REVELATION DIRECTIVE
REVELATION DIRECTIVE[アイビスSD週:2020/07/25-26号]
掲載日:2020年7月24日
■開催競馬場:新潟/札幌
■開催重賞:アイビスSD
■執筆担当:吉田晋哉
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<REVELATION RACE LIST>
■土曜 札幌9R 利尻特別
■日曜 札幌5R 2歳新馬
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平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。
今週からは競馬開催の舞台は新潟と札幌に移り、2場同時に開幕を迎えます。
無料メンバー様からも、このタイミングでのプライベートメンバーの新規募集を希望されるお声も頂戴していたわけですが、次回の第三期-第3次【プライベートメンバー募集】は8月8日9日週に実施することが決まりましたので、今しばらくお待ちいただきますよう宜しくお願い申し上げます。
さて、今週の<REVELATION RACE LIST>は札幌開催から2レース。
まずは札幌記念と同じ芝2000mで行われる土曜日札幌9R「利尻特別」。
コロナウイルスの感染防止のために函館競馬場で調教を行い、事前に札幌競馬場へ移動するという出走方法が今年は規制されました。
それに伴い札幌競馬場における馬房数には限りがあることから、出走頭数を確保することが例年以上に難しいという課題を残したまま、札幌開催を続けていくことにはなります。
利尻特別の出走馬は、8頭。
しかしながら、この一戦は集まらなかったのではなく、8頭が選ばれたわけですので、出走頭数が絞られている要因は、全く別です。
札幌馬主協会のお膝元である札幌競馬場。
補足にはなりますが、札幌馬主協会の会長を務めるのは社台ファーム代表の吉田照哉氏。
また社台グループだけでなく、岡田総帥が率いるビッグレッドファームグループも名を連ねる重鎮関係者が集うのが、札幌馬主協会という組織です。
その上で、「利尻特別」の出走馬をご覧ください。
1枠1番 バルンストック
馬主:ノルマンディーサラブレッドレーシング
生産:桜井牧場
厩舎:高橋義忠(栗東)
2枠2番 マイネルデステリョ
馬主:サラブレッドクラブ・ラフィアン
生産:新冠橋本牧場
厩舎:畠山吉宏(美浦)
3枠3番 クロスザルビコン
馬主:小林アセットM
生産:社台コーポレーション白老ファーム
厩舎:大和田成(美浦)
4枠4番 マイネルソラス
馬主:サラブレッドクラブ・ラフィアン
生産:荻伏三好フアーム
厩舎:和田正一郎(美浦)
5枠5番 ダノンセレスタ
馬主:ダノックス
生産:ノーザンファーム
厩舎:音無秀孝(栗東)
6枠6番 ロッソモラーレ
馬主:コスモヴューファーム
生産:槇本牧場
厩舎:清水英克(美浦)
7枠7番 グレルグリーン
馬主:斎藤光政
生産:斉藤安行
厩舎:相沢郁
8枠8番 ディーイストワール
馬主:嶋田一成
生産:社台ファーム
厩舎:大和田成(美浦)
「札幌馬主協会」のお膝元で行われる2020年の札幌競馬開幕初日。
札幌記念と同じ芝2000mが舞台の特別戦。
特別登録の段階では14頭。
水面下での談義の末に、結果的に「上記8頭」のみに絞られたのです。
このレースの全貌を掴むためには、出走をやめた6頭の存在を必ず頭に入れておくべきです。
ウインローズブーケ
馬主:ウイン
生産:コスモヴューファーム
→日曜札幌7Rに出走。
エフティイーリス
馬主:吉田英子
生産:ノーザンファーム
→日曜札幌7Rに出走。
コスモレリア
馬主:ビッグレッドファーム
生産:ビッグレッドファーム
→日曜札幌7Rに出走。
マイネルエキサイト
馬主:サラブレッドクラブ・ラフィアン
生産:坂本春雄
→日曜札幌7Rに出走。
マジストラル
馬主:サンデーレーシング
生産:ノーザンファーム
→日曜札幌7Rに出走。
モンブランテソーロ
馬主:了德寺健二ホールディングス
生産:市川フアーム
→日曜札幌7Rに出走。
ウインローズブーケ、コスモレリア、マイネルエキサイト。
ビッグレッドファームグループ=岡田一族は、上記3頭を利尻特別から引っ込めて、
・バルンストック
・マイネルデステリョ
・マイネルソラス
・ロッソモラーレ
この4頭を利尻特別に出走させます。
一方の社台グループは、エフティイーリス(ノーザンファーム)、マジストラル(ノーザンファーム)という2頭を利尻特別に出走させずに、
・ダノンセレスタ(ノーザンファーム)
・クロスザルビコン(白老ファーム)
・ディーイストワール(社台ファーム)
この3頭を利尻特別に出走させます。
なおクロスザルビコンとディーイストワールを管理するのは、どちらも大和田成厩舎ですが、大和田成師は大学卒業後に社台ファームで従事した後に、厩務員、調教助手を経て2011年に厩舎を開業という経歴があります。
また、社台の3頭、岡田一族の4頭以外のグレルグリーンだけが1頭浮くように映るかもしれませんが、この馬が出走することが「利尻特別」で特別な意味を持つことになります。
グレルグリーンの母はオークス馬ウメノファイバー。母も相沢郁厩舎の管理馬であり、厩舎唯一のGI馬です。ちなみに相沢師は北海道出身。
岡田一族と相沢厩舎といえば、2016年函館記念を優勝したマイネルミラノが記憶に新しいところ。
また、社台グループと相沢厩舎といえば、ジェンティルドンナが優勝した2012年オークスの3着馬アイスフォーリスを筆頭に、サンデーレーシングから毎年預託があります。
どちらとも、つかず離れずの絶妙な関係性を保ちながら独自路線を貫く厩舎と言えるのではないでしょうか。
ちなみ、土曜日新潟1Rの2歳未勝利戦では出走馬16頭中12頭がミルファームの所有馬で独占されていることを多くの競馬メディアが取り上げていましたが、そこに「貸し借り」の要素は全くありません。
答えまでは申し上げませんが、岡田一族と社台グループの件については、JTTC監修BOOKS「オークス大全」で復習しておくと尚良いかもしれません。
続いて日曜日の札幌5R「2歳新馬戦」。
この一戦も出走馬は統制され、出走するのは下記7頭。
カイザーレヴァンテ
馬主:落合幸弘
生産:社台ファーム
厩舎:田中剛(美浦)
バスラットレオン
馬主:広尾レースホース
生産:三嶋牧場
厩舎:矢作芳人(栗東)
プラチナトレジャー
馬主:嶋田賢
生産:服部牧場
厩舎:国枝栄(美浦)
ポルトヴェッキオ
馬主:サンデーレーシング
生産:ノーザンファーム
厩舎:木村哲也(美浦)
ミルウ
馬主:大塚亮一
生産:ノーザンファーム
厩舎:友道康夫(栗東)
モリノカンナチャン
馬主:森和久
生産:青藍牧場
厩舎:大江原哲(美浦)
ロードフェイロン
馬主:ロードホースクラブ
生産:ケイアイファーム
厩舎:奥村豊(栗東)
いくつかポイントをまとめましょう。
まずは、厩舎の全国リーディング1位矢作芳人厩舎、2位友道康夫厩舎の管理馬が出走するということ。
矢作厩舎といえば、
7月19日(日)
阪神11R 中京記念(GIII)
3着◎エントシャイデン(ノースヒルズ)
7月18日(土)
函館10R 湯浜特別
1着◎チェルシーライオン(ライオンレースホース)
7月11日(土)
函館5R 2歳新馬
1着◎カイザーノヴァ(広尾レースホース)
7月5日(日)
福島11R ラジオNIKKEI賞(GIII)
2着◎パンサラッサ(広尾レースホース)
7月競馬において要所でしっかりと好走させてくれている矢作芳人厩舎が管理馬を出走させるレースには、「裏に何かがある」という感が働くプライベートメンバー様は多くいらっしゃることでしょう。
現時点で33勝をあげており、リーディング1位。
勝ち星が一番多い一方で、勝率は0.203。
これはリーディング上位10厩舎のうちでいえば7番目です。
(全体では25位)
「勝利数」と「勝率」
どちらを重要視するかは考え方次第にはなるわけですが、説明するまでもなく、「連闘策」、「中1週」と間隔をあけずに送り込むケースが多く、出走数も299回とダントツです。
現在30勝でリーディング2位の友道康夫厩舎、勝率(0.203)は全国1位の実績を誇ります。。
その友道康夫厩舎は今週管理馬を4頭出走させます。
土曜日
新潟9R メラーキ
日曜日
新潟5R レイオブウォーター
新潟8R ラヴィンフォール
札幌5R ミルウ
この4頭は、いずれも大塚亮一氏が所有する馬なのです。
唯一、札幌でミルウを出走させるわけですが、鞍上はC.ルメール騎手。
【ここ】で2つ目のポイント。
騎手の起用の変化に注目してみてください。
大塚亮一氏と友道厩舎といえば、昨年の菊花賞馬ワールドプレミアがいるわけですが、主戦は武豊騎手。
武豊騎手も札幌で騎乗しているわけですが、ミルウはC.ルメール騎手が跨るのです。
武豊騎手とC.ルメール騎手を担当しているエージェントは同じ豊沢氏であることは周知の事実。
そうした深い繋がりあいを有するなかで、当の武豊騎手はといえば、国枝厩舎のプラチナトレジャーへの騎乗を予定しています。
国枝栄厩舎は、アーモンドアイを筆頭にC.ルメール騎手を重宝していることから、これまでの経緯を辿れば、
ミルウ→武豊騎手
プラチナトレジャー→C.ルメール騎手
という配置に落ち着いてよさそうなものですが、今回はあえてそうはならなかったのです。
また、木村哲也厩舎もノーザンFとのコネクションからC.ルメール騎手を重宝しているわけですが、同厩舎の管理馬ポルトヴェッキオの鞍上には池添謙一騎手を起用。
月曜日に公開した『REVELATION REPORT』の中で、
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騎手という職業柄、勝つことより圧倒的に負ける回数が多いわけですが、その敗因について厩舎サイドであり馬主が理解を示しているケースとそうではないケースが存在する以上、常々「騎手」×「厩舎」×「馬主」のラインは意識する必要がありますし、騎乗頻度の上げ下げ、騎乗成績の上げ下げといった推移に着目することで、若手騎手とベテラン騎手の間に生じるパワーバランスの変化にお気づき頂けるはずです。
特に騎乗頻度の間隔に注視いただければ、敬遠されているのか、急接近しているのか、三者の関係性であり結びつきの強弱が手に取るように掌握いただけることでしょう。
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このように触れていたわけですが、日曜日の札幌5Rを注視するうえで「騎手」×「厩舎」×「馬主」の【ライン】を特に意識してみてください。
露骨な「貸し借り」が行われている一戦ですが、これまで新馬戦に触れてきた時と同様に、ディープインパクト産駒は札幌5Rに出走しません。
「貸し」を作れば「借り」ができる一連の経緯は、これまでお話し続けてきた通り。
これまでを振り返れば、今回の札幌5Rの新馬戦を迎えるにあたって、水面下ではどのような「貸し借り」が行われているのかは想像できるのではないでしょうか。
ここまで2レースを掘り下げましたが、「ちょっと言い過ぎてしまった」ところがあるかもしれません。
今回触れられるのは、ここまでです。
最後に、今週英国のアスコット競馬場で開催される「キングジョージVI世&クイーンエリザベスS」について簡単に。
凱旋門賞に繋がる欧州のBIGレースですが、出走馬は僅か4頭のみ。
日本馬は出走しませんが、キーファーズが共同所有するジャパンも出走します。
エネイブル(J.ゴスデン厩舎)
ジャパン(A.オブライエン厩舎)
ソヴリン(A.オブライエン厩舎)
アンソニーヴァンダイク(A.オブライエン厩舎)
「凱旋門賞」と「キングジョージ」を過去に2勝しているエネイブル1頭に対して、A.オブライエン厩舎の管理馬が3頭という構図。
今週は日本でも海外でも、「権力があれば、なんでも許されるのか」と言われても仕方のないような統制されたレースばかりですが、競馬の本質があからさまになることでしょう。
JTTC日本競走馬育成評議会
種牡馬部門
吉田晋哉