REVELATION REPORT
【結果総括】REVELATION REPORT「セントウルS週レポート」
掲載日:2020年9月14日
皆様、お世話になっております。
JTTC種牡馬部門の執行役員を務めております吉田晋哉です。
先週から主な競馬場での来場が許可されたJRA。待ちに待った競馬場の空気を吸うべく、JTTCスタッフも何名か東京・阪神競馬場に足を運んだようです。
「吉田さん、馬は走ってないけどやっぱ生の競馬場はいいですね!」
「あの鉄火場感を味わいたくて、ウインズ後楽園の様子を覗いてきました!」
まるで好きなオモチャを与えられた子供のようにはしゃぐ彼ら。私自身、来年高校生の息子を持つ良い年したおじさんなのですが、競馬場の空気は簡単に童心へと帰らせてしまうのでしょう。
「童心」といえば、土曜中京2Rを逃げ切ったカレンロマンチェコ。
母父アドマイヤジャパンといえば、あのディープインパクトの同級生にあたり、三冠最後の舞台「菊花賞」における2着馬です。
後にブエナビスタを輩出することになるビワハイジの3番仔にあたる血統馬でもありますが、現役時も種牡馬としても実績面はディープインパクトに遠く及びませんが、非常に気の強い馬でしてブリーダーズスタリオンステーションにスタッドインしてからというもの、大先輩ステイゴールドとともに放牧地を駆け巡っていた姿が思い起こされます。
当のカレンロマンチェコは今年産駒デビューのマクフィ産駒。
キーンランドCの際に取り上げた「日本軽種馬協会」が2017年に購入した新種牡馬です。ゴドルフィンが【新世紀の象徴】と位置付けた名馬・Dubai Millenniumの血を引く種牡馬が日本で繁用される意味は極めて重大。
陣営の【思惑】に変化が生じる開催替わり。秋に差し掛かり、冬の足音が近づくこの時期。芝→ダート替わりなど大胆な路線変更が功を奏するか仇となるか、陣営サイドの腕の見せ所といえます。
さて、新種牡馬マクフィについては函館2歳S2着馬ルーチェドーロが現時点の代表産駒となりますが、産駒のフットワークは「軽さ」より「パワフルさ」が目立ちます。キズナ産駒やオルフェーヴル産駒にも共有する「芝→ダート替わり」での一変は今後、何度も見られることでしょう。種牡馬部門の長として注目しております。
もうひとつ、先週のエポックメイキングと言えますのが『キングカメハメハ系』の躍進。
有力なディープインパクト産駒を翌週に回すノーザンファームの戦略を追い風に受けた格好で好結果を連発。一例を挙げますと、
・リオンディーズ産駒→3勝
・ロードカナロア産駒→3勝
・ドゥラメンテ産駒→2勝
・ルーラーシップ産駒→2勝
ロードカナロア、ドゥラメンテを差し置いて3勝を挙げたリオンディーズはお見事。
エピファネイアと同じシーザリオ一族にあたるわけですが、このラインナップに数年後サートゥルナーリアが加わるのは既定路線。
その【前例】である同じキングカメハメハ系のリオンディーズの活躍=サートゥルナーリアに対する強気な価格設定・・・【重大ミッション】の影に隠れ、ノーザンFは二手も三手も先を見据えています。
それでは、先週のレース統括に参りましょう。3歳馬による秋華賞トライアル・紫苑S。戦前、我々が示していた見解は下記のとおりでした。
-----紫苑S見解を引用-----
まず土曜日に行われる紫苑Sは、3着馬まで優先出走権が与えられる秋華賞トライアル。
出走馬18頭中、クラブ法人馬が半数の9頭。
社台系生産馬も半数の9頭というメンバー構成。
ローズSとの使い分けなどの話は上記の通りですが、【C.ルメール騎手の使い方】に注目ください。
土曜日は、
中山5R 2歳新馬
ブラウシュヴァルツ
馬主:キャロットファーム
厩舎:黒岩陽一(美浦)
中山11R 紫苑S
シーズンズギフト
馬主:キャロットファーム
厩舎:黒岩陽一(美浦)
[キャロット×黒岩厩舎]の2頭にセットで、C.ルメール騎手が騎乗することに。
紫苑Sの出走メンバーの中には、
レッドルレーヴ(東京ホースレース/藤沢和雄厩舎)
→デビューから2戦騎乗。
スカイグルーヴ(シルクレーシング/木村哲也厩舎)
→デビューからの3戦すべてで騎乗。
このようなお手馬もいる中、過去4戦中1度しか跨っていないシーズンズギフトが託されているあたりが、ポイントです。
前走のNZT2着と好走した後に骨折が判明したため、NZT以来の復帰戦となりますが、この馬が春にどのようなローテーションが組まれていたのかに注目し、そこに違和感を抱かれた方は、どのくらいいるでしょうか。
2000m(デビュー戦)→1800m→1800mというローテーションで、フラワーC3着と重賞でも好走しながら、オークストライアルのフローラSに向かわず、距離をさらに短縮してマイル重賞のNZTに出走していたのです。
「使い分けの犠牲」
違和感の根底は、この言葉に集約できます。
-----以上紫苑Sの見解を引用-----
「なぜ、C.ルメール騎手をシーズンズギフトに配したのか?」
先ほど私が申し上げました【重大ミッション】に通じる意味合いも含めた提言です。
秋華賞出走という『至上命題』を満たす最適解こそ、数ある候補者からC.ルメールが選ばれた最大の理由でした。
秋華賞トライアルとして行われた当レース。移動に苦のない開催ということで、トップクラスのジョッキーの多くは重賞が組まれた『中山』に遠征します。
たとえばM.デムーロ騎手。
昨年同騎手が騎乗していたのはグラディーヴァになりますが、懇意にする近藤英子オーナーの馬だから、との見方もあると思いますが、実際にレースを観ると【不穏な動き】がありました。3頭出し強固なラインを築いたキャロットファームの牙城を、単独でこじ開けようとしていたのです。黒岩厩舎のパッシングスルーが勝ったから良いものの、重大ミッションを無に帰しうる【危険人物】であるとクラブ馬サイドから認定されたのは言わずもがな。
M.デムーロ騎手はなぜ今年の紫苑Sに騎乗しないのか?
M.デムーロ騎手以外の「誰が」紫苑S不参加を決めたのか?
その答えはキャロットファームの◎シーズンズギフトに行き着きます。
あらかじめ【危険人物】を排除したうえで、ミッション遂行に忠実な戸崎騎手をあてがう。果たして、後方でレースを進めることで前へのマークを薄めたシルクレーシングのスカイグルーヴと戸崎騎手。まんまと前残りの展開をアシストしました。
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[土]中山11R 紫苑S
プライベートランク:☆☆☆☆☆
<評価順>
◎16 シーズンズギフト
○2 マジックキャッスル
▲10 マルターズディオサ
☆6 ラヴユーライヴ
注18 パラスアテナ
△11 スカイグルーヴ
△14 チェーンオブラブ
△8 ミスニューヨーク
<結果>
1着▲10 マルターズディオサ
2着注18 パラスアテナ
3着◎16 シーズンズギフト
3連複F:2万1370円的中[15点]
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渋った馬場を味方につけた勝ち馬マルターズディオサの想定を超えるパフォーマンスに勝利を逃したものの、当初のミッション=秋華賞の権利獲りを達成。
そして前述のとおり、ノーザンファームの戦略を追い風に受けたキングカメハメハ系かつ広尾レースのパラスアテナに印を回すのは造作もないこと。
3連複2万1370円的中の結果は必然と言えるのではないでしょうか。
メンバー様からも「吉田さんがこれまで何度も広尾レースに言及していた時点で、パラスアテナをマークしていました!」と、的中に結び付いた嬉しいご報告を多数お寄せ頂いております。
次にピックアップするのがサマースプリントシリーズ最終戦・日曜中京11RセントウルS。
こちらも先週金曜日に公開された【Revelation Directive】内にこのレースの道しるべは隠されていました。
-----セントウルS見解を引用-----
ダノンスマッシュも今年のセントウルSに出走しますが、安田記念で騎乗した三浦皇成騎手が引き続き跨ることになり、日曜日は中京競馬場で騎乗する川田騎手に、セントウルSの騎乗馬が回されることはなかったのです。
ダノンスマッシュ以外にも、川田騎手のお手馬候補ともいえる「シヴァージがいるにも関わらず」の話です。
カナヤマホールディングスの所有馬である外国産馬シヴァージは、昨年まではダート戦で使われていました。
通算18戦のうち、過半数の10戦は川田騎手が跨っている馬。
川田騎手から手が離れた後は、藤岡佑介騎手が跨っていましたが、今回藤岡佑介騎手はノースヒルズの3歳牡馬ビアンフェに騎乗。
ともすれば、手の内に入れている川田騎手の手綱に戻すのが既定路線であるところ、そうはせずに、白羽の矢が立ったのは、テン乗りの岩田望来騎手です。
なお話が少し前後しますが、ミスターメロディの最終追い切りに跨ったのは、北村友一騎手ではなく、岩田望来騎手です。
ミスターメロディの状態を、なぜ岩田望来騎手に確認させたのか。
またシヴァージは岩田望来騎手には託せるが、いまの川田騎手には託せないという事実から浮き彫りになるシヴァージのミッション。
三浦皇成騎手には託せて、川田騎手には託せないダノンスマッシュに託されたミッション。
-----以上セントウルSの見解を引用-----
このレースを振り返る前に、「ダノン」冠で知られるダノックスと川田騎手の関係性をおさらいしておきましょう。
19年のGI戦線。蜜月の関係にあった両者は強固な布陣でGI総ナメを目論みました。
・ダノンファンタジー(桜花賞1人気)
・ダノンチェイサー(NHKマイルC3人気)
・ダノンファンタジー(オークス4人気)
・ダノンプレミアム(安田記念2人気)
・ダノンスマッシュ(スプリンターズS1人気)
・ダノンファンタジー(秋華賞1人気)
・ダノンプレミアム(天皇賞秋3人気)
・ダノンプレミアム(マイルCS1人気)
錚々たる顔ぶれはまさに「ダノンオールスターズ」。
ところが結果は0勝・・・・。
出走したレースのうち3勝をC.ルメール騎手にかっさらわれたことで、ダノックスはある決断を下します。
「川田騎手との関係をフラットに戻す」
その過程で主戦候補レースに立候補したなかには躍進目覚ましい松山騎手や北村友一騎手、そして関東のベテラン・横山典騎手。さらに昨年100勝超えを達成した三浦騎手も含まれます。
◎ダノンスマッシュはそんなダノックスの所有馬。レースでは外枠から終始スムーズな競馬で完勝。馬単1万5430円的中へと導きました。
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[日]中京11R セントウルS
プライベートランク:☆☆☆☆
<評価順>
◎16 ダノンスマッシュ
○11 ビアンフェ
▲10 トゥラヴェスーラ
☆7 ミスターメロディ
注8 タイセイアベニール
△9 シヴァージ
△3 メイショウグロッケ
<結果>
1着◎16 ダノンスマッシュ
2着△3 メイショウグロッケ
馬単:1万5420円的中[6点]
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今回、手綱を託された三浦騎手は同馬に二度目の騎乗。
サマースプリントシリーズ王者を目指すわけでもなく、叩き2戦目にパフォーマンスが低下する傾向にある同馬が休み明けでセントウルSを秋初戦に選んだ意味。彼が通過すべき【ダノン主戦騎手への最終選考】へのお膳立てをこれ以上ないものとするのがダノックスの狙い。
「セントウルSを勝つ」
極めてシンプルなミッションを成し遂げた三浦騎手はレース後、スッと肩の荷が下りたことでしょう。この秋以降、三浦騎手×ダノックスの関係性にどのような進展が見られるのか・・・またひとつ、秋競馬の楽しみが増えました。
2着の△メイショウグロッケについても少し触れておきます。
冒頭にお伝えしたとおり、JRAでは先週から開催場を除く競馬場、東京・京都・阪神などが再開の運びとなりました。
次なるステップに向けた大きな第一歩と言えるでしょう。
「メイショウ」の松本好雄オーナーは2009年9月から日本馬主協会連合会会長を務め、現在は名誉会長の役職。
JRAが何らかの重大発表を行う際、アピール材料として【重鎮馬主】への贈り物がなされることはある種「常套手段」といえるものでして、この先も【政治的要素】を排除することなく出走メンバーを見渡す際は、是非とも馬主名をセットで把握しておくことをお勧めします。
さて、先週社台ノーザングループのクラブ馬は紫苑S重視の布陣を整えていました。今週の秋華賞トライアル・ローズSも出走登録馬発表段階では似たような傾向が窺えます。
「デアリングタクト・コントレイル1強体制の秋華賞・菊花賞に新しい風を吹き込む」
裏で糸を操るがごとく、レースをコントロールする社台ノーザングループ・・・この流れは今週以降も続くことでしょう。【GI出走】の価値を知るからこそ、それを獲るために非情な采配も躊躇しない。紛れもない事実です。
そして、我々はそうした潮流であり当事者の真意を事前に知りうる立場にあります。それもまた紛れもない事実。
なぜサートゥルナーリアは体調が整わないのか?
なぜインディチャンプに脚元の異常が出たのか?
ビッグネームの出走回避情報が同時多発的に公になった先週。まだまだ秋競馬ははじまったばかり。その【真相】は、そう遠くない将来にメンバー様にお届けできればと存じ上げる次第です。
今週のレポートは以上でございます。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉