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REVELATION DIRECTIVE

REVELATION DIRECTIVE[マイルCS週:2020/1121-1123号]

■開催競馬場:東京/阪神 ■開催重賞:マイルCS/東京スポーツ杯2歳S ■執筆担当:吉田晋哉 ------------------------------------- <REVELATION RACE LIST> ■日曜 東京9R 赤松賞 ■日曜 阪神11R マイルCS ------------------------------------- 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。 クラシックディスタンスで世代の頂点に立った現役の三冠馬3頭が、その東京芝2400mという舞台に集結する歴史的決戦の開演までは、あと1週間。 競馬業界に身を置いておりますと、良いこともあれば苦難も沢山あります。 褒められるようなことはあまりなく、「上手くいった」と思うような成功があったとしても、「もっとより良い方法があったのではないか」という思いに駆られる場面は少なくありません。 勝ったとしても、また次の目標がくるわけで、永遠と続く苦しさを味わっていると、それがいつしか喜びに変わり、常に高揚感を得られている状態。 これは、いわゆる「ランナーズハイ」のような状態と申しましょうか。 菊花賞を終えた後、三冠を達成した福永祐一騎手は、「嬉しいとか喜びよりも、馬に負担をかけてしまったことが申し訳ない」ということを口にしておりました。 勝った喜びよりも次を見ているからこその発言だったと思いますが、競馬に携わる多くの者が、人生を懸けて競馬と向き合っています。 ゴールの瞬間には吠えていましたが、「よっしゃ」ではなく、「あっぶねぇ」という言葉が真っ先に出ていたことを踏まえても、彼が見せてくれる向上心はいつも刺激を与えてくれます。 2年前にワグネリアンを相棒に念願のダービージョッキーとなり、今年は三冠ジョッキーに。 ランナーズハイを通り過ぎて、「クライマーズハイ」の領域に辿り着いたのではないか?と思えるような騎乗を今年はあらゆる場面で見せてくれております。 今週、コントレイルの1週前追いきりに跨った際の感触として、「え!?」と思うような、今まで使ったことがないような例えで説明してくれたのですが、これを受けて次週のジャパンCまで、どのような心境で過ごすのか。 勝てば褒められるだけでなく、批判を受けることもある。 負ければ批判を受けることになる。 いずれにしろ、批判を受ける立場になるわけで、これを乗り越えるためには強靭なメンタルが必要です。 ・デアリングタクト ・コントレイル 牡馬牝馬ともに、無敗の三冠馬誕生という物語が作り上げられてきた2020年競馬ではございますが、「無敗の三冠馬誕生物語」が終止符を打つレースとして、次週のジャパンCを迎えることになるのです。 受け入れること。 次週のジャパンCに向けては鼓動も高鳴りますが、それと同時に「敗れることを受け入れる覚悟」も準備しながら迎えなければなりません。 日頃の馬券を購入する際の心構えに置き換えても、同じ。 不的中の可能性を受け入れる覚悟をまずは決めながら、勝つことをイメージして馬券を購入するというルーティーンをメンバーの皆様も毎週繰り返されているはず。 それは重々承知しておりますので、メンタル面の話は今更申し上げるまでもないのですが、2005年の有馬記念において、競馬ファンが静まり返ったあの雰囲気を思い出すと、このようなお話もしておくべきと思った次第です。 無敗の三冠ストーリー終焉。 2005年に無敗の三冠馬となったディープインパクトが挑んだ有馬記念では、ハーツクライに半馬身差の先着を許しました。 連勝記録はいつか途絶える。 あの瞬間のハーツクライとC.ルメール騎手は、「クライマーズハイ」のような気分だったのではないか、そのようなことを考えながらジャパンCを迎える心の準備を進めております。 いち競馬ファンとしてではなく、当会に在籍しているという立場にいらっしゃるメンバーの皆様だからこそ、いまハッキリとお伝えしておきたいことがございます。 今年のジャパンCは、競馬ファン目線で「三冠馬対決」を楽しむというような視点ではなく、競馬産業の中枢にいる1人の人間という立場でご覧ください。 毎年同じようなレースがあるのならば、「競馬ファンとして楽しみたい」という感覚でジャパンCを見ることに対して何も言いません。 しかしながら、今年のジャパンCは、数年に1度という話でもなければ10年に1度という規模でもありません。 半世紀に1度、いえ50年に1度。 そのくらいの「大きな変化」が生じるということです。 その場面を、「三冠馬対決を楽しむ競馬ファン目線」として見守るのか、「競馬産業の大きな変化を受け入れる競馬産業に携わる従事者目線」として立ち会うのか。 同じレースを迎えるうえでも、この視点は大きな違いを生みます。 皆様には、JTTC監修BOOKSとして公開されている「パラダイムシフトの渦中にある世界競馬」を、ひと通りお読みいただいているということを前提に話をさせていただきましたが、 2019年から2020年にかけて、世界競馬で進められてきた『令和のパラダイムシフト』を意識しながら、ともにジャパンCを迎えましょう。 「パラダイムシフトの渦中にある世界競馬」をまだご覧になられていない方、内容を覚えていない方は必ず目を通しておくことを推奨致します。 次週のジャパンCを見据えながら、という今週の競馬開催にはなりますが、ジャパンCの話と遜色ないほどの路線として、12月の「2歳GI」に向けてのお話もしておかなければなりません。 レースの格は、2歳牝馬限定1勝クラスの特別戦となりますが、日曜日に行われる「赤松賞」は必ずレースをご覧ください。 リアルタイムで見ることができない場合には、レースが終わった後にJRAのホームページで公開されるレース映像を見ていただきたく思います。 赤松賞の出走馬は全部で10頭。 ------------------------- ※50音順 アオイゴールド 馬主:鈴木照雄 生産:社台ファーム 厩舎:和田雄二(美浦) アカイトリノムスメ 馬主:金子真人ホールディングス 生産:ノーザンファーム 厩舎:国枝栄(美浦) アンチエイジング 馬主:福田光博 生産:高柳隆男 厩舎:小桧山悟(美浦) シゲルオテンバ 馬主:森中蕃 生産:社台ファーム 厩舎:松山将樹(美浦) シャドウエリス 馬主:飯塚知一 生産:社台ファーム 厩舎:友道康夫(栗東) スライリー 馬主:ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン 生産:白井牧場 厩舎:相沢郁(美浦) セイウンエンプレス 馬主:西山茂行 生産:西山牧場 厩舎:本間忍(美浦) ペイシャフェスタ 馬主:北所直人 生産:梅田牧場 厩舎:高橋裕(美浦) メイサウザンアワー 馬主:千明牧場 生産:ノーザンファーム 厩舎:尾関知人(美浦) レアシャンパーニュ 馬主:大塚亮一 生産:ノーザンファーム 厩舎:音無秀孝(栗東) ------------------------- ・10頭中6頭が社台系生産馬というメンバー構成。 ・社台系クラブ法人の馬は出走しない。 ・これまでの赤松賞には一度も管理馬を出走させたことのない友道厩舎と音無厩舎が管理馬を出走させる。 このあたりの事実を念頭に置いた上で、注目ください。 この時期に行われる2歳牝馬限定のマイルを舞台とする1勝クラスとしては、関東では「赤松賞」、関西では「白菊賞」という番組が用意されています。 それぞれの勝ち馬が阪神JFに向かう年もよくあるわけですが、関東馬は関東の「赤松賞」へ、関西馬は「白菊賞」に向かうというのが無理のない番組選定としての基本路線です。 「赤松賞」は、1993年より24度行われてきたレースですが、関東馬19勝、関西馬5勝という成績からもわかるとおり、関東馬が優位。 特に赤松賞は国枝栄厩舎が2歳牝馬のローテーションを組む上では重宝しているレースであり、2009年に赤松賞を制した後に阪神JFを優勝し、翌年牝馬三冠を達成した馬がアパパネです。 2000年 1着タカラサイレンス 2008年 1着ダノンベルベール 2009年 1着アパパネ 2010年 3着サイレントソニック 2019年 2着シンハリング 上記は国枝栄厩舎の赤松賞における好走成績です。 今年はアパパネの仔であり、ディープインパクト産駒のアカイトリノムスメを出走させるわけですが、アパパネが産んだ仔の中では初めての牝馬であり、ここに使うのは母のローテーションを踏襲する意図があるため。 国枝厩舎にとっては至極当然のことです。 そこに、栗東所属の2頭、これまでは「赤松賞」を選択肢に入れていなかった友道厩舎と音無厩舎が管理馬を出走させるというのは、いわゆる「お上からの指示」が想像できるのではないでしょうか。 また昨年は2着馬シンハリングがノーザンファーム生産でDMMドリームクラブの所有馬であり、シルクレーシングの所有馬も出走していました。 一昨年2018年は、サンデーレーシング1頭、シルクレーシング1頭、キャロットファームが2頭。 2017年は、キャロットファーム2頭、G1レーシング1頭、ホースレーシング1頭。 良質な馬を多く抱える社台系クラブ法人が、2歳の11月に東京芝1600mという主要な舞台で行われる「赤松賞」に、1頭も出走させないというのは極めて異例。 なぜ?という視点で想像を膨らませる習慣をつけていただきたいところですが、 今回の答えは明確です。 レースを迎える前の段階から、すでに「譲った」という背景が見えるのではないでしょうか。 同じ条件で使える馬がいれば、「複数頭出し」という政略的なレースを仕掛けることもできるのが所有馬を多く持つ馬主組織の特権でもありますが、 たとえば、「ここは出走させないから・・・・あのレースは・・・」という駆け引きができる立場にいれば、主導権を握りながら出走計画を組み立てることが変幻自在になります。 つまりは、今年の赤松賞は、「政治的なレース」と言えましょう。 「譲る」「譲られる」という駆け引きの先にあるのは、【共存共栄】。 友道厩舎のシャドウエリス、音無厩舎のレアシャンパーニュが、次週11月29日に阪神競馬場で行われる「白菊賞」ではなく、今週の「赤松賞」に回ったという事実。 「帳尻の季節」ということも踏まえながら、必然の決着をご覧ください。 また日曜日にはGIのマイルCSが行われます。 GIということで楽しみにされているメンバー様もいらっしゃるでしょうし、全く触れないというわけにはいかないでしょう。 先述の「赤松賞」とは真逆の構成で、社台系クラブ法人の馬が大挙出走です。 出走馬17頭をご覧ください。 ------------------------- 1枠1番 ベステンダンク 馬主:市川義美HD 生産:服部牧場 厩舎:安達昭夫(栗東) 1枠2番 レシステンシア 馬主:キャロットファーム 生産:ノーザンファーム 厩舎:松下武士(栗東) 2枠3番 ケイアイノーテック 馬主:亀田和弘 生産:隆栄牧場 厩舎:平田修(栗東) 2枠4番 グランアレグリア 馬主:サンデーレーシング 生産:ノーザンファーム 厩舎:藤沢和雄(美浦) 3枠5番 メイケイダイハード 馬主:名古屋競馬(株) 生産:浦河小林牧場 厩舎:中竹和也(栗東) 3枠6番 ラウダシオン 馬主:シルクレーシング 生産:白老ファーム 厩舎:斉藤崇史(栗東) 4枠7番 アドマイヤマーズ 馬主:近藤旬子 生産:ノーザンファーム 厩舎:友道康夫(栗東) 4枠8番 インディチャンプ 馬主:シルクレーシング 生産:ノーザンファーム 厩舎:音無秀孝(栗東) 5枠9番 カツジ 馬主:カナヤマホールディングス 生産:岡田スタッド 厩舎:池添兼雄(栗東) 5枠10番 ブラックムーン 馬主:ヒムロックレーシング 生産:タバタファーム 厩舎:西浦勝一(栗東) 6枠11番 スカーレットカラー 馬主:前田幸治 生産:ノースヒルズ 厩舎:高橋亮(栗東) 6枠12番 アウィルアウェイ 馬主:吉田勝己 生産:ノーザンファーム 厩舎:高野友和(栗東) 7枠13番 タイセイビジョン 馬主:田中成奉 生産:ノーザンファーム 厩舎:西村真幸(栗東) 7枠14番 サウンドキアラ 馬主:増田雄一 生産:社台ファーム 厩舎:安達昭夫(栗東) 8枠15番 ペルシアンナイト 馬主:G1レーシング 生産:追分ファーム 厩舎:池江泰寿(栗東) 8枠16番 ヴァンドギャルド 馬主:社台レースホース 生産:社台ファーム 厩舎:藤原英昭(栗東) 8枠17番 サリオス 馬主:シルクレーシング 生産:ノーザンファーム 厩舎:堀宣行(美浦) ------------------------- 出走馬17頭中11頭が社台系生産馬で、そのうち7頭がクラブ法人の所有という露骨なレース。 今年のスワンS2着馬で、一昨年のマイルCSを優勝したステルヴィオ(サンデーレーシング)が、マイルCSではなく次走は阪神Cへ向かう方向で進められている経緯は、出走させると都合が悪いことがあるため。 ステルヴィオが出走しないことにより、キングカメハメハ系種牡馬の産駒が、今年のマイルCSからは姿を消したことになります。 事情は異なりますが、昨年も同じようなことがありました。 2019年グランアレグリア(サンデーレーシング) スプリンターズS出走匂わせ→「回避」 マイルCS出走匂わせ→「回避」 ⇒阪神C出走。 2020年ステルヴィオ(サンデーレーシング) スプリンターズS出走匂わせ→「回避」 ⇒スワンS出走。 マイルCS出走匂わせ→「回避」 ⇒阪神C出走予定。 2年連続で、サンデーレーシングの有力馬がスプリンターズSとマイルCSで一旦は出走することを匂わせながら、「体勢が整わない」という理由を盾にして、譲る動きを見せていることが、果たして偶然か。 あらためて明言する必要はないと思います。 「マイルCSまでの軌跡」という観点から、主要なレースを振り返っておきましょう。 2020年5月11日(日) 東京11R NHKマイルC 1着◎ラウダシオン(シルクレーシング) 2着〇レシステンシア(キャロットッファーム) 3着☆ギルデッドミラー(シルクレーシング) 2020年5月18日(日) 東京11R ヴィクトリアマイル 1着◎アーモンドアイ(シルクレーシング) 2着▲サウンドキアラ(増田雄一) 3着〇ノームコア(池谷誠一) 2020年6月7日(日) 東京11R 安田記念 1着▲グランアレグリア(サンデーレーシング) 2着◎アーモンドアイ(シルクレーシング) 3着○インディチャンプ(シルクレーシング) 2020年10月11日(日) 東京11R 毎日王冠 1着◎サリオス(シルクレーシング) 2着▲ダイワキャグニー(大城敬三) 3着△サンレイポケット(永井啓弍) 2020年10月24日(土) 東京11R 富士S 1着▲ヴァンドギャルド(社台レースホース) 2着◎ラウダシオン(シルクレーシング) 3着△ケイアイノーテック(亀田和弘) 社台系クラブ法人の馬が、現代の日本競馬におけるマイル路線を独占していることが見てとれると思いますが、「マイル路線」は、点ではなく、路線という言葉の通り、「線」となっているのです。 マイルCSまでの軌跡には、ある共通点があります。 その延長線に存在する舞台が、マイルCSになるのです。 ヴィクトリアマイルを優勝したアーモンドアイの姿こそありませんが、2020年の日本競馬におけるマイル路線を締め括る一戦として相応しいメンバーが揃ったといえるのではないでしょうか。 昨年はアドマイヤマーズが、海外GIにあたる香港マイルを優勝しましたが、マイルCSには出走しておりませんでした。 近年、日本の馬が日本国内で正真正銘のマイル王者となり、世界を制した馬には2015年のモーリスがいます。 モーリスは今年初年度産駒がデビューして種牡馬として活躍しているわけですが、今年のマイルCSもまた同じような可能性を秘めた存在がいます。 11月22日(日)15:40に発走となるマイルCSは、「楽しむことファースト」の精神でレースの行方を見守っていただきましょう。 JTTC日本競走馬育成評議会 種牡馬部門 吉田晋哉