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REVELATION REPORT

【結果総括】REVELATION REPORT[天皇賞秋週:2020/10/31-11/01号]

平素は格段のご厚情を賜り、厚くお礼申しあげます。 JTTC内部監査室長を務める宇野篤でございます。 「瞳に夢を」 奇しくもその馬名に「瞳」を意味するEye(アイ)の文字が刻まれたアーモンドアイが、多くの競馬ファンを魅了したであろう天皇賞秋。 レース後のジョッキーインタビューでは、お茶目な日本語で愛嬌を振る舞うルメール騎手にして「しゃべれない・・・」と感極まるシーンがございました。 史上初、無敗の三冠牝馬となったデアリングタクトの主戦・松山騎手、そしてつい先日牡馬三冠を成し遂げたコントレイルの福永騎手によるジョッキーインタビューでは真っ先に「安堵の声」が発せられたわけですから、正反対のリアクションであったといえます。 競馬史に残る偉業という点では多かれ少なかれ、同様のプレッシャーを受けていたはずの松山騎手と福永騎手がほぼ同様のコメントを口にしていたのに対し、歴代最多のGI勝利数を誇るアーモンドアイのルメール騎手が涙した理由は何だったのでしょうか。 察するに「負けた経験」ではないかと考えます。 一見、順風満帆なアーモンドアイの競走生活も、昨年の有馬記念、そして今年の安田記念がそうであったように、期待を裏切るレースがなかったわけではありません。 それこそ、今年の安田記念では、キックバックが顔面に直撃し、まぶたを腫らしながらジョッキーインタビューに登場した池添騎手に対し、アイシングするルメール騎手の姿が映りこんでいましたが、表向きは飄々としている彼もまた、レース後はどうすれば勝てたのか、なぜ負けたのか、自問自答する日々が続いていたと聞きます。 「競馬は難しい」 今回のジョッキーインタビューでルメール騎手が発した上記コメントが、彼の苦悩を物語っていたように思います。 一息つく間もなく、年末の有馬記念までノンストップで過大な重圧を背負うことになるルメール騎手ですが、ここで「勝った経験」は輝かしいキャリアを持つ彼にとっても一際価値を持つ『一勝』となったはず。 今回の天皇賞秋に関しては、そう多くを語る必要はないかもしれませんが、吉田が先週金曜日に書き記していた内容とともに振り返りたいと思います。 -----天皇賞秋見解を引用----- 1着馬に天皇賞の優先出走権が与えられた毎日王冠の勝ち馬サリオスと、京都大賞典の勝ち馬グローリーヴェイズはともに天皇賞に駒を進めませんでした。 もし仮に出走していれば、両馬を所有するシルクレーシングはアーモンドアイとブラストワンピースを含む4頭出しで圧倒的な主導権を握ることもできたはずですが、そのチーム戦はあえて組まないという選択。 <中略> フルゲートは18頭。 あと6頭は出走させることができるにも関わらず、12頭しか出ないのです。 天皇賞に出走させることができる馬を所有しているオーナーの方々は、「記念出走」よりも「実」を結ぶ戦略を組んでいるため。 -----天皇賞秋見解を引用----- 敢えて、上記箇所を引用しましたのは、何もこの内容を受けて◎アーモンドアイたる根拠を示したかったではなく、天皇賞秋の焦点であり位置づけを正確に認識する必要があったためです。 戦前の段階では、アーモンドアイでありクロノジェネシスをはじめとした有力各馬の情報が良くも悪くも交錯していたわけですが、後述するアルテミスSであり、今回の天皇賞秋について一貫していたのは、どの馬がという出走馬単位の話ではなく、レースの大枠であり提供背景に特化した内容でございました。 常々皆様には「違和感」を大切にしてほしいというメッセージをお伝えしてきたかと思いますが、ともすれば、フルゲート18頭に対して、わずか12頭のエントリーに留まった理由であり背景には当然のことながら「違和感」を覚えたはずです。 その上で、なぜ「サンデーレーシング」の△フィエールマンであり、○クロノジェネシスをわざわざアーモンドアイが参戦する天皇賞秋にぶつけてきたのか、結果が出た今、もしくはレースをご覧いただいたなか、とりわけ2人気に支持されたクロノジェネシスのポジショニングは大方のイメージとは真逆のレースだったのではないでしょうか。 下記はレース後の北村友一騎手のコメントとなります。 ※北村友一騎手(クロノジェネシス、3着) 「真ん中の枠だったのでいいポジションを取るためにスタートを決めたいと思っていた。でも出負けした上に外から寄られて下げる形になってしまった。馬は宝塚記念からいい状態を維持して、精神的にも落ち着きが出て集中して走れるようになっていた。強い競馬はしてくれましたが、ポジションの差で負けてしまって申し訳ないです。いい位置で競馬をしたかった」 ポジションの差で負けてしまったとするコメントを額面通りに受け取るべきかいなかは、皆様のご判断に委ねたいと思いますが、当の北村友一騎手といえばチューリップ賞の騎乗内容を受けて事実上クビとなったレシステンシアの秋緒戦「マイルCS」で再コンビを結成する運びとなりました。 レシステンシアといえば、天皇賞秋ではクロノジェネシスの進路をカットした武豊騎手が桜花賞、NHKマイルCと連続2着たる実績を残しているわけですが、マイルCSを直前に控えるこのタイミングで武豊騎手→北村友一騎手へスイッチ。 現時点でお伝えできることは、決して「降板」ではないということであり、折を見て、今回の決断に至った経緯を解き明かしたいと考えています。 さて、プライベートメンバーの皆様であれば言わずもがな、この11月、そして12月は各リーディング争いが熾烈を極めることになります。 切羽詰まった陣営と余裕たっぷりの陣営はまさに童話「アリとキリギリス」の構図そのままといえますが、切羽詰まったキリギリスは時として予想だにしない仕掛けを講じることも。 一方、小手先だけでは通用し難い「2歳重賞」の舞台では、戦前、吉田からお伝えしていた背景そのままの決着シーンを見届けることとなりました。 東京マイル戦を舞台に行われたアルテミスSの結果を振り返ります。 -----アルテミスS見解を引用----- まずは土曜日に行われるアルテミスS。 12月に行われる2歳GIの「阪神JF」を見据えて、東京芝1600mで行われる2歳牝馬限定重賞です。 前提として、阪神JFに繋がるアルテミスSの1枠分は、すでに他のレースで補われていたことを言及しておく必要があります。 この世代に特化したお話にはなりますが、もし仮にアルテミスSに出走していたとすれば、賞金加算できる2着内の1枠を埋めていた存在。 10月10日(土) 東京11R サウジアラビアRC(GIII) 1着○9 ステラヴェローチェ 2着◎5 インフィナイト 馬単1880円的中[4点]※馬単マルチ その存在とは、同舞台(東京芝1600m)で行われた2歳限定の牡馬牝馬混合重賞「サウジアラビアRC」で2着と好走したインフィナイトです。 サウジアラビアRCの出走馬で、唯一、牝馬として出走していたのはサンデーレーシングの所有馬でモーリスの初年度産駒にあたるインフィナイト。 次走は、12月13日に行われる阪神JFに出走する方向で調整が進められています。 この世代では、ノーザンファームがモーリスの配合相手には優秀な繁殖牝馬を集中してあてがっていたことは皆様もご存知でしょう。 まずは阪神JFにモーリス産駒を出走させるというテーマを掲げて、育成メニューが組まれており、最初の1頭としてインフィナイトを擁立できたことで、このアルテミスSでは2つ目のテーマに取り掛かることができるようになったのです。 <中略> 今年のアルテミスSは、阪神JFに向けて、まさに【計画是正】の典型例とも言うべき一戦なのです。 アルテミスSは阪神JFのトライアルという名目ではありませんが、賞金加算ができるために事実上の阪神JF出走馬選定レースと言いかえることができます。 長くなりましたので、もう一度繰り返しておきます。 インフィナイトが、半月前にサウジアラビアRCで最低限の2着を確保したことによって、アルテミスSから阪神JFに向かうための1枠が空けられました。 ここで「貸し借り」が生まれているわけですが、アルテミスSは【共存】というキーワードを意識しながら想像してみてください。 -----アルテミスS見解を引用----- 長くなりましたので、この辺りで割愛するのかなと思いきや、「もう一度繰り返しておきます」と再度念押ししてくるあたり、貴重目な吉田の性格が反映されています。 実際に、何を念押ししていたのかといえば、サンデーレーシングのインフィナイトであることは自明といえます。 その存在を繰り返し強調していたなかでアルテミスSのキーワードは【共存】と書き残していましたが、勘の鋭いメンバー様であれば、吉田がなぜ冒頭部分で「繁殖馬セール」の話題に言及していたか、その意図はあらかた汲み取っていただけたはずです。 実際、彼もストレートに ----------------------- 父:キングカメハメハ系 母:ディープインパクト系 このような配合の馬に対して、社台グループが力を入れている傾向を、豆知識として知っておいて損はないはずです。 ----------------------- 上記のとおり、直近のトレンドを種牡馬部門の長たる立場から言及していましたので、インフィナイトと同じ『ノーザンファームの生産馬』、かつ、父キングカメハメハ、母父ディープインパクトたる血統背景をメンバー中唯一持ち合わせる◎ククナの存在を暗に示した記述でもあったわけです。 [土]東京11R:アルテミスS プライベートランク:☆☆☆☆☆ <評価順> ◎6 ククナ ○14 ソダシ ▲13 テンハッピーローズ ☆7 ウインアグライア <結果> 1着○14 ソダシ 2着◎6 ククナ 馬連:990円的中[3点] <総評> 桜花賞2着、オークス3着の実績を有しながらも、脚部不安を発症しわずか5戦の競走キャリアで繁殖の道へ進んだ母クルミナルの2番仔にあたる◎ククナを本命抜擢のうえ臨んだ一戦。秋華賞回避のレシステンシア、抽選漏れのレイパパレ、クラヴェルの馬名をあげるまでもなく、キャロットファームにとって不本意なクラシックシーズンとなった今年一年。その反省を踏まえ、ククナをはじめとする期待馬を中心に中期育成段階から高負荷トレーニングを取り入れた甲斐あって、向正面でブレーキを踏むトラブルをはねのけ、最後の直線走路では普段の稽古でみせる極上のキレ味を発揮。2着に導いた鞍上もレース後は「スムーズな競馬ではありませんでしたが、いい経験になったと思う。」と次のステージに向けて価値ある敗戦と捉えており、キャロットファーム縁の血統背景を持つククナの役回りに今後もご注目いただきたい。 ------------------ 発馬を決め、終始リズムを崩すことなく最先着を果たした白毛馬ソダシの堂々たる勝ちっぷりが印象に残ったレースかもしれませんが、ククナにフォーカスした上で再度レースをご覧いただければ、サウジアラビアRCで2着したインフィナイトとククナを使い分けたことに合点がいくはずです。 この点とあの点が、阪神JF当日にいかなる形で線として結び付くのか、事の進展を楽しみにお待ちください。 そして、楽しみかどうかの解釈は人それぞれですが、いま世界で最も多くの関心を集めるのは明日開票日を迎える米大統領選の行方でしょう。 もっぱらトランプ氏は、米大統領選を前に保守派のエイミー・バレット氏を最高裁判事に指名し、野党・民主党は全員が反対票を投じたなか、53議席を占める与党・共和党が1人を除いて賛成し、52対48で承認。 7児の母として就任直後こそ国内でも大々的に報じられたエイミー・バレット氏ですが、2000年の米大統領選ではフロリダ州再集計裁判でブッシュ氏有利の判決を最高裁が下したように、重要な局面を前に「切り札」とされるカードを手にした事実は重く受け止めるべきかもしれません。 無論、切り札であり布石を打つ手法そのものは、競馬界にも通じるお話です。 大切なことですので、「もう一度繰り返しておきます」が、競馬関係者にとって、今年一年の通信簿を決定づけるのがこの11月であり12月の競馬開催です。 サラブレッド生産事業の根幹となる種牡馬ビジネスの重要性は、事あるごとにお伝えしてきた通りであり、事実、種牡馬部門の執行役員を務める吉田も海外関係者を交え、新種牡馬導入の受け入れスキームを構築すべく大詰めの作業に追われています。 米大統領選の開票結果を受け、ドル円相場がどちらの方向に動くのかという点も気がかりのひとつといえますが、開催前のRevelation Directiveならびに週明けのレース回顧は我々にとってもメンバーの皆様に競馬観であり、考え方をお伝えできる貴重な場であると認識しています。 エイミー・バレット氏が最高裁判事に就任した一件も、多くの方は、単なるニュースとして断片的に捉えていると思いますし、今となってはエイミー・バレットって誰?と名前と顔が一致しない方が大多数かもしれません。 しかし、明日の開票結果がどちらに転ぼうとも、彼女の名前を目にする機会は格段に増えるはずです。 覚えていれば、ジャパンカップ週あたりに是非このレポートを読み返してみてください。 あながち間違ったことは書いていないと思います。 最後に、今週はGI谷間週とはいえ土日それぞれ2重賞、計4重賞が行われるですが、フルゲート割れした天皇賞秋とは一転、下記のとおり「みやこS」を除いてはなかなかどうして出走意欲溢れるエントリー状況でございます。 11月7日(土) [東京]京王杯2歳S【20頭】 [阪神]ファンタジーS【16頭】 11月8日(日) [東京]アルゼンチン共和国杯【22頭】 [阪神]みやこS【11頭】 京王杯2歳Sには、アメリカンファラオ産駒という血統背景だけでなく、緒戦の新潟戦で外ラチ一杯を駆け抜けたリフレイムなど個性豊かなメンバーが揃っておりますし、京都ではなく今年は阪神競馬場で行われるファンタジーSは小倉2歳Sの優勝馬メイケイエールと九州産馬ヨカヨカの初対決が注目される一戦。 友道厩舎のユーキャンスマイルが登場するアルゼンチン共和国杯は、プライベートメンバー様からの期待も大きいレースと自負しておりますが、そんな中、現段階では11頭立てとなるみやこSには先月中旬に実施した血液検査で異常値を示した出走予定馬がエントリーしており、最終追い切りの内容とその後のコンディションによっては出走回避の可能性も織り込んでいます。 知る側の立場として、生々しい話を見聞きする機会もこの2か月間はグッと増えるでしょうから、米大統領選の結果が出たなかで、吉田がいかなる角度でRevelation Directiveを執筆するのか、是非ともご注目ください。 JTTC-日本競走馬育成評議会 内部監査室長 宇野篤