取りついたフリーフリッカー。
同馬が先団の馬群に控えたとみるや、一気にマクッて差し優位の展開を作り出そうとしたエクスパートラン。
すべては小崎憲厩舎の2頭出し、ノースヒルズの3頭出しの延長線上に位置する「勝たせたい馬」◎ニューモニュメントへのアシストだったのです。
2人気ながら15着とある意味大胆な騎乗に徹した2年目の斎藤新騎手(ローザノワール)が想定以上にペースを落としてしまった為、1人気のダノンスプレンダーにとっておあつらえ向きのシチュエーションになったことは誤算といえますが、そうした戦況にあって、上記複数頭出しの意図を読み切り、3連複10万馬券を的中されたメンバー様も多々いらしたようですから、素直におめでとうございますという言葉を送りたいと思います。
[日]阪神10R フィリピントロフィー
プライベートランク:☆☆☆
<評価順>
◎10 ニューモニュメント
○13 フリーフリッカー
▲11 バーンスター
☆1 ダノンスプレンダー
△5 スマートセラヴィー
△8 パンコミード
△16 ローザノワール
穴15 エクスパートラン
<結果>
1着☆1 ダノンスプレンダー
2着穴15 エクスパートラン
馬連:2万8280円不的中[7点]
しかしながら、本線での提供結果に回帰しますと、ダノンスプレンダーさえ大人しくしていれば、穴エクスパートラン(14人気)、◎ニューモニュメント(6人気)の馬連決着で6万5880円の特大万馬券・・・。
仮に1点1000円の投資であっても、65万8800円の払戻金があと寸前のところまできていたわけですから、参加いただいたメンバー様には申し訳ないという気持ちで一杯です・・・。
最後に、ラジオNIIKEI賞の3連複2万2480円的中(15点)が記憶に新しい福島競馬場から、2週連続での万馬券的中をお届けしています「七夕賞」について、振り返りたいと思います。
-----七夕賞見解を引用-----
答えまでは申し上げることはしませんが、「七夕賞」はグループわけをしておきましょう。
<岡田一族の2頭出し>
・ウインイクシード
・マイネルサーパス
この2頭はともに前走は同舞台福島芝2000mの福島民報杯に出走し、
1着マイネルサーパス
3着ウインイクシード
という結果だったわけですが、この「福島民報杯」から「七夕賞」というローテーションは、セオリー通り、「福島狙い」であることは言うまでもないのですが、そんなに単純なレースではないのが、今年の「七夕賞」です。
<斉藤崇史厩舎2頭出し>
・ヒンドゥタイムズ(シルクレーシング)
・リュヌルージュ(窪田芳郎氏)
<ディープインパクト産駒2頭出走>
・ジナンボー(金子真人HD)
・ソールインパクト(窪田芳郎氏)
≪キングカメハメハ系4頭出走≫
・パッシングスルー(キャロットファーム)
・エアウィンザー(ラッキーフィールド)
・ヴァンケドミンゴ(幅田昌伸氏)
・ブラヴァス(佐々木主浩氏)
<ステイゴールド系4頭出走>
・バレリオ(サンデーレーシング)
・クレッシェンドラヴ(広尾レース)
・オセアグレイト(IHR)
・レッドローゼス(東京ホースレーシング)
グループわけをしたことにも意味があります。
七夕賞は何が求められている一戦なのかを想像してみください。
-----以上七夕賞の見解を引用-----
日曜阪神5R新馬戦(ドゥラメンテ産駒の2頭)を思い返せば、七夕賞はおのずと答えが近づいてくるでしょう。
<>ではなく、二重の≪≫で囲っていた≪キングカメハメハ系4頭出走≫に深い意味があったのです。
これまでも様々な場面で公言してきましたが、サンデーサイレンス系の繁殖牝馬で溢れる国内の馬産事情を受けて、目下、キングカメハメハ系の血に対するニーズは年々上昇の一途を辿っております。
アーモンドアイの活躍に加え、種牡馬入りが約束された良血馬サートゥルナーリア。
ディープインパクト系種牡馬もまた飽和状態にあるからこそ、その対角線上に居座る存在に目を向ける必要があるのです。
[日]福島11R 七夕賞
プライベートランク:☆☆☆☆☆
<評価順>
◎13 ブラヴァス
○12 ヴァンケドミンゴ
▲7 エアウィンザー
☆4 パッシングスルー
注3 クレッシェンドラヴ
△11 ヒンドゥタイムズ
△2 ウインイクシード
△6 ジナンボー
<結果>
1着注3 クレッシェンドラヴ
2着◎13 ブラヴァス
3着○12 ヴァンケドミンゴ
3連複F:1万9850円的中[18点]
◎ブラヴァス(父、キングカメハメハ)、〇ヴァンケドミンゴ(父、ルーラーシップ)はいずれも≪キングカメハメハ系≫。
◎ブラヴァス陣営がめったに福島に遠征しない「福永騎手」をわざわざ呼び寄せた理由、そして福島競馬場では4戦4勝と無敗の実績を誇る〇ヴァンケドミンゴ陣営を七夕賞に参戦させた目的。
両陣営にはこのレースに向けた明確な「伏線」が用意されていました。
そして何より、この週は≪キングカメハメハ系≫がキーフレーズ。
多くの競馬ファンにとっては、ひとつのレースを単体で捉えることが当たり前とされていますが、毎週欠かさず【REVELATION DIRECTIVE】をご拝読されているメンバー様であれば、利害関係者による「貸し借り」が常套手段として用いられている以上、少なからず開催週単位という枠組みにおいて個々のレースの連動性や因果関係に注意を払う必要があることを熟知されているはずです。
なお、七夕賞で◎ブラヴァスを本命推奨馬とした根拠については、見解内でもお示ししていた通り、本馬がセレクトセールと縁深い【友道厩舎】の管理馬であることが大きかったわけです。
今年の3歳クラシック戦線において友道調教師が管理した主なセレクトセール取引馬はというと、
・アドマイヤビルゴ(約6億2000万円)
・アドマイヤベネラ(約2億5000万円)
・ポタジェ(約2億円)
・エカテリンブルク(約1億5000万円)
・ジュンライトボルト(約1億3000万円)
・フライライクバード(約1億円)
・ヒュッゲ(約1億円)
高額取引馬が走らないケースは決して珍しくないですが、友道厩舎に限っては上記7頭すべてが勝ち上がり。
現4歳世代では菊花賞馬ワールドプレミア(約2億6000万円)、香港マイルなどGI3勝のアドマイヤマーズ(約5600万円)もセレクトセール経由で高いコストパフォーマンスを示しています。
「一番の決断理由は血統と、上(モンファボリ)が函館で新馬勝ちした実績があったからです。(中略)預託厩舎はいろいろ声が掛かっていますが、慎重に決めたいですね」
本日のセレクトセール、4億円で落札されたディープインパクト産駒のフォエヴァーダーリング2019(牡)。
「ダノン」冠で知られる(株)ダノックスの岡田良樹ディレクターのコメントです。
ここでの注目ポイントは「上(モンファボリ)が函館で新馬勝ちした実績があったから」という言葉。
函館の新馬戦勝利が値段を吊り上げる要因となり、金の糸目を一切つけず落札する要因となった。落札者側がハッキリとそう発した言葉の意味、決して軽いものではありません。
ドゥラメンテ産駒の勝利は一円でも高い金額でセールしたい主催者側、より高い確率での成功を求めたい馬主側の双方にとってWIN-WINの関係性を築く恰好の材料となったことでしょう。
直近1カ月にわたり、我々が【REVELATION REPORT】内で幾度となく発してきたセレクトセールの重要性。
キングカメハメハ系や友道厩舎など、JTTCと競馬界の強固なパイプラインを改めて知ったメンバー様も多いかと存じます。
貸し借りの世界において、同一オーナー、同一厩舎、同系統の多頭出しを敢行するレースには必ずといっていいほど走らせる側の【思惑】が作用するもの。
だからこそ、行間をくまなく読み解く必要があるのです。
次なる「貸し借りの場」は一体どこに設定されるのか?
有力馬主資金を費やしたセレクトセール後にもそうした機会は訪れるでしょう。次回の【REVELATION DIRECTIVE】もそうした観点で読み進めていただければ幸いです。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉