REVELATION REPORT
【結果総括】REVELATION REPORT「クイーンS週レポート」
掲載日:2020年8月3日
皆様、お世話になっております。
JTTC種牡馬部門の執行役員を務めております吉田晋哉です。
種牡馬部門の長として早くからその一挙手一投足に目配せしていたドゥラメンテ産駒。ここにきてようやく念願の2歳リーディングに躍り出る活躍を見せています。
その立役者となった土曜新潟2R(芝1600m)のドゥラメンテ産駒フォティノース(栗東、杉山厩舎)。
福永騎手を背に好スタートをきると、その後は馬群にスッと入れ、折り合いも良好。直線で進路を切り替えるシーンにも戸惑うことなく、最後まで気を抜くことなく完走。
「背中を使えるようになると良いです。これからもっと成長してくれればと思います」
福永騎手はレース後にこう注文をつけていましたが【背中】は出世するドゥラメンテ産駒を見極める重要なキーワードと言えます。
フォティノース、さらには以前取り上げたアスコルターレが今後どのようなシルエットへと変貌を遂げるのか・・・背中に注目したうえで父親似のシャープな馬体に研ぎ澄まされる日を待ちたいところです。
さて、先週の2歳戦は現役時代にワールド・ワイドな活躍を見せた種牡馬の仔が躍進をはたした【グローバル・ウィーク】。新馬戦4鞍の勝ち馬とその父親をご覧ください。
・土曜札幌5R オパールムーン(父ヴィクトワールピサ)
・土曜新潟5R アドマイヤハダル(父ロードカナロア)
・日曜新潟5R ハヴァス(父ルーラーシップ)
・日曜新潟6R デイトンウェイ(父リアルインパクト)
ヴィクトワールピサはドバイワールドカップ、ロードカナロアは香港スプリント。ルーラーシップはクイーンエリザベスII世カップ、リアルインパクトはジョージライダーS。それぞれドバイ、香港、豪州と日本が特に力を入れる3カ国のGI勝ち馬の仔が勝利を量産したことになります。
これまでも幾度となく、開催週によってこうした偏りが生じるケースはございましたが、前記した種牡馬の共通点も踏まえつつ先週のレース統括に参りましょう。
3歳上オープン、牝馬限定のGIII・クイーンS。
戦前、我々が【REVELATION DIRECTIVE】で示していた見解は下記のとおり。
-----クイーンS見解を引用-----
まずは一旦、産駒ごとに整理すると、下記のようになります。
ネオユニヴァース系 4頭
・レッドアネモス(父ヴィクトワールピサ)
・スカーレットカラー(父ヴィクトワールピサ)
・タガノアスワド(父ネオユニヴァース)
・サムシングジャスト(父ヴィクトワールピサ)
ステイゴールド系 3頭
・カリビアンゴールド(父ステイゴールド)
・リープフラウミルヒ(父ステイゴールド)
・モルフェオルフェ(父オルフェーヴル)
ハーツクライ系 2頭
・アロハリリー(父ハーツクライ)
・シャドウディーヴァ(父ハーツクライ)
ディープインパクト系 2頭
・コントラチェック(父ディープインパクト)
・オールフォーラヴ(父ディープインパクト)
キングカメハメハ系 1頭
フェアリーポルカ(父ルーラーシップ)
その他 2頭
・ナルハヤ(父サクラプレジデント)
・ビーチサンバ(父クロフネ)
一番多いのが、ヴィクトワールピサ産駒3頭を含むネオユニヴァース系4頭。
14頭中4頭がネオユニヴァース系というのが、まずポイントです。
==中略==
なぜ2003年ダービー馬ネオユニヴァース系が、ここに来て増えたのか。
先週のアイビスSDにおいても1着ジョーカナチャン、3着ビリーバーの母父が、どちらもネオユニヴァースだったことに気づいていた方もいらっしゃると思いますが、ネオユニヴァースの血を受け継ぐヴィクトワールピサの存在に触れないわけにはいきません。
ヴィクトワールピサは2010年のクラシック世代。
10年前になるわけですが、ヴィクトワールピサの現役時代のことを、この機会に思い出してみてください。
市川義美氏と吉田照哉氏の共同所有で、預託されたのは角居勝彦厩舎、そして主戦には武豊騎手が指名されました。
デビューから弥生賞までは武豊騎手が手綱をとっていたものの落馬負傷により、皐月賞と日本ダービーで代打を託されたのは岩田康誠騎手。
皐月賞制覇の際に、岩田康誠騎手が男泣きしていた姿を覚えている方も多いのではないでしょうか。
秋には、戦列に復帰した武豊騎手の手綱で凱旋門賞にも挑戦しました。
その後、有馬記念を優勝すると、震災直後に行われたドバイワールドカップに挑戦し優勝。
日本に勇気を与える勲章を手にするとともに、世界が注目するドバイワールドカップ優勝馬に、その名を刻みました。
「JTTC株主優待月間」は、[ドバイ、香港、日本]の3カ国の競馬関係者が手を結ぶ形で開催されるわけですが、日本調教馬として唯一、ドバイワールドカップを制したことがあるヴィクトワールピサ産駒を、8月競馬初週に行われる重賞「クイーンS」に集めた意図はおわかりいただけるのではないでしょうか。
ネオユニヴァース系の出走割合が、「クイーンS」で増えたのは、出走馬が調整されている証拠といっても過言ではありません。
-----以上クイーンSの見解を引用-----
本題に入る前に、昨年起こった出来事をおさらいしたいと思います。
遡ること1年前。クイーンSを制したのは栗東・中内田厩舎の管理馬にあたるミッキーチャームでした。
【ミッキーチャーム】
父:ディープインパクト
母:リップルスメイド
ここでの注目ポイントは父ディープインパクトではなく【母リップルスメイド】にあります。
リップルスメイドはカタールのファハド殿下が三嶋牧場に預けた馬。
産駒のミッキーチャーム、ダノンバリアントはともにディープインパクトを種付け相手とすることでセレクトセールで7000万円の高額落札となりました。
16年の種付けシーズンはロードカナロアを交配され受胎。このタイミングでリップルスメイドは日本を離れ、同年3月10日に英国でロードカナロア産駒を出産。
Hero of the Hourと名付けられたその馬は今年の英ダービーに一次登録された馬なのです。
なぜこのタイミングで自国へ持ち帰ったのか?
国際GIのジャパンC、ドバイターフを制した「世界のアーモンドアイ」が輩出されるのは後の話ですが、ロードカナロアが香港GIで目覚ましい活躍を見せたのは周知の事実。
ここで重要なキーワードとなるのが「ドバイ」。
この観点で捉えたとき、昨年上位進出をはたした馬はどんな特徴があったのか。
2着スカーレットカラー(父ヴィクトワールピサ)
3着カリビアンゴールド(父ステイゴールド)
ピンと来たメンバー様も多いかと存じます。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた日本に勇気を与えた象徴的存在【ヴィクトワールピサ】。
GIで「シルバーコレクター」の名をほしいままにしていたステイゴールド。いずれもドバイでその名を上げた日本馬です。クイーンSがどういった性質を持つレースなのか、お分かりいただけることでしょう。
今回、我々が提供した買い目は以下の通り。
8月2日(日)札幌11R:クイーンS
プライベートランク:☆☆☆☆☆
<評価順>
◎1 レッドアネモス
○2 スカーレットカラー
▲8 フェアリーポルカ
☆9 ビーチサンバ
注5 カリビアンゴールド
△10 リープフラウミルヒ
△14 シャドウディーヴァ
△5 アロハリリー
<買い目>
3連複フォーメーション
1頭目 1
2頭目 2.8.9
3頭目 2.8.9.5.10.14.5
[15点]
<結果>
1着◎1 レッドアネモス
2着☆9 ビーチサンバ
3着○2 スカーレットカラー
3連複F:1万2270円的中[15点]
レースはハナ宣言のナルハヤをはじめ、モルフェオルフェ、タガノアスワド等ハイペース必至といえた戦前のシミュレーション通り、1000m通過タイムは想定からコンマ2秒上回る58秒1を計時。
ポジショニングが注目されたコントラチェックも先団に位置し前を楽にさせることなく、後続には「ルメールが前にいる」と意識付けを行うことで勝負どころでの早仕掛けを誘発。インのポケットで息を潜めた◎レッドアネモスにはうってつけの展開。
レッドアネモスは週を重ねるごとに驚異的な上昇カーブを描いていた友道厩舎所属馬。その友道厩舎といえば道中後方から進んだビーチサンバも出走しており、ワンツーフィニッシュをはたす結果に。
レッドジェネシスやレイオブウォーターといった同厩舎の2歳ディープインパクト産駒を勝利に導けずじまいの福永騎手でしたが、一応の借りを返した恰好です。
なお、本線的中を目論んだ○スカーレットカラーは3着。
「笑ってしまうくらい下手に乗ってしまいました」
レース後岩田騎手はこのように語っていましたが、鮮やかなイン突きで皐月賞を制した父ヴィクトワールピサの再現にこだわってしまったのかもしれません。
落馬負傷から復帰後、着実にパフォーマンスを上げる百戦錬磨のベテランジョッキー。
ネオユニヴァースのもう1頭の代表産駒であるアンライバルドの背中に跨り、皐月賞を制したのは彼のお陰でした。当時からもなお続く友道厩舎との縁。今回は「友道丼」を演出する恰好になってしまったわけですが、こちらもいずれ【借り】を返すタイミングは来るはずです。
かくして3連複F【1万2270円】的中をお届けできたわけですが、◎レッドアネモス擁立の一部始終を見守っっていた我々からすれば特段驚きに値するような結果ではございません。
「JTTC株主優待月間」を迎え、ヴィクトワールピサ産駒に対するお膳立てを整えた各関係者の協力あってこその成果。我々はその情報を事前に知り得る立場にあったということです。
さて、今週は3歳ダート重賞・レパードSが新潟競馬場で行われます。
夏のダート戦線を盛り上げるべくJRAが創設したレースですが、過去の勝ち馬を振り返ると何かとエピソードの多い一戦です。
・トランセンド→ジャパンCダート連覇、ドバイワールドカップではヴィクトワールピサの2着
・ボレアス→ディープインパクト産駒初のJRAダート重賞勝ち馬
・クロスクリーガー→アドマイヤオーラ産駒初のJRAダート重賞勝ち馬
・ハヤヤッコ→史上初の白毛馬による重賞制覇
今年はユニコーンS組のデュードヴァンが人気の中心となるメンバー構成。ユニコーンS当時の【REVELATION REPORT】をご覧いただいたメンバー様はご存知かと思いますが、あの時は「JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY」を見越して米国出身の種牡馬に統制が図られていた一戦。クイーンSのような状況が起きていた点は見逃せません。
現段階ですべてをお伝えすることはできませんが、シンプルな事実のみを書き記します。
「レパードSは、JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBYに組み込まれていない」
この事実を踏まえつつ、週末を前に想像を膨らませてみてください。
今週のレポートは以上でございます。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉