REVELATION DIRECTIVE
【結果総括】REVELATION REPORT[毎日王冠週:2020/10/10-11号]
掲載日:2020年10月12日
皆様、お世話になっております。
JTTC種牡馬部門の執行役員を務めております吉田晋哉です。
今年2月末以来、実質224日ぶりに再開した有観客開催。
現状は事前に指定席をネット予約したファンに限定している関係上、レース中継を通じては相も変わらず閑散とした景色に映ったことと思いますが、こうした状況下にあって、観客を受け入れての開催に踏み切った背景には、競馬ファンが生み出す馬券売上もさることながら、経済活動全般をこれ以上停滞させまいとする政界の後押しが決め手となりました。
「Go To キャンペーン」の発起人としても知られる菅首相は、今尚野党やマスコミから、「Go To キャンペーンのせいで感染拡大したらどう責任をとるおつもりですか?」といった批判を浴びているようですが、この手の施策に対して「命をとるか、経済をとるか」といったトレードオフ的論調に持ち込むことは賢明とはいえません。
また、そんな批評を繰り返していたメディアですが、ここ最近「Go To キャンペーン」の提携企業が予算割当上限に達したとするプレスリリースを発表するや否や、「Go To キャンペーン」の国家予算上限近し=希望者は早く予約したほうがいいといった煽り記事を恥じらいもなく掲載する始末。
批判したり、持ち上げたりと、手を変え品を変え大衆を煽るメディアもメディアですが、そんな表面的な報道に振り回されている大衆の反応を目にしてしまうと本当に居た堪れない気持ちになります・・・。
既に中国では、大型商業ビルや空港には、顔認証付きサーモグラフィカメラが搭載されており発熱者早期発見の水際対策で他国をリードしたいとする動きをみせています。
仮に国内の競馬場が全開放された場合、一名一名、入場口で個人情報を取得し、検温器で体温を測り、アルコール消毒のうえ入場してもらうといった人海戦術的フローが成立するはずもなく、新型コロナウイルス収束時期がみえない中、競馬場内における水際対策の方針であり在り方をどう定めるのか、こちらは来年予定される東京オリンピックをも見据えた内容となりますので、JRAの今後の発表内容には是非とも高い関心を持っていただきたいと思います。
さて、本格的な秋競馬スタートに伴い、2歳戦も一気に活性化。
土曜京都5Rを松山騎手騎乗で制した◎アールドヴィーヴルは見解内で示されていたとおり、噂にたがわぬ能力を発揮したように思いますが初勝利のシーンを共に見届けていただいた今、皆様の目にアールドヴィーヴルの走りはどのように映ったでしょうか?
完全な前残りの展開にもかかわらず、大外から豪快な末脚で“ぶっこ抜き”。
馬ももちろんですが、鞍上の落ち着きっぷりが堂に入っていました。
「あわてさせるより、自分のリズムを守っていけば良い脚を使うと思っていました」
松山騎手はサラリと振り返りましたが、自分のリズムを守るという境地に達したのはデアリングタクトのおかげでしょう。
見る側からすればかなり厳しい立ち回りを虐げられたオークスでしたが、それでも道中余計な動きをせず、デアリングタクトの末脚を信じきったことがオークスVという最善たる結果をもたらしたのは明白です。
きっかけは一瞬、掴み取るのも一瞬。
自身が皐月賞を勝たせたアルアインをあっさり降ろされるなど、不遇を囲った20代。30歳で得た絶好のチャンスを掴み取り大躍進を遂げました。
競走馬で言えば、転厩をきっかけに最強マイラーの座を勝ち取ったモーリスもそうです。
松山弘平騎手にとっては、過去最大級の重圧がかかることになる今週末。
騎手同士による心理戦は既にはじまっているわけですが、今週の記者会見で発する一つ一つのコメントには是非ともご注目ください。
それでは、先週の総括にまいりましょう。
東京芝1600mで行われた2歳重賞・サウジアラビアRC。戦前、我々が【REVELATION DIRECTIVE】で示していた見解は下記のとおり。
-----サウジアラビアRC見解を引用-----
この一戦は、
「見えるものよりも、見えないもの」
このことをまずは意識してみてください。
ディープインパクト
キングカメハメハ
ロードカナロア
ハーツクライ
オルフェーヴル
ルーラーシップ
ダイワメジャー
種牡馬リーディング上位にいる上記の産駒はすべて排除され、出走馬選定の時点で明確なメッセージが込められているのです。
次週の京都で行われる紫菊賞に出走予定というカモフラージュから、サウジアラビアRC出走に舵を切ったステラヴェローチェはバゴ産駒で母父はディープインパクト。
1つの指標になるべくして、送り込まれるのです。
今年の2歳世代が初年度産駒であり、この世代でもっとも注目が集まっている種牡馬はモーリスとドゥラメンテ。
インフィナイト(牝2)
父 :モーリス
母 :モルガナイト
馬主:サンデーレーシング
生産:ノーザンファーム
キングストンボーイ(牡2)
父 :ドゥラメンテ
母 :ダイワパッション
馬主:吉田和美
生産:田上徹
前者のインフィナイトは正真正銘のノーザンファームが生産し、育成、所有とすべて関わった馬。
後者のキングストンボーイは、セレクトセール2018でノーザンファームが落札して手に入れた馬。
先述のステラヴェローチェに、ハービンジャー産駒のジャンカズマと合わせるとノーザンファーム関連馬が4頭出走し、レースを作り上げるために必要な駒を揃えたといっても過言ではありません。
最小限におさえて、邪魔になる馬は出走させない。
その結果が10頭立てという出走頭数なのです。
海外からのニーズ(需要)を、さらに高めていくに値する血を持つ存在。
ディープインパクト産駒、キングカメハメハ産駒、ロードカナロア産駒、ハーツクライ産駒を活躍させるメリットよりも、来たる将来に向けて価値を高め、利権の最大化を追求することが優先される一戦。
マイルGIの安田記念を制したグランアレグリアが、秋のGI初戦スプリンターズSを優勝したことにより、「日本のマイル」への注目が増しております。
グランアレグリアで作ったこの流れ。
サウジアラビアRCの決着を通じて、「ジャパニーズマイル」の価値が高まるはずです。
-----以上サウジアラビアRCの見解を引用-----
「ジャパニーズマイル」
近年、その強さを世界にアピールしたのは【モーリス】をおいて他ならないでしょう。
・安田記念
・マイルCS
・香港マイル
・チャンピオンズマイル
ダイナアクトレス一族にルーツを持つスクリーンヒーロー、歴史と伝統ある「メジロ」にルーツを持つ母メジロフランシス血統から生まれたスクリーンヒーロー。
純日本産の血脈を受け継ぐモーリスは海外生産者からすれば異端も異端。ニーズは計り知れません。
日本ではサンデーサイレンスの血が飽和状態と言われていますが、同じ問題は欧州でも起こっています。
例えば凱旋門賞連覇の名牝・エネイブル。
同馬はSadler's Wellsの3×2という非常に濃いインブリードの持ち主であり、稀に競走馬としてとてつもない能力を発揮する配合ではありますが、極度に濃い血は健康面に支障をきたすリスクが高まります。
サンデーサイレンスの血を持たないキングカメハメハが急逝し、馬産地は新たな局面を迎えることになりましたが、その過程で白羽の矢が立ったのがモーリス。
むろん、そのバックボーンに【世界の注目】を集めるパフォーマンスを見せた現役時代があるのは自明。
舞台はそのモーリスが躍動した府中マイル戦。
以上を踏まえ、今回我々が提供した買い目は以下の通り。
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[土]東京11R:サウジアラビアRC
プライベートランク:☆☆☆☆☆
<評価順>
◎5 インフィナイト
○9 ステラヴェローチェ
▲2 ジャンカズマ
<結果>
1着○9ステラヴェローチェ
2着◎5インフィナイト
馬単1880円的中[4点]※馬単マルチ
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1分39秒6という勝ち時計からも推察いただけるとおり、「不良」まで悪化した馬場コンディションのなか、モーリス産駒◎インフィナイトは好位追走からしっかり連対を確保。
凱旋門賞馬バゴを父に持つ○ステラヴェローチェの道悪適正には我々とて一目置くほかないわけですが、同じ父を持つクロノジェネシス同様、バゴ産駒は「水かきがついている」の形容がしっくりきます。
「馬は仕上がっていましたし、こういう馬場も血統的にあっていると思いました」
レース後、須貝調教師はこのように語っていましたが、自身が管理したゴールドシップ、ジャスタウェイもタフな馬場を苦にしなかった馬。培われたノウハウに【凱旋門賞血統】がマッチすることで起きた化学反応を目の当たりした一戦ともいえます。
結果的に2着止まりの競馬となった◎インフィナイトですが、この馬に道悪適性がないとは決して思いません。
種牡馬部門の長として産駒傾向は日々アップデートしておりますが、メジロの土壌を引くモーリス産駒は間違いなく渋った馬場の適正を有しており、この一戦でインフィナイト<ステラヴェローチェと決めつけるのは早計といえます。
むしろ、良馬場でどれだけパフォーマンスを上げるのか、今後の成長度合いとともに温かく見守っていただきたい1頭です。
また、相手筆頭馬の○ステラヴェローチェは出走メンバー中唯一【母父ディープインパクト】の該当馬でありましたが、数十名ほどの無料メンバー様は先週金曜日の段階でファンシーブルー(母父ディープインパクト)の話を持ち出した『意図』を汲み取っていただけたようで、的中報告のメールまでご丁寧にお寄せいただきました。
なかには「母父ディープインパクト」という文字の総数をカウントされていた方もいらっしゃいましたが、今週はやや趣を変えたヒントをご提示する予定ですので、キーワードの出現率に固執せずフラットな視点で対峙いただければ嬉しく思います。
続きまして、日曜京都メイン・天皇賞(秋)の前哨戦として行われた京都大賞典を振り返ります。
こちらも【REVELATION DIRECTIVE】で示していた見解をご覧ください。
-----京都大賞典見解を引用-----
サウジアラビアRCとは対極ともいえるのが、産駒の構成。
ディープインパクト産駒(5頭)
・シルヴァンシャー
・モンドインテロ
・グローリーヴェイズ
・ドゥオーモ
・アイスバブル
ハーツクライ産駒(2頭)
・タイセイトレイル
・カセドラルベル
ステイゴールド産駒(2頭)
・ステイフーリッシュ
・パフォーマプロミス
ルーラーシップ産駒(2頭)
・ダンビュライト
・キセキ
オルフェーヴル産駒(1頭)
・バイオスパーク
ロードカナロア産駒(1頭)
・キングオブコージ
サウジアラビアRCからは追いやられた産駒が、この2400m戦には多数出走しているのです。
最後にもう1つ馬券的な話をすると、世間からは【伏兵】とか【穴】と思われているような存在が、今回上位評価です。
サンデーレーシング3頭、シルクレーシング2頭。
池江厩舎2頭、矢作厩舎2頭。
今回の出走馬構成を見れば、このような複数頭出しとはいえチーム戦は明確には見えてこないかもしれませんが、京都大賞典は明らかなチーム戦です。
-----以上京都大賞典の見解を引用-----
本題に入る前に、昨年起こった出来事をおさらいしたいと思います。
さかのぼること1年前。京都大賞典の勝ち馬はドレッドノータスでした。
【ドレッドノータス】
父:ハービンジャー
母:ディアデラノビア
母父:サンデーサイレンス
馬主:キャロットファーム
生産者:ノーザンファーム
ここでの注目ポイントは「馬主」です。
キャロットファームは昨年、GIレースの各部門を席巻。これは使い分けを常とする社台ノーザングループにはあまり見られないケースと思われることでしょう。
・サートゥルナーリア(皐月賞)
・リスグラシュー(宝塚記念、コックスプレート、有馬記念)
・クリソベリル(チャンピオンズC、ジャパンダートダービー)
・レシステンシア(阪神JF)
※いずれもキャロットファームの所有馬
一方で、今年の上半期はラッキーライラック、グランアレグリア、クロノジェネシスら牝馬勢の活躍が際立った【サンデーレーシング】の独壇場。
「あなたの番です」と言わんばかりに、社台ノーザングループがレースごとではなく1年や半年、1か月といった短いスパンで主役の座を入れ替えていることがおわかりいただけるかと思います。
こうした流れを踏まえれば、皆様が今年の秋、最もその動向に注目の視線を注ぐのはアーモンドアイでありシルクレーシングの存在になるのではないでしょうか。
やや偶発的な要素が絡んだとはいえローズSはリアアメリアが勝利。インディチャンプのスプリンターズS出走回避を経て、クラブ会員への【返し】のタイミングは極めて迅速。
その使者に指名されたのは毎日王冠の◎サリオス、そして京都大賞典の◎グローリーヴェイズでした。
前者は凱旋門賞馬デインドリームを輩出したLomitasの血を引くサロミナの仔。後者はモーリスの項でも触れた「メジロ」の血が通っていますから、渋った馬場はお手の物。
こうした血統的裏付けも含め、社台ノーザングループの戦略は青写真通りの決着シーンを演出し、その恩恵を払戻金という形あるもので享受いただくことが出来ました。
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[日]京都11R:京都大賞典
プライベートランク:☆☆☆☆
<評価順>
◎13 グローリーヴェイズ
○17 キングオブコージ
▲2 キセキ
☆6 シルヴァンシャー
注15 パフォーマプロミス
△1 ダンビュライト
△6 ステイフーリッシュ
<結果>
1着◎13グローリーヴェイズ
2着▲2 キセキ
3着○17キングオブコージ
3連複:3280円的中[12点]
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かくして3連複F『3280円』的中をお届けできたわけですが、メンバーの皆様におかれましてはプライベートランク「4つ星」の格付けに見合った軍資金を投じていただいたことと存じます。
また、その京都大賞典を上回る「5つ星」の格付けにあったサウジアラビアRC、そして毎日王冠と3重賞制覇による恩恵を手にされた皆様、改めまして誠におめでとうございました。
さて、今週は3歳牝馬路線の総決算・秋華賞が京都競馬場で行われます。
1996年に新設されたGI競走ですが、近年の勝ち馬を振り返れば「世界」が共通語として窺える一戦ともいえます。
・ヴィブロス→翌年ドバイターフ制覇
・ディアドラ→今年の凱旋門賞に日本馬として唯一参戦
・アーモンドアイ→ジャパンCを驚愕のレコードV、翌年ドバイターフ制覇
今年は無敗の二冠馬デアリングタクトの三冠がかかるレース。世間の注目度も高く、非社台ノーザン系から登場したシンデレラ・ガールに多くの視線が注がれることでしょう。
一方「ストップ・ザ・デアリングタクト」の一番手として大衆が想起するのは、前哨戦のローズS優勝馬リアアメリアになるのでしょう。
その他では夏の上がり馬3頭(クラヴェル、レイパパレ)も虎視眈々。もちろんまだ勝負を捨てたわけではありません。
・デアリングタクト(父エピファネイア、ノルマンディーサラブレッドレーシング)
・リアアメリア(父ディープインパクト、シルクレーシング)
・レイパパレ(父ディープインパクト、キャロットファーム)
・クラヴェル(父エピファネイア、キャロットファーム)
エピファネイアvsディープインパクト、ノルマンディーvs社台ノーザン系クラブ馬と構図はくっきり。
「Road to the World」の意味合いを持つ秋華賞において、いかなる背景を持つ馬が勝つことがフィナーレにふさわしいのか?
JTTCの最終結論にご注目ください。
今週のレポートは以上でございます。
JTTC日本競走馬育成評議会
執行役員 種牡馬部門
吉田晋哉