REVELATION DIRECTIVE
REVELATION DIRECTIVE[チャンピオンズC週:2020/1205-06号]
掲載日:2020年12月4日
■開催競馬場:中山/阪神/中京
■開催重賞:ステイヤーズS/チャレンジC/チャンピオンズC
■執筆担当:吉田晋哉
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<REVELATION RACE LIST>
■日曜 中京9R こうやまき賞
■日曜 中京11R チャンピオンズC
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平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
JTTC種牡馬部門担当の吉田晋哉です。
昨年の秋、一般競馬ファンの皆様にも「プライベートサロン」を開放して以来、2度目の12月競馬を迎えました。
ゴールドアリュール産駒のワンツー決着で幕を開けた昨年12月のGIシリーズ。
2019年12月1日
中京11R チャンピオンズカップ(GI)
1着○クリソベリル(2番人気)
2着◎ゴールドドリーム(1番人気)
3着☆インティ(3番人気)
3連単8980円的中
サンデーサイレンス産駒唯一のダートGI優勝馬ゴールドアリュール。
近親にはペルシアンナイトがいる血筋で、2017年2月に逝去したダート路線における偉大な種牡馬。
その「ゴールドアリュール」の後継種牡馬候補筆頭格の2頭◎ゴールドドリームと○クリソベリルのワンツー決着こそが、最低限実現させなければならない至上命題であったのが昨年のチャンピオンズカップの背景でした。
その後は、ともに世界最高賞金レースのサウジカップを叩き台として、『ドバイワールドカップ』の舞台で、日本の「ゴールドアリュール産駒」の血をアピールしようと目論んでいた中で、コロナウイルスが世界に蔓延したために余儀なくされたドバイワールドカップの中止。
いまはまだコロナ禍にあるため、語れないことも多いのですが、ドバイワールドカップの中止も含めて、競馬界の“とある計画”が中断されたままなのです。
昨年のチャンピオンズカップの場で、ゴールドアリュール産駒のワンツー決着を実現させたとはいえ、計画全体でいえば、未完のまま1年が経過したことになります。
再開の動きがあれば、何かしらの形でまた報告させていただきます。
今週の競馬開催は、中山と中京の開幕であり、12月競馬の開幕週。
「中山」「阪神」「中京」という3場開催では、ローカルの中京開催は第3場という扱いになるわけですが、日曜日に中京競馬場で「チャンピオンズカップ」が行われることで、日曜日は中京開催が、3場全体の“メイン”ということになります。
各部門のリーディング争いも佳境に入っており、勝ち星の熾烈な奪い合いが繰り広げられていく4週間に入るとはいえ、トップジョッキーが日曜日は中京競馬場に集結。
GIレースが中京で行われるため、それは当たり前の動きなのですが、他にもいつもとは異なるような動きが多々あります。
例えば、「名古屋で忘年会でもするのか?」と思ってしまうほどに、美浦の堀宣行厩舎は、冠名カフェ(西川光一氏)の所有馬4頭を、日曜日の中京で集中的に出走させます。
西川氏が現在所有する現役馬は11頭。堀厩舎に預託しているのは4頭ですが、その4頭を同日に同じ中京競馬場で出走させるということは、調教師とオーナーの間でどんなやりとりが行われているのかは、想像に難くないのではないでしょうか。
結果を問わずして、この時期ならではの何かがあるということ。
ここからは、少し競馬とは異なるお話もさせていただきます。
なぜ、このようなお話を、いまする必要があるのか。
疑問に思われてしまうかもしれませんが、タイミングにも意味を込めたつもりです。
さて、近年、若者のクルマ離れが顕著と言われておりますが、
皆様は、車をお持ちでしょうか。
どのような車に乗っていらっしゃいますでしょうか。
最近話題になり始めている話題ではございますが、2030年代に世界的に「ガソリン車」が廃止の方向に向かっていることは皆様もご存知でしょう。
温暖化、石油問題。
自動車業界でいえば、それらの課題解決を図るための一環が電気自動車の開発。
日本のトヨタ自動車の方が生産台数は多いわけですが、電気自動車開発を積極的に行っているテスラ社が時価総額でトヨタ自動車を抜いて1位に。
クルマ好きにとっては、テスラ社が開発する車を、クルマと認めない風潮もあるようですが、それでもテスラ社の動きを察知していた方々が株で資産を大幅に増やしたことは有名な話です。
世界が新しい方向へと舵を切り始める時、
・なぜ、動き始めるのか。
・新しい動きを作ろうとしているのは誰なのか、どのような組織なのか。
その根源を知ることができれば、先物買いで利益を得ることは難しくありません。
投資的観点でいえば、10年後を見据えた場合、どのような分野に目をつけておくことが最善策であるのかは自ずと決まってくるわけです。
いま世界はどのような課題を抱えているのか。
世界がどの方向に向かっているのか。
その動向を見極めて、「先手を打つ」という習慣は、財産を築く、財産を守るためには必要な思考だと考えております。
アンテナを張り続けていれば、全体像が面白いように見えてくるわけで、それは競馬業界にも共通して言えること。
競馬界が抱えている課題を、皆様は考えたことはございますでしょうか。
2000年に入ってから日本競馬界には、繁殖馬全体で「サンデーサイレンスの血の飽和」という課題が常にありました。
今もなお完全には解決されたわけではありませんが、その問題解決のために、海外から繁殖馬を積極的に輸入するなどの動きを経て、いまに至っております。
・ディープインパクトの後継種牡馬確立
・生産牧場の極端な偏りによる一部牧場の衰退
・引退馬の余生に関わる受け入れ先の問題
・牧場、育成施設の人材不足
ほんの一部だけ、課題をあげてみましたが、まだまだ競馬界全体で抱える問題は多いのです。
デアリングタクトを輩出した「日高」という馬産地では、人材不足問題が慢性化しております。
あまり表立って話題になることはないのですが、今の日高を支えてくれているのは、「インド」の方々なのです。
競馬先進国の日本で、アジアの方々が生産、育成技術を身につけているということは、数十年後には、アジアの大国では競馬産業が爆発的に発展していくという道筋をハッキリと見据えることもできてしまうわけです。
もちろん暑い国で競走馬の生産を実施するのは困難となりますが、世界的に見ても圧倒的に人口が多い中国人やインド人が、いま日本で学んでいるということは・・・。
目には見えておりませんが、道筋があることはおわかりいただけるはず。
私は、電気自動車を開発する能力はありませんが、競馬界における種牡馬ビジネスに携わらせていただけているおかげで、10年後の利権が見えます。
ドンキホーテ元社長の件を見ても、株の世界は、「インサイダー」に対する取り締まりが厳しいわけですが、競馬界はそのようなことはありませんので、将来に繋がる良いお話やキーワードは今後も共有していくつもりです。
しかしながら、このREVELATION DIRECTIVEの場でどれだけ発信したとしても、それを受け取る皆様が、アンテナを張っていない状態では、全く意味のない行為になってしまいます。
競馬界の課題解決に向けて、いま業界全体では横断的にどのような施策が行われているのか。
競馬は、1レース毎に短絡的に行われているわけではなく、産業内に生まれている利権の価値を最大化するために、いくつものレースが連動しているケースが多いのです。
少なくともそのような視点で、競馬界をご覧ください。
それでは、今回は日曜日にメイン会場となる中京競馬場で行われる2つのレースをピックアップしましょう。
1つは、2歳戦の「こうやまき賞」。
もう1つは、ダートGIの「チャンピオンズC」。
どちらも、それぞれの路線における特定の存在が、出走馬から“排除”されているという共通点があります。
日曜日の中京競馬場は、“統制”されていることが多いのです。
まずは2歳の芝マイル戦、中京9Rの【こうやまき賞】について。
これまで、何度も焦点としてきましたが、ここでもお決まりのアノ背景です。
【ディープインパクト産駒が追いやられた2歳戦】
2020年12月4日現在
2歳馬リーディングサイヤー(種牡馬)ランキング
1位 ディープインパクト
2位 ドゥラメンテ
3位 モーリス
4位 キズナ
5位 エピファネイア
ディープインパクト産駒に加え、2位に浮上中のドゥラメンテ産駒も不在。
こうやまき賞は「1勝クラス」という条件で重賞ではありませんが、レースの重みという観点でいえば、ある意味、「重賞と変わらない」という視点でご覧いただきたい一戦なのです。
今年の2歳重賞において、ディープインパクト産駒の出走ならびに、勝利前提で行われた唯一の一戦が、デイリー杯2歳Sでした。
2020年11月14日
阪神11R デイリー杯2歳S
1着◎レッドベルオーブ(父ディープインパクト)
2着○ホウオウアマゾン(父キングカメハメハ)
3着▲スーパーホープ(父キズナ)
3連単890円的中
◎ディープインパクト産駒→○キングカメハメハ産駒の大本線で決着した一戦で、上位2頭は賞金を加算し、朝日杯FSへ。
先ほどこうやまき賞については、【ディープインパクト産駒が追いやられた2歳戦】と言いましたが、それだけでなく、“スーパーホープ”も追いやられたという事実だけは皆様に知っておいて頂きたいです。
スーパーホープは、複数の存在を牽制するために、暫定的にこうやまき賞に特別登録だけは行っていました。
表向きには、こうやまき賞への出走ではなく、朝日杯FSに向かう方向で落ち着いたスーパーホープですが、
「スーパーホープが出るなら・・・」と出走を諦めさせるような戦略により、出走馬のコントロールが図られた上で、結果的には“8頭立て”という少頭数の一戦に仕向けられた経緯があります。
こうやまき賞は、2013年に開設された中京芝1600mを舞台とする2歳1勝クラスの条件戦。
2013年には後のオークス優勝馬ヌーヴォレコルトが勝利。
2016年には、3歳でマイルCSを制したペルシアンナイト。
2017年には香港ヴァーズ優勝馬グローリーヴェイズが2着。
ローカルの地で行われる1勝クラスとはいえ、過去7年の歴史で3頭のGI馬が好走しているように、ただのローカルで行われる2歳戦とは思わないで頂きたいのです。
今年の出走馬をご覧頂くことで全体像が見えるはずです。
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アンブレラデート(牝2)
父:エイシンフラッシュ
馬主:吉田千津
生産牧場:社台ファーム
カフェカサエル(牡2)
父:ラブリーデイ
馬主:西川光一
生産牧場:ノーザンファーム
コウソクカレン(牝2)
父:ロードカナロア
馬主:野﨑昭夫
生産牧場:ノーザンファーム
シティレインボー(牡2)
父:エピファネイア
馬主:深見富朗
生産:三嶋牧場
ジャンカズマ(牡2)
父:ハービンジャー
馬主:合同会社雅苑興業
生産牧場:ノーザンファーム
ストゥーティ(牝2)
父:モーリス
馬主:キャロットファーム
生産牧場:ノーザンファーム
ダディーズビビット(牡2)
父:キズナ
馬主:田島大史
生産牧場:上水牧場
ロングトレーン(牝2)
父:トランセンド
馬主:ノースヒルズ
生産牧場:ノースヒルズ
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牡馬4頭、牝馬4頭。
8頭中、4頭がノーザンファーム、1頭が社台ファームの生産馬。
社台系生産馬以外で、出走に踏み切ることができた存在は、
シティレインボー【エピファネイア】
ダディーズビビット【キズナ】
社台スタリオンステーションで繋養され、種付け料1000万円に設定されたエピファネイア産駒とキズナ産駒がそれぞれ1頭ずつ。
そしてキズナを輩出し、引退後はディープインパクトの後継種牡馬としての未来が拓けているコントレイルも輩出したノースヒルズのロングトレーン。
この3頭だけしか、こうやまき賞には出走できないのです。
また「こうやまき賞」が、チャンピオンズカップ開催日当日に施行されることが初めてです。
つまりは、「レースコントロール」に長けているC.ルメール騎手、福永祐一騎手、武豊騎手といった【政治】的な騎手を揃えることができたのです。
この3名が揃うことでのメリットは、【レースが崩れる可能性を極限までおさえることができる】ということ。
新馬戦でレッドベルオーブにアタマ差で勝ったストゥーティを、福永祐一騎手を配して出走させる意味。
そこに極めて重要なメッセージが込められていることだけはお伝えしておきましょう。
2021年を迎える上で、『社台スタリオンステーション』(=種牡馬の利権)が、理想とする決着がどういうものであるのかを想像すれば、「それしかない」という答えに辿り着くはずです。
続いて、中京11Rの【チャンピオンズカップ】。
冒頭でもお伝えした通り、昨年は『ゴールドアリュール産駒』が焦点の一戦でした。
ダート界における現状を、一度おさらいしておきましょう。
日本の種牡馬では昨年逝去したディープインパクト、キングカメハメハばかりが話題になる一方で、「ダート路線」で圧倒的な活躍を誇っているのは、2017年2月18日に逝去したゴールドアリュール産駒。
現時点の種牡馬勢力図の中では、「ゴールドアリュール」に次ぐダート界の有力種牡馬を確立するには至っていないわけですが、米国三冠馬American Pharoahの仔を海外セリで購入して日本で走らせたり、米国種牡馬を日本市場に積極的に導入するなど、いまは「ダート改革」というテーマを掲げている転換期にあります。
その前提を頭に入れた上で、露骨な【チーム戦】であるということを受け入れていただくことが、スタート地点です。
チーム戦の象徴ともいえる<多頭出し>。
<音無秀孝厩舎>
・クリソベリル
・サンライズノヴァ
<堀宣行厩舎>
・カフェファラオ
・サトノティターン
<ラッキーフィールド>
・エアアルマス
・エアスピネル
一応、種牡馬にも目を向けておくとすれば、
<ゴールドアリュール産駒>
・ゴールドドリーム
・クリソベリル
・サンライズノヴァ
<キングカメハメハ産駒>
・エアスピネル
・チュウワウィザード
<アイルハヴアナザー産駒>
・メイショウワザシ
・アナザートゥルース
ダートGIということもあり、ここにはディープインパクト産駒は不在ですが、“とある存在がいない”ということに、違和感を持つことはできておりますでしょうか。
2020年 帝王賞
1着クリソベリル
2着【オメガパフューム】
3着チュウワウィザード
2020年 JBCクラシック
1着クリソベリル
2着【オメガパフューム】
3着チュウワウィザード
大井競馬場ダート2000mを舞台に今年行われたJpnI格の2戦。
クリソベリルは前走JBCクラシックからの参戦となるわけですが、そのJBCクラシック2着馬の“オメガパフューム”が、“不在”なのです。
3着馬チュウワウィザードは出走。
一方の2着馬オメガパフュームは出走せず。
「オメガパフュームは東京大賞典に備えて、控えたのでは?」ということでもありません。
2018年チャンピオンズC5着→東京大賞典1着
2019年チャンピオンズC6着→東京大賞典1着
過去2年は、このローテーションを組んで、東京大賞典を連覇している馬です。
スウェプトオーヴァーボード産駒で、母父にゴールドアリュールという血筋のオメガパフュームを、今年のチャンピオンズカップに関しては『出走自粛』としなければならなかった理由。
この経緯から、明確に「貸し借り」の背景がわかるはずです。
またCルメール騎手はカフェファラオに騎乗しますが、
タイムフライヤー
ゴールドドリーム
カフェファラオ
アナザートゥルース
チュウワウィザード
この5頭はいずれも前走でC.ルメール騎手が跨っていたわけですが、5頭それぞれに「貸し借り」が発生する中で、カフェファラオにC.ルメール騎手が騎乗する明確な目的があるのです。
C.ルメール騎手が勝ち続けているという狭い視点ではなく、どういうレースをすることが多かったのかを思い出していただくと良いと思います。
最後にクリソベリルに関して、あえて昨年と今年の追い切りに違いがあることを触れておきます。
[2019年]
1週前
栗東/坂路(良)
52.2 - 38.3 - 25.3 - 12.8(一杯)
最終追い切り
栗東/坂路(良)
52.4 - 38.5 - 25.3 - 12.9(一杯)
[2020年]
1週前
栗東/坂路(良)
52.6 - 38.5 - 25.0 - 12.4(一杯)
最終追い切り
栗東/坂路(良)
54.0 - 39.4 - 25.2 - 12.5(馬なり)
一杯、馬なりの違いについては陣営サイドが意図した負荷のかけ方で明記しておりますが、つまりは、そういうことです。
繰り返しにはなりますが、今年のチャンピオンズカップは力勝負ではなく、チーム戦という視点で、クリソベリルの仕掛け方に注目してみてください。
JTTC日本競走馬育成評議会
種牡馬部門
吉田晋哉