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REVELATION DIRECTIVE

REVELATION DIRECTIVE[クイーンS週:2020/08/01-02号]

■開催競馬場:新潟/札幌 ■開催重賞:クイーンS ■執筆担当:吉田晋哉 ------------------------------------- <REVELATION RACE LIST> ■日曜 札幌11R クイーンS ------------------------------------- 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。 第三期-第3次【プライベートメンバー募集】を次週に控える中、今年も早くも8月競馬に入ります。 昨年の今頃を思い出せば、2019年7月30日にディープインパクトが逝去。 今年のセレクトセール2日目の当歳馬セクションで、ディープインパクト産駒の上場馬がゼロだったことで当日は非常に寂しさを感じましたが、あれから1年が経ちました。 昨年は、その直後2019年8月3日に行われた新潟競馬場での信濃川特別(芝2000m)において、 1着アドマイヤアゼリ 2着サーレンブラント 3着パラダイスリーフ ディープインパクト産駒によるワンツースリー決着という弔いの一戦、必然の決着も用意されておりました。 そして、命日にあたる2020年7月30日。 今度は欧州の地で、父ディープインパクトに捧げる劇的な勝利の場面が訪れました。 昨年の覇者である日本調教馬のディアドラも挑んだ一戦。 場所:英国グッドウッド競馬場 ナッソーS[GI](3歳以上牝馬限定) 優勝 ファンシーブルー 父:ディープインパクト 母:Chenchikova 母父:Sadler's Wells 前走の仏オークスの際にも紹介させていただいていたファンシーブルーが仏オークス、そしてナッソーSとGI2連勝を飾り、ディープインパクトの凄さを世界に改めて誇示してくれました。 ディープインパクトの血が欧州でどれだけ重宝されているのか。 イメージしにくいかもしれませんが、この数字をご覧いただければ、細かい説明は不要でしょう。 ディープインパクト産駒の欧州調教馬成績 出走頭数 計39頭 勝ち上がり27頭(勝ち上がり率69%) 重賞勝ち馬7頭 GI勝ち馬4頭 GI6勝 重賞12勝 残されたディープインパクト産駒が、これからも国内外で活躍してくれることを願わずにはいられません。 さて、早速ではございますが、今週の競馬開催のお話をしましょう。 今週、この場で触れることが許可されたのは、1レースのみとなりますが、制限のある中で触れられるギリギリ限界まで攻めるつもりでおります。 日曜日に札幌競馬場の芝1800mで行われる牝馬限定重賞の「クイーンS」。 8月は、「JTTC株主優待月間」にあたるわけですが、8月に行われる唯一の牝馬限定重賞の一戦です。 まずは、14頭の出走馬をご覧ください。 ----------------------------------- 1枠1番 レッドアネモス 牝4 父:ヴィクトワールピサ 母:マチカネハヤテ 母の父:サクラバクシンオー 生産:社台ファーム 馬主:東京ホースレーシング 2枠2番 スカーレットカラー 牝5 父:ヴィクトワールピサ 母:ヴェントス 母の父:ウォーエンブレム 生産:ノースヒルズ 馬主:前田幸治 3枠3番 ナルハヤ 牝6 父:サクラプレジデント 母:カルナアヴァンセ 母の父:キングヘイロー 生産:清水牧場 馬主:陣内孝則 3枠4番 タガノアスワド 牝6 父:ネオユニヴァース 母:エイシンミュー 母の父:スピニングワールド 生産:新冠タガノファーム 馬主:八木良司 4枠5番 アロハリリー 牝5 父:ハーツクライ 母:ハワイアンウインド 母の父:キングカメハメハ 生産:ノーザンファーム 馬主:吉田勝己 4枠6番 カリビアンゴールド 牝6 父:ステイゴールド 母:サバナパディーダ 母の父:Cape Cross 生産:ダーレー・ジャパン・ファーム 馬主:ゴドルフィン 5枠7番 コントラチェック 牝4 父:ディープインパクト 母:リッチダンサー 母の父:Halling 生産:ノーザンファーム 馬主:キャロットファーム 5枠8番 フェアリーポルカ 牝4 父:ルーラーシップ 母:フェアリーダンス 母の父:アグネスタキオン 生産:ノーザンファーム 馬主:山本剛士 6枠9番 ビーチサンバ 牝4 父:クロフネ 母:フサイチエアデール 母の父:サンデーサイレンス 生産:ノーザンファーム 馬主:金子真人ホールディングス 6枠10番 リープフラウミルヒ 牝5 父:ステイゴールド 母:ピノブラン 母の父:クロフネ 生産:ビッグレッドファーム 馬主:サラブレッドクラブ・ラフィアン 7枠11番 モルフェオルフェ 牝5 父:オルフェーヴル 母:スマッシュ 母の父:キングカメハメハ 生産:宮内牧場 馬主:並河賢一郎 7枠12番 オールフォーラヴ 牝5 父:ディープインパクト 母:レディアルバローザ 母の父:キングカメハメハ 生産:ケイアイファーム 馬主:ロードホースクラブ 8枠13番 サムシングジャスト 牝4 父:ヴィクトワールピサ 母:ツルマルオトメ 母の父:タイキシャトル 生産:那須野牧場(栃木県) 馬主:グリーンファーム 8枠14番 シャドウディーヴァ 牝4 父:ハーツクライ 母:ダイヤモンドディーバ 母の父:Dansili 生産:ノーザンファーム 馬主:スリーエイチレーシング ----------------------------------- 今年は3歳牝馬が不在という稀有なクイーンSであることは月曜の「REVELATION REPORT」でもお話していたわけですが、最近行われている牝馬重賞の傾向と異なる点に注目いただきたいのです。 まずは一旦、産駒ごとに整理すると、下記のようになります。 ネオユニヴァース系 4頭 ・レッドアネモス(父ヴィクトワールピサ) ・スカーレットカラー(父ヴィクトワールピサ) ・タガノアスワド(父ネオユニヴァース) ・サムシングジャスト(父ヴィクトワールピサ) ステイゴールド系 3頭 ・カリビアンゴールド(父ステイゴールド) ・リープフラウミルヒ(父ステイゴールド) ・モルフェオルフェ(父オルフェーヴル) ハーツクライ系 2頭 ・アロハリリー(父ハーツクライ) ・シャドウディーヴァ(父ハーツクライ) ディープインパクト系 2頭 ・コントラチェック(父ディープインパクト) ・オールフォーラヴ(父ディープインパクト) キングカメハメハ系 1頭 フェアリーポルカ(父ルーラーシップ) その他 2頭 ・ナルハヤ(父サクラプレジデント) ・ビーチサンバ(父クロフネ) 一番多いのが、ヴィクトワールピサ産駒3頭を含むネオユニヴァース系4頭。 14頭中4頭がネオユニヴァース系というのが、まずポイントです。 今年行われた古馬牝馬重賞では、 愛知杯(0頭) 京都牝馬S(0頭) 中山牝馬S(1頭) 阪神牝馬S(1頭) 福島牝馬S(1頭) ヴィクトリアマイル(1頭) マーメイドS(1頭) クイーンS(4頭) 今回のクイーンSで、ネオユニヴァース系の産駒が突然4頭に増えたのです。 なぜ2003年ダービー馬ネオユニヴァース系が、ここに来て増えたのか。 先週のアイビスSDにおいても1着ジョーカナチャン、3着ビリーバーの母父が、どちらもネオユニヴァースだったことに気づいていた方もいらっしゃると思いますが、ネオユニヴァースの血を受け継ぐヴィクトワールピサの存在に触れないわけにはいきません。 ヴィクトワールピサは2010年のクラシック世代。 10年前になるわけですが、ヴィクトワールピサの現役時代のことを、この機会に思い出してみてください。 市川義美氏と吉田照哉氏の共同所有で、預託されたのは角居勝彦厩舎、そして主戦には武豊騎手が指名されました。 デビューから弥生賞までは武豊騎手が手綱をとっていたものの落馬負傷により、皐月賞と日本ダービーで代打を託されたのは岩田康誠騎手。 皐月賞制覇の際に、岩田康誠騎手が男泣きしていた姿を覚えている方も多いのではないでしょうか。 秋には、戦列に復帰した武豊騎手の手綱で凱旋門賞にも挑戦しました。 その後、有馬記念を優勝すると、震災直後に行われたドバイワールドカップに挑戦し優勝。 日本に勇気を与える勲章を手にするとともに、世界が注目するドバイワールドカップ優勝馬に、その名を刻みました。 「JTTC株主優待月間」は、[ドバイ、香港、日本]の3カ国の競馬関係者が手を結ぶ形で開催されるわけですが、日本調教馬として唯一、ドバイワールドカップを制したことがあるヴィクトワールピサ産駒を、8月競馬初週に行われる重賞「クイーンS」に集めた意図はおわかりいただけるのではないでしょうか。 ネオユニヴァース系の出走割合が、「クイーンS」で増えたのは、出走馬が調整されている証拠といっても過言ではありません。 ・スカーレットカラー(父ヴィクトワールピサ) 前走・石橋脩騎手→今回・岩田康誠騎手 ・サムシングジャスト(父ヴィクトワールピサ) 前走・松山弘平騎手→今回・武豊騎手 ヴィクトワールピサの手綱をとっていた岩田康誠騎手と武豊騎手が、ともにヴィクトワールピサ産駒に騎乗するという粋な計らいも仕込まれています。 ここで、レースのポイントをもう1つお伝えします。 武豊騎手が前走のヴィクトリアマイルで跨っていたキャロットファームのコントラチェックですが、今回はC.ルメール騎手の手綱に戻ります。 前につける脚質のコントラチェックですが、近走は16着、14着と敗れている中での参戦。 乗り慣れたC.ルメールが手綱をとるコントラチェックが、どのようにレースを進めていくのか。 ゲートを出た後に、C.ルメール騎手がどこに視線を向けるのか注目ください。 説明するまでもありませんが、C.ルメール騎手と武豊騎手のエージェントは同じ豊沢氏であることは、最低限知っておくべき知識として頭の片隅に入れておいてください。 またクイーンSのレースの展開を想定通りに進めるために、不可欠な1頭として用意されたのがモルフェオルフェです。 モルフェオルフェが、「ただ出走するだけではない」という経緯は、経験豊富な柴田善臣騎手が配されていることからも明らかでしょう。 余談にはなりますが、アウトドア好きな柴田善臣騎手は笹川流れという有名な景勝地(海)がある新潟遠征を好む騎手。過去に2度騎乗経験があるとはいえ、最近は跨っていなかった柴田善臣騎手がモルフェオルフェの騎乗のために、札幌遠征をするというのは、自分の意志ではないのです。 またM.デムーロ騎手も新潟の海を好んでいる騎手の1人ですが、ヴィクトワールピサをドバイワールドカップで優勝に導いたM.デムーロ騎手を、ヴィクトワールピサ産駒の鞍上に迎えなかったのは、レースが壊れるリスクを避けるため。 ここまで長くなりましたので、文字量としてはこのあたりで締めたいところではありますが、クイーンSの核心を突くという意味では、あといくつか触れておかなければならないポイントがあります。 ネオユニヴァース系の次に多いのが、ステイゴールド系の3頭。 ステイゴールドの現役時代を覚えている方であれば、もうピンと来ていることでしょう。 2001年 ドバイシーマC(当時はGII)優勝 香港ヴァーズ(GI)優勝 現役時代は国内ではシルバーコレクターと言われていたわけですが、2001年に武豊騎手の手綱でドバイと香港の主要重賞を優勝しているわけです。 2006年にドバイシーマC(GI)をC.ルメール騎手の手綱で優勝したハーツクライの仔も、2頭クイーンSの出走馬に名を連ねているのは、偶然ではありません。 またキングカメハメハ系の1頭として出走するのは、ルーラーシップ産駒のフェアリーポルカ。 ルーラーシップは、 2011年ドバイシーマC→6着 2012年クイーンエリザベスII世C(香港)→1着 現役時代にはドバイ、そして香港に挑戦し、海外GIを制覇。 国内ではGI無冠であったわけですが、香港で挙げた1勝の価値が大きく、種牡馬入りを果たしました。 キングカメハメハ系が1頭しかいないというのは最近では物足りなく映るかもしれませんが、「隠れキングカメハメハ」=(母父)として3頭出走していることもお伝えしておきます。 クイーンSが行われるのは、札幌競馬場です。 その札幌競馬場を拠点とする札幌馬主協会の会長を務めるのは、社台グループの吉田照哉氏であり、ビッグレッドファーム軍団を牽引する岡田総帥なども、札幌馬主協会に名を連ねているわけです。 最後に、この3頭の種牡馬生活に関する話もしておかなければなりません。 ネオユニヴァース 2004年9月引退 12億円のシンジケートが組まれ社台SSで種牡馬入り。 2015年12月レックススタッドへ移動。 ヴィクトワールピサ 2012年1月より、社台SSで種牡馬入り。 2017年12月ブリーダーズ・スタリオン・ステーションに移動。 ステイゴールド 2001年種牡馬入り。 「社台グループ」 「サラブレッド・ブリーダーズ・クラブ(ブリーダーズ・スタリオン・ステーション)」 「ビッグレッドファーム(岡田繁幸氏)」 上記3つの組織が中心となりシンジケートを結成。 クイーンSというレースだけで、ここまでお付き合いいただいたわけですが、今回無意味なことは何も申し上げておりません。 改めてキーワードをいくつかまとめると、 ・[ドバイ-香港-日本] ・[各種牡馬のシンジケート] ・[コントラチェックの乗り替わり] ・[柴田善臣騎手の札幌参戦] これ以上踏み込んでしまうと答えに行き着きますので、この先は想像しながら、クイーンSの発走を楽しみにお待ちいただきましょう。 ディープインパクト産駒のファンシーブルーが優勝したナッソーSのレース映像を、まだご覧になられていない方は、是非とも今週末お時間のある時に見てみてください。 今回は以上となります。 JTTC日本競走馬育成評議会 種牡馬部門 吉田晋哉