REVELATION REPORT
【結果総括】REVELATION REPORT「関屋記念週レポート」
掲載日:2020年8月17日
皆様、お世話になっております。
JTTC種牡馬部門の執行役員を務めております吉田晋哉です。
「地方創生」
2014年9月3日、第2次安倍改造内閣発足後の総理大臣記者会見で発表されたこのキーワード。「ローカル・アベノミクス」とも言われており、世界に向けた「クール・ジャパン」戦略とは異なる趣を示します。
端的に説明しますと、クール・ジャパンの目玉は観光などのインバウンド事業。
旅行収支は2015年に黒字化し、日本は観光で利益を上げる観光国となりました。アニメや漫画を中心としたサブカルチャーが動画配信サービス・SNSを通じて世界に拡大。その結果、日本という国に魅力を感じたのでしょう。
一方で「地方創生」は、成功と言い切れるだけの材料がない現状。
各地域の名産品や土地を活かした施策は行われているものの、多くの地方自治体にとっては「頑張ったのに人口は増えない。箱モノが増えただけ」と明確な成果を得られない状況です。
これを踏まえ財務省は2019年以降、地方出先機関の職員を積極的に投入。各地域でのベンチャー発掘や支援など、地域活性化の本丸ともいえる分野にてこ入れを始めています。
競馬の世界ではどうでしょうか。
先週行われた土曜小倉競馬、2歳戦を制した3頭の生産地をご覧ください。
・土曜小倉5R 1着ルクシオン(熊本県)
・土曜小倉6R 1着テンハッピーローズ(千歳市)
・土曜小倉9R 1着ヨカヨカ(熊本県)
3頭中2頭が火の国・熊本県が生んだ馬。とりわけヨカヨカのフェニックス賞Vは98年コウエイロマン以来となる快挙・・・我々のチームにも熊本出身の男がいますが、まるで自分のことのように喜んでおりました。
コントレイル、デアリングタクトと日高産馬が目ざましい活躍をみせた春競馬。その流れを汲んだ夏競馬は小倉で九州産馬、北海道ではホッカイドウ競馬のシンボ、フジノロケットが中央勢と互角の戦いを繰り広げています。
競馬界のトレンドは地方創生。
今年のJRAブリーズアップセールで取引されたヨカヨカから目が離せません。
それでは、先週の先週のレース統括に参りましょう。
3歳上3勝クラス、ダート1700mのTVh賞。戦前、【REVELATION DIRECTIVE】で示していた見解は下記のとおりでした。
-----TVh賞見解を引用-----
まずは土曜日の札幌メイン「TVh賞」から。
TVh賞の出走馬は14頭。
いつもとは趣向を変えて、今回はあえて生産地域別に並べてみます。
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[新冠町]4頭
1枠1番 ソリストサンダー
2枠2番 トイガー
5枠8番 ライジングドラゴン
6枠9番 フローラルパーク
[新ひだか町]4頭
5枠7番 カフジジュピター
6枠10番 シベリウス
7枠11番 グラスブルース
8枠14番 ダンツキャッスル
[浦河町]2頭
3枠3番 タイキダイヤモンド
4枠6番 ゲンパチルシファー
[安平町]1頭
3枠4番 メダリオンモチーフ
[愛国(アイルランド)]1頭
4枠5番 ユニコーンライオン
[日高町]1頭
7枠12番 フクノグリュック
[平取町]1頭
8枠13番 ビービーガウディ
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例年は芝1800mで行われているレースですが、今年はダート1700m戦に舞台を変えての一戦。
矢作厩舎が送り出すのは、ユニコーンライオンとカフジジュピターの2頭であり、いずれも「芝」を主戦場としてきた馬です。
なぜダートを使うのか?
矢作厩舎が、「芝と勘違い」して登録してしまったわけでは勿論ありません。
明確な意図をもって、ダート1700m戦に「2頭」を出走させていたのです。
コントレイルでのダービー制覇後、6月、7月競馬と矢作厩舎界隈で「貸し借り」が行われていたことは、皆様にもリアルタイムでご覧いただきました。
「TVh賞」は、「貸し」か、それとも「借り」か。
そのあたりを想像してみてください。
-----以上TVh賞の見解を引用-----
以上を踏まえ、今回、我々が提供した買い目は以下の通り。
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8月15日(土)札幌11R TVh賞
<評価順>
◎7 カフジジュピター
○1 ソリストサンダー
▲14 ダンツキャッスル
☆8 ライジングドラゴン
△13 ビービーガウディ
△11 グラスブルース
△6 ゲンパチシルファー
<結果>
1着○1 ソリストサンダー
2着☆8 ライジングドラゴン
3着◎7 カフジジュピター
3連複F:5400円的中[9点]
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レースはこれまで一度たりともハナをきったことのないメダリオンモチーフが先手を主張。
マイペース逃げに持ち込むプランだったのでしょうが、そこは矢作厩舎が一枚上手。
愛弟子・坂井瑠星騎手を乗せたユニコーンライオンが2番手にピタリと張り付き、差し馬有利の展開へと誘導。
☆ライジングドラゴンが早めに動き、○ソリストサンダーが抜群の進路取りで追いかける。先団で運んだゲンパチルシファーを含めた3頭で決すると思われたところ、後方からジワジワと脚を伸ばした◎カフジジュピターがハナ差交わし3着を確保。ユニコーンライオンの貢献があったことは言うまでもありません。
初ダートゆえ6人気に甘んじていたカフジジュピターを◎抜擢に至った経緯を改めてご説明いたします。ここには、3つのキーワードがありました。
【1】矢作厩舎の2頭出し
【2】コントレイルと同じ父ディープインパクト×母父Unbridled's Song
【3】チャンピオンズファーム生産馬
これまで何度も取り上げてきた【1】「矢作厩舎の複数頭出し」については割愛しますが、
【2】についてはコントレイルと同配合である事実も馬柱をみれば知り得る情報かつ、血統に詳しい方なら着目されていたことでしょう。
ここで重要なのは【3】「チャンピオンズファーム生産馬」。
先週金曜日の【REVELATION DIRECTIVE】でも記したとおり、日本競馬全体における「育成部門」のさらなる強化の象徴として今年の秋、栗東近郊に新たな外厩施設=チャンピオンヒルズが開場予定であることはプライベートメンバーの皆様はご存知のはず。
・ノーザンファームしがらき[滋賀県甲賀市信楽町]
・グリーンウッド・トレーニング[滋賀県甲賀市甲南町]
・吉澤ステーブルWEST[滋賀県甲賀市信楽町]
・宇治田原優駿ステーブル[京都府綴喜郡宇治田原町]
育成部門における関西圏の4大施設を凌駕する凌駕する関西最大規模の外厩施設「チャンピオンヒルズ」。
北海道沙流郡日高町に本社を構えるチャンピオンズファームが建設する外厩施設となっておりますが、それはあくまで表向き。施設投資には多額の費用がかかります。だからこそリターンも大きいわけですが、政治の世界を思い浮かべれば大規模施設に【利権】が絡むのは当然の話。いったい誰が利権に預かるか・・・そこまで言及することは現段階では避けておきます。
社台グループでもなく、ノースヒルズでもなく、ビッグレッドファームグループでもない。
日本競馬における「第四の勢力」を目指すべく作られるチャンピオンヒルズ。
沙流郡日高町に本社を構える組織としては、他に「ダーレージャパン」が存在します。この地域に点在する複数グループによる【貸し借り】がこの秋以降、いや、【前借り】として今夏から発生するのは容易に想像できること。そのひとつが土曜札幌11Rのカフジジュピターだったわけです。
かくして矢作厩舎のプランは一応の成功を収めました。〇→☆→◎の3連複F【5400円】に物足りなさを覚えるメンバー様もいらっしゃるかもしれませんが、諸々のリスクマネジメントを踏まえ、最適解の券種を導く。こうした積み重ねと綿密なプラン遂行の【事前入手】ができる立場だからこその結果と自負しております。
続いて日曜新潟11R・関屋記念。
こちらも【REVELATION DIRECTICVE】で書かれていた内容をご一読いただきたく思います。
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続いて、日曜日に行われる新潟メインの「関屋記念」。
今年の「関屋記念」出走馬は18頭。
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[安平町]7頭
1枠1番 プリモシーン
3枠6番 アストラエンブレム
4枠8番 ミッキーブリランテ
5枠10番 ミラアイトーン
7枠14番 プロディガルサン
8枠16番 グルーヴィット
8枠17番 サトノアーサー
[日高町]3頭
1枠2番 ブラックムーン
6枠11番 クリノガウディー
7枠13番 ドーヴァー
[浦河町]3頭
2枠4番 メイショウグロッケ
3枠5番 メイケイダイハード
7枠15番 ペプチドバンブー
[千歳市]2頭
5枠9番 ハーレムライン
8枠18番 トロワゼトワル
[白老町]1頭
2枠3番 アンドラステ
[米国(アメリカ)]1頭
4枠7番 ジャンダルム
[新冠町]1頭
6枠12番 エントシャイデン
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出走馬18頭中7頭は[安平町]=ノーザンファームの生産馬という構成で、[千歳市]=社台ファーム、[白老町]=白老ファームを合わせれば、18頭中10頭が社台系生産馬で占められている一戦です。
矢作厩舎
・ミッキーブリランテ(ノーザンファーム/野田みづき)
・エントシャイデン(ノースヒルズ)
池江厩舎
・サトノアーサー(ノーザンファーム/サトミホースカンパニー)
・ジャンダルム(ノースヒルズ)
矢作厩舎からは中京記念に出走させていた2頭を関屋記念でも同時に送り込む一方で、池江厩舎は中京記念を経由させなかった2頭を、ここで同時に使います。
中京記念は、当会では矢作厩舎の◎エントシャイデンを本命に臨んでおりましたが、関屋記念に関しては、エントシャイデンが本命ではないことを明言致します。
貸しを作った後には、倍にして返すことが礼儀。
それが、【人間関係】における筋道の基本です。
人と人の繋がりが、レースの勝負どころでどのように活かされるのか。
たとえば、コントレイルのコンビでお馴染みの矢作厩舎と福永祐一騎手。
中京記念ではミッキーブリランテに乗っていたわけですが、関屋記念では福永祐一騎手はプリモシーンに騎乗します。
本人も公言していることではありますが、15年前の菊花賞の一件。
ディープインパクトが単勝オッズ1.0倍で三冠に臨んだレースは覚えておりますでしょうか。
「ディープインパクトは後ろに下げて、外を回して勝つから、途中で閉じ込めることすらできないし、対策方法はない」とお手上げだったこと認めている一方で、菊花賞は1周目で掛かったために内に入れる場面が訪れました。
しかしながら、「内に閉じ込めることも考えたが、さすがにあの舞台では閉じ込めることはできなかった」と公言しています。
これはあくまでも一例ですが、騎手も感情のある人間です。
中央競馬に八百長はありませんが、忖度や気配りはあって然るべきなのです。
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こちらも矢作厩舎の複数頭出しでしたが、中京記念で成功したプランを再び踏襲。
しかし、これはオーナーサイドの【サマーマイルシリーズ出走】の大義名分に基づく参戦との位置付けでした。
「関屋記念に関しては、エントシャイデンが本命ではないことを明言致します」
と【REVELATION DIRECTICVE】で宣言したとおり、関屋記念は矢作厩舎のレースではなかった。それを踏まえ、我々が下した最終結論はご覧のとおり。
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[日]新潟11R 関屋記念
プライベートランク:☆☆☆☆
<評価順>
◎3 アンドラステ
○17 サトノアーサー
▲8 ミッキーブリランテ
☆1 プリモシーン
注18 トロワゼトワル
△16 グルーヴィット
△10 ミラアイトーン
△14 プロディガルサン
<結果>
1着○17 サトノアーサー
2着注18 トロワゼトワル
3着◎3 アンドラステ
3連複F:1万1820円的中[30点]
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◎は社台レースホース所属馬アンドラステ。戦前、我々が注目ポイントに挙げていた福永祐一騎手とプリモシーンの道中ポジション。「アッサリと控えすぎじゃないか?」このように思われたメンバー様も多かったのではないでしょうか。
福永騎手は誰よりも「馬場読み」を重視する騎手。レース当日の朝、昼休みと馬場の良い箇所・悪い箇所を自らの足で確認するほどです。そんな彼ならば、この日の新潟芝が「逃げ馬天国」であることは即座に気が付くはず。
【日曜新潟の逃げ馬成績】
3R→2着
5R→2着
6R→1着
8R→3着
10R→3着
事実、新潟8Rでは自身が騎乗したライルで迷わず逃げの手に出ています。馬の将来を考える福永騎手は次走で折り合いを欠くリスクを恐れ、逃げ戦法を好みません。そうした背景があったにもかかわらず、まるでアンドラステに譲るかのような騎乗・・・違和感を覚えるのは当然でしょう。
函館スプリントSはシルクレーシング。
クイーンSは東京ホースレーシング。
エルムSはサンデーレーシング。
6月から続く数珠つなぎの中で足りないピースはただひとつ。今週の関屋記念は社台レースホースだったのです。
「こういう揉まれる競馬は初めてで、馬も戸惑っていました」
レース後、岩田望騎手はこう語りました。「砂を被らない位置で」という陣営サイド唯一のオーダーを池添騎手が見事なまでに体現したTVh賞との差は明らか。若い彼にとって良い経験となったことでしょう。社台ノーザングループの事前プランに狂いが生じた点は誤算も、TVh賞と同じく「わずかなズレ」を見越した3連複F:1万1820円的中の提供は最低限の結果と言えるのではないでしょうか。
さて、ここまで先週の提供結果を振り返って参りましたが、今週末は「もっともGIに近いGII」札幌記念が札幌芝2000mを舞台に行われます。
昨年は川田騎手に乗り替わったブラストワンピースが3人気1着、天皇賞(春)勝ち馬フィエールマンが1人気3着。2頭はその後凱旋門賞へと駒を進めました。ブエナビスタやハープスター、レッドディザイアなど社台ノーザングループの一流クラブ馬が出走するレースとしても知られます。
今年の出走登録馬を見ると、
キャロットファーム→2頭
サンデーレーシング→2頭
GIレーシング→1頭
他にはディープインパクト産駒マカヒキ、ハービンジャー産駒ノームコアなどが参戦予定。
直近の結果を踏まえれば、我々がどの部分にスポットを当てるかはおのずと見えてくるはず。想像を膨らませたうえで、週末の競馬をお待ちいただけますと幸いです。
今週のレポートは以上でございます。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉